投稿元:
レビューを見る
つけっぱなしにしていたテレビから、あるニュースがとびこんできた。「団体施設跡地で女児の白骨遺体」。見たことのある場所や名前に戸惑う弁護士・法子。かつて、そこは夏休みの一週間だけ、3年間行ったことのある場所だった。もしかして、その遺体って私の知っている人?かつての記憶が、段々と蘇ってくる。
約550ページという結構なボリュームでしたが、過去の記憶をたどりながら、現在とどう絡み合っていくのか、色んな驚きがあって、楽しめました。
前半は、団体施設「ミライの学校」で共に過ごした子供時代が書かれています。小学生の視点なのですが、心理描写が丁寧でリアル感がありました。文章が子供っぽさのある表現を使っているので、普通の文章とは違い、「あっ、子供の目線だな」と感じさせてくれます。
他にも、大人の視点、大人の中にいる(精神的な)子供の視点といった異なる視点によって、言葉の表現を使い分けているように感じました。
子供時代のシーンですが、意外と長い分、ちょっと退屈した印象がありました。しかし、丁寧に書かれている分、その後の現在パートに活かされているので、スルーしない方がいいかと思います。
というのも、現在パートでは、過去のパートに登場した人が大人あるいは年老いた姿で登場します。
「過去のあの人が、現代ではこの人なんだ」という驚きが多数ありました。まるで、久しぶりに同級生を目撃したかのような感覚がありました。
発見された白骨遺体の身元ですが、中盤あたりで判明します。後半以降は、その人はいかにして、亡くなったのかが焦点になります。
殺されたのか?事故なのか?様々な証言から、真相が見えていきます。
本作品は、「記憶」がテーマとして紹介されていますが、個人的には、「教育」かなと思いました。
理想的な教育って何だろうと考えさせられました。
子供のためにと思って、あらゆることを子供に教えますが、それが結果的に良いことなのか、わかりません。自分が正しいと思っていても、それは側から見たら、自分勝手なのかもしれません。そういった出口の見えない状況下で、子供に教えることのありがたみを噛み締めないといけないなと思いました。
子供にも色んなタイプの人がいます。同一のことを教えても、子供は十人十色の解釈をします。
何が正解なのか、
他にも、子育ての苦悩が多く描かれています。子供から見た大人、大人から見た子供、それぞれが体験する大変さが、女性にとっては共感するところが多くあるのではと思いました。
異性としては、なかなか体験したことがないので、共感しにくい部分はありましたが、大変なんだなと身につまされました。
白骨遺体発見をきっかけに始まった事件の真相は、悲劇的なもので、その心理描写がまぁ辛い部分もあって、胸が痛かったです。「大人」と「子供」の心を上手く使って、文章で表現されているので、グッとその世界観に引き込まれました。
悲しい部分が続いた分、最後は救いのある結末にじんわりと温かくさせてくれました。ボリュームある量や救いのある結末など色んな要素も相��って、読み終わった瞬間、思わず「ハー」と全身にあった全て空気を吐き出したかのような感覚で、良い意味でどっと疲れました。
投稿元:
レビューを見る
初出 2019〜21年の山梨日日新聞など11紙
子供を親から離して集団生活させ問答を通じて成長させる「ミライの学校」が静岡の山にあり、小学4年の夏にノリコは合宿に誘われて参加し、世話をしてくれたミカやシゲルと友達になる。その楽しい想い出は琥珀に閉じ込められた夏のようだった。
40歳になった弁護士の近藤法子は、ミライの学校の広場から子供の遺体が発見された事件で、長く連絡のとれない孫ではないか確認してほしいという依頼を受け、東京のミライの学校の事務所に行き、応対した田中美夏に再会する。その後遺体が法子も覚えている同学年の久乃だとわかり、死因になったとして美夏が訴えられて、法子は弁護を引き受ける。
法子は自分の子供の保育園探しを通じて、自分の中に批判的に思っていたミライの学校に通じる部分を自覚し、友達として美夏の弁護を引き受ける。たくさんの人から聞いた話を総合して美夏に責任はないと確信し、美夏の心を開いて、当時の大人たちがミカを守ろうとしたのではなく、ミカが大人たちをも守ろうとしていたのだと気づき、真相を語らせ裁判に勝つ。
重たい内容もあって、読んでいて切なくなった。「親ガチャ」と言われるように子供は自分で境遇を決められない。子供の幸せ、人の幸せってどう考えればいいんだろう。い
投稿元:
レビューを見る
悪くはなかったのですが、「これってホントに辻村深月さんの作品なのでしょうか?」って感じで、ちょっと物足りなく残念でした。
投稿元:
レビューを見る
子どもの内面の描写がとても上手で、引き込まれる。
今思えばなんてことはない子ども時代のことも、あのころはその世界がすべてで、仲間はずれにされないように、はぶられないように、なんて思っていた子どもの頃のことを久しぶりに思い出した。
ミカは、あんなにお父さんとお母さんに会いたい、一緒に暮らしたいと望んだ子ども時代を過ごしたはずなのに、なぜ自分も同じことをしてしまったんだろうか。
「ミライの学校」に囚われてしまったから?滋に団体を出ようと言われても出ていかなかったのは、「ミライの学校」での世界がすべてだったから?
子どもの「親に会いたい」「一緒にいたい」という想いをないがしろにしてまでする教育は、どんなに理想が高くても間違っているよね。
読後、いろいろ考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
子供頃の環境での親との距離ってすごく大事なのかなって感じた...
教育について何が1番正しいのか考え深い内容だった…
投稿元:
レビューを見る
さすが、辻村作品。
子供の視点、大人になってからの視点、中にいた者の視点、外から短期滞在する者の視点、一度は心酔してから脱退した者の視点…
色々な視点からの独白で、ミライの学校がどんな場所だったか、何が起きたかが明らかになっていく。
飽きることなく一気に読んでしまった。
映画 星の子を見た時も思ったけど、
外からは閉塞的な団体に見えても、中にいる子供たちは普通の感覚で普通を生きているんだろうなぁと感じた。
非日常で過ごす1週間の、夜の心細さとか残り時間の長さとか、リアル。誰と寝よう?って心配とか。
大人になったユイちゃんの切実さが印象的。
けん先生、水野先生、子供視点から見たら絶対的存在だった彼らのあやうさ。
ミカ、幸せになってほしい。
投稿元:
レビューを見る
辻村さんの、
人の心を描く描写力や細かい心の動きは、
本当にいつもすごいと思う。
共感できるから、毎回作品が出ると読みたくなる。
久しぶりに「冷たい校舎の時は止まる」が読みたくなった。
あの作品もゾクゾクしたなぁ。
投稿元:
レビューを見る
自分たちの理想を子供に押し付ける大人たち。
子供を守ろうとして逆に傷つける大人たち。
二つは決して間違っているとは言い切れないが、複雑に絡み合ってミカは苦しんだのだと思う。
自分が信じたものに裏切られる瞬間は怖いね…
終わり方は色々な想像ができてとても良かった。
投稿元:
レビューを見る
ミカは被害者だと思うが、感情移入できる程描かれてはいない。辻村深月だと期待しすぎたかな。
ノリコの友だちがいなくて焦る気持ちはわかるが‥。
投稿元:
レビューを見る
理想の教育を掲げ集団生活をする組織が、やがて宗教的雰囲気をまとい、事件が起きる。サマースクールとして参加していた子供の視点があるので、少し読みづらさがありました。どうしても既存の宗教団体を思い浮かべてしまって…。少し読みづらかったかな。ですが、親子関係をはじめ、人間関係に悩んでいる人にとっての救いをもとめる気持ちはわかるし、ごまかしてしまう大人のずるさを、普通の人が抱えていることを描かれているのがよかったです。子供の視点で描写されている箇所は読みづらい部分もありましたが、裁判の過程を読み進めるためには必要だったのかと。少し物足りなかった気がしましたが、ラストはどんな形であれ、くぎりをつけられるようにまとまったので、読み手としてはよかったかな。
投稿元:
レビューを見る
親子関係や、幼少期と人格形成について、考えさせられる1冊だった。一気読み出来なかったからかもしれないが、テーマや構成からもっとドラマチックな(?)展開を期待していたが、少しだけ物足りなさを感じてしまった。
投稿元:
レビューを見る
なんの基礎知識もなしに読書。
作者の特徴だと思うが、子供の心的描写が繊細でとても上手く、全体的に引き込まれた。
夏のサマーキャンプの楽しいお話しかと思いきや、殺人と宗教が絡んできたときは、そう繋がるのか!と思った。
登場人物の視点が色々な角度から描かれていて、ストーリーとしても面白かった。
かなりの分厚さがあったので、読むのに何日かかるかなと思っていたが、読み始めてしまえば、途中休憩を挟みつつ、1日で読み切れてしまった。
紹介文にあるように、
私たちが大人になる途中で取りこぼし、忘れてしまったものはどうなるんだろう。
そう感じさせられる1冊。
最後の爽快感はさすが。
投稿元:
レビューを見る
幼少期からミカが過ごす〈ミライの学校〉は、子どもは子供達だけでの生活を送り、自分の親と会うのは年に一度だけ。周りの大人たちが考える『いい子』を先回りして演じるミカは、おかあさんとおとうさんに会いたいという本心を言えない。
読みながら、自分の子育てについてずっと考えてた。
少しずつ真実を明らかにしていく過程は納得出来るけど、なんだか重たいお話だったな。。
投稿元:
レビューを見る
辻村深月さんの新作
この夏に読めてよかった作品だなと感じた。
カルト的なものは内部の人にしか本当にわからないことだらけだ。過去と現在の行き来が面白いと思った。
サマーキャンプは、実際にありそうだし、子どもとしてはとても楽しめるものなのかな。大人が感じることと子どもが感じることの違いがハッキリ分かるもであった。
ミステリー的な要素もあり、面白かった!
投稿元:
レビューを見る
❇︎
社会から隔離された宗教施設で育った子供と
施設が開く夏の合宿に参加した子供が時を経て
ある事件を機に再開する。
体験した夏の思い出とかけ離れた友達の姿に
驚きながらも、思い出にある相手の面影を
探してしまうもどかしさ。
子供故の純粋さと残酷な感情を改めて感じる
戸惑いは、幼い時に共有した思いの見せ方を
変えて大人同士の関係性を形作ってゆく。
ーーー
子供たちの自主性を育てる考え方の元、
作られた〈ミライの学校〉と『学び舎』
そこで過ごした夏の一週間。
麓と〈ミライの学校〉異なる空間の生活で
生まれる子供たちの感覚の相違。
麓の学校で友達に溶け込めないと悩んでいた
ノリコにとって学び舎のミカとシゲルと過ごした
一時は掛け替えのない思い出だった。
ずっと長くノリコが忘れていた記憶は、
子供の白骨が発見されたことで呼び起こされる。
〈ミライの学校〉の事件と関わることで
記憶の中身は曖昧さを増して当時と違う表情を
みせ始める。
思い出という琥珀の中にキレイな結晶として
閉じ込められた記憶は、年月を経て飴色に輝き、
見る者の心によってその見せ方を繊細に変える。