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お気に入り5選 2023.4.28
・ガーベラもダリアも花と呼ぶきみがコスモスだけはコスモスと呼ぶ(p15)
・かき氷だったピンクの水を飲み全部殴って解決したい(p22)
・首都直下地震がきたらおわりだねおわりだろうねあっふきのとう(p37)
・前髪から摘まみ取られる桜蘂わたしを選び続けてほしい(p84)
・発作のごとくあなたは海へ行くとしてその原因のおんなでいたい(p127)
特にp127はこの本を買うきっかけになった歌。
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高校時代から今までの短歌をまんべんなく収めたとのあとがきを読み、若くて眩しい短歌が多いことに納得した。光景が目に浮かび、姪っ子を眺めてきた叔母の気分になった。歌集より、
「火星人が金星人を口説くのを盗聴できた聴力検査」
「不老不死なんていやねとほほ笑んで祖母が漬けたる大きな梅干」
「それぞれの恋の写真のときおりにひらめいた顔しているわたし」
「働けば働くほどにうれしくてレモンジュースにレモン汁足す」
「納豆がわたしのために置いてあり食べずに仕舞う実家暮らしは」
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花束のように抱きとめられたいよ 髪留めの上で溶ける淡雪
ひたひたのあなたの脳に触れてみる心地で木綿豆腐を掬う
うしなった人をうしないきれなくて日々浴室のやさしい滝行
二両目に乗ると三駅目で桑の実と葉が窓のすぐそばに来る
山にでもなっちゃいそうなきもちだよきみにつくづく思われていて
ふたり乗りにふたりで乗るとちょうどいいふたりになったんだねほんとうに
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工藤さんの編み出す短歌からは、言葉の力をずんと感じる。クスッと笑ってしまうものもあれば、懐かしい景色が目に浮かぶものもあり。
あとがきを読んで、やはりこの方の文章が好きなのだと自覚した。
以下、特に好きだった歌。
死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星形に出る国に生まれた
工藤家の長女 はらぺこあおむしでいちばん好きなページはサラミ
ほにほにと訛るわたしを東京のあなたは「かわいい呪文」と笑う
手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗
教科書の隅の63までも寒波に背中丸めています
やわらかに四月の雲を膨らますこの口笛はみずいろの糸
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くどうれいんさんの歌集。エッセイも読んでいたので買ってみた。爽やかと言うには生々しい感じもあり、ほっこりと言うには卑屈な感じもして何と表現していいか分からない。そういう詠み手自身の感情や暮らしを(たぶん)飾らずにそのまま切り取っているところが魅力なのかもしれない。私は、「タンクローリーにシチューを詰め込んできみの家まで国道でゆく」が好き。