紙の本
心打たれる対談集
2021/12/13 12:53
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投稿者:ぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ライターの鈴木大介氏と医師の鈴木匡子氏の対談集です。高次脳機能障害になった大介氏は、今まで取材対象だった人々の困りごとが自分ごととして理解できるようになりました。いい加減な思い込みで揶揄されてきた問題の原因が脳の機能にあったことが判明し、その解決策の道しるべになる本です。
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近著では「「脳コワさん」支援ガイド」(医学書院)がインパクト大な高次機能障害当事者の鈴木大介さんと、高次機能障害の専門家鈴木匡子さんの対談。
事故での外傷や脳疾患などを経験した潜在的な当事者はもっといるはずなのに、自覚がないまま苦しんでいる人も多いという。たとえ診断を受け支援を受けていても、症状を言語化することが困難なことも多いために支援体制も実はまだまだ十分とはいえない、という問題意識が出発点。自己分析して表現/発信する力がある当事者(←これはなかなかいない)が専門家に相談するスタイルなのでとても読みやすい。
私自身は、(いまのところ)当事者でも支援者でもないが、高次機能障害の症例や記述は別のコミュニケーションの問題(子ども、外国語学習者、あるいは認知症患者や障害者などの)を考えるときのヒントになると思ってずっと関心を寄せている。「自分に起きていることを適切に言語化して相手に伝えることが難しい状況で名もなき苦しみに困っている人」というのは、案外多いのではないだろうか。「当たり前」の高次機能が成長の中でいつどのように発達・完成するのか、その機能の維持にはなにが必要なのか、もっと分かることが増えるといいなと思う。
それにしても、読めば読むほど、知れば知るほどに、脳の「正常」ってどういうことなのだろうとわからなくなってくる。うまれながらに機能的な障害がある人、人生の途中で急に障害を得る人、加齢などによってゆっくりと機能が落ちていく人、実は本人は気がついてない機能的な障害があるけれどうまくカバーしてなんとか済ませている人…生まれて、さまざまな機能が発達し、チューニングされ、絶妙にかみ合っている状態は奇跡のようなもので、その状態も環境や心身の状態によって日々移ろうもろいものなのだと心得ていたほうがよいのだろうと思った。