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紙の本
聖母からみた美術史と信仰
2021/07/25 21:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビザンチンのイコン、地母神信仰と集合した”黒い聖母”から、中世以降の美術史と聖母子像、そしてインド・中国・日本へのキリスト教の布教と聖母子像に展開し、二十世紀以降の現代アートにおける位置付けまで、聖母子という観点から美術史とキリスト教史を外観した野心的な一冊。
新書とはいえ500ページ近い大著でしたが、1年間の在欧期間と日本国内でみた様々な絵画や史跡にひとつの縦糸が通ったようで、改めてこれまでに見てきたものを反芻しています。
ステンドグラスは、光が通っても変質しないガラスの素材が聖母の処女性を、また形を持たない光がステンドグラスを通ることで像を結ぶことがキリストの受肉を象徴し、そしてそれはロマネスクからゴシックへと建築様式が変化することで壁のスペースが広がりステンドグラスを入れる余地が増えたことも反映、というのはなるほどと思いました。(P.104)
日本国内の聖母子像もその信仰の歴史と合わせて紹介されています。2018年に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」がユネスコの世界遺産に登録された一方で、そこには生月島が含まれませんでした。江戸時代の禁教中も信仰を守り、その後正統なキリスト教に復帰したのが「潜伏キリシタン」で、独自の信仰を守り通したものが「かくれキリシタン」と分類され、後者は世界遺産登録から排除されてしまいました。筆者は「かつて日本で普及したキリスト教が、長らく弾圧されたにもかかわらず、劇的によみがえったという西洋怪奇のハッピーエンド物語に沿うものだけが選別されたのである」と批判しますが(P.366)、わたしも同感です。みんなが大好きな世界遺産、何を顕彰するものなのか、考えさせられます。
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