投稿元:
レビューを見る
とってもおもしろかったです。プラトンに対するスタンスのとりかたが絶妙にうまいと思いました。ぼくの本棚にもプラトン全集はそろっているんですが、なかなか読めていないので、これを機にちょっとでも読み進めようと思いました。【2021年6月12日読了】
投稿元:
レビューを見る
ただのプラトンの解説本かと思ったら、自分自身で考えようとか、当たり前に思っている日常を見直してみようとか、思考欲がわいてくる本だった。プラトンの教育者としての面が強調されているように思う。現代に生きる私にも気づきを与えてくれるプラトンと、その手引きをしてくれた著者にありがとうと言いたい。
あと、哲学の本にしては読みやすい方だと思う。難しい話をしているが、「わかっちゃいるけどやめられないのではなく、そもそもわかっちゃいないのだ」みたいな口語や、例として出てくるBABYMETALに癒される。イデア論も「肉屋の1kg」、「H2Oとしての水」の例などで自分なりには理解できた。まさにプラトンのように感情、想像力まで喚起させる仕掛けがあって楽しく読めた。
自分の頭で考えようという意識が持てた本。おすすめ。
投稿元:
レビューを見る
プラトンの思想を、「批判と変革の哲学」として紹介している入門書です。
著者は「おわりに」で、アリストテレスにくらべると、「プラトンの場合は、たとえばイデア論にしても魂の理論にしても、プラトンの専門的研究者の間の熱心なやりとりを別とすれば、議論は少し寂しい状況ではないか」と語り、「本書のなかでも、イデア論は普遍や個をめぐる分析形而上学的考察にどのような意味があるのか、プラトンの魂の理論は現代の心の哲学に何を貢献しうるのか、といった、より理論的なことに触れようと思っていた」けれども、けっきょくそれは「断念した」と述べています。
とはいえ、本書の叙述の随所に、そうした観点からの切り口を見てとることができるように感じました。たとえば、ソクラテスの「対話のルール」について説明がなされているところでは、「ソクラテスの対話活動は、人が自分のもっている信念の網の目の全体をはじめから透明に見通せるものではないということを明らかにしている」と述べられています。またイデア論の解釈においても、われわれが感覚知覚において無意識のうちにイデアを感知しているという理解をしりぞけ、パトナムの双子宇宙の例を参照しつつ、「ある概念の内容や言葉の指示対象は、その使用者の頭の中にあるものによってすべて決定されるのではなく、外部の基準的存在によって制約されている」という解釈を打ち出しています。これらの議論には、現代の認識論、たとえば内在主義と外在主義のあいだの論争などの議論が踏まえられているようにも感じられます。
その一方で著者は、プラトンの議論を切り分けて、その現代的意義を示すのではなく、プラトン哲学の全体像を「対話と変革の哲学」として理解することができるという、鮮明な見通しを提示しています。また最終章では、レオ・シュトラウスなどのプラトン解釈を批判的にとりあげ、プラトンの哲学を読み解くということがどのような意義をもっているのかということについての考察が展開されています。
投稿元:
レビューを見る
「これちゃんと解説できてる!?」と不安にるほどわかりやすかった。別にプラトンはノータッチというわけではなく、以前に著作を何冊か読んではいたが、最近彼の思想の重大さがようやくわかり始めてきたため、入門書や解説書をちょくちょく手にとってはいる。ある程度落ち着いたら岩波文庫から出ている著作にまた再度挑戦するつもりだが、そのときのための心強い味方になってくれることに期待。
投稿元:
レビューを見る
入門書でありながら、随所に筆者独自の解釈が打ち出されている。
・国家の中心巻を、批判と変革という筆者の立場と結びつけて国家の中に位置付ける手つきが個人的な読みどころ
・レオシュトラウスやネオコンのプラトン読解を、プラトンをどう読むかという問題と結びつけて論じるさまは、古典哲学研究者の面目躍動
・プラトンの魂論の解釈問題を解決すると同時に現代の哲学的行為論に示唆を与える箇所も唸らされた。