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フルダシリーズ三部作の最終巻。
重い内容ながら読みやすく、あっという間に読んだ。
三部作を通してフルダが対応している事件よりも彼女の家庭が気になる。
二作目までで家庭で何が起こったのかは匂わされてはいるが、本作でもフルダの心情は描かれるが実際家庭で起こった出来事が詳細に語られることはない。
本作が読めるのを楽しみに待っていたのでその辺をもっと詳しく読んでみたかった気もするが、重すぎるテーマゆえ、娘と夫に関しては淡々と事実が描かれるだけでも胸が苦しくなる。
三作通して、アイスランドの凍てつくような寒さも相まってひたすら重い雰囲気の作品ではあるが、名作である。
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読み初めて間もなく、私は家族にこぼしたのだ。
「どこを見ても救いのないこんな話を、よくもまあ考えたものだと思うよ」
アイスランドの刑事フルダ・ヘルマンスドッティルが私たちの前に姿を現わしたのは、『闇という名の娘』(2019)でのことだった。
早期退職を迫られるフルダ、64才のことである。
再び現れたのは『喪われた少女』(2020)、フルダは50才。
そして、三度現れた本作『閉じ込められた女』(2021)、シリーズ最終巻でのフルダは40才。
時間を遡る形で、物語は進んでいく。
出版順に読んだ読者は、つまり、フルダがこの先どうなるか、どんな目にあうのかを知っている。
知った上で読むことになる。
これからフルダはどうなるのだろう? ではなく、なぜフルダはこうなったのだろう? という読み方になる。
起点となる最終巻を読んで、私は暗い気持ちで腑に落ちた。
これからどうなるのだろう? と読めるのは事件のほうである。
アイスランドの東部、まだ農場があるなんてとおどろかれるほど人のいない土地での事件だ。
高地にぽつんとある農家、雪に閉じ込められたクリスマス――
そう。なんとこの本は「クリスマス・ミステリー」なのだ。
クリスマスをテーマにした話となると、たとえミステリーといえども、なにかしら心あたたまるものだと相場が決まっているのだが、この『閉じ込められた女』は、さていかがなものだろう。
作者ラグナル・ヨナソンは「クリスマスの物語です」と言い切っているが、私が思うその定義とはちがう。
彼もさすがにそう思ったのかもしれない、嬉しいことに、この本にはおまけがついている。
お母さんの思い出にあるクリスマス――1960年代のアイスランドのクリスマスのエピソードと、
そして、別シリーズの主人公アリ=ソウルのクリスマス・ストーリーである。
これで救われる。
フルダのシリーズ、最終巻。
最終巻は読めないという人がいると思うのだが――実は私もそうなのだが――そんな人にも薦められる"最終巻"である。
だって、話の続きが読めるのだから。
このシリーズは3冊どれから読んでも構わない。
1冊を手に取ったら、必ず、他の2冊も読みたくなるからだ。
そして、このフルダという孤独な女性に夢中になってしまった人々に朗報だ。
ラグナル・ヨナソンの未訳本『 White Death Hvítidauði 』の説明にはこうある。
「新たな主人公によるフルダ・シリーズの続編である。」
続編である――
一刻も早い翻訳出版を強く希う。
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終わったところから始まる物語。時間を逆行して発表されてきた女刑事フルダのシリーズ三部作、早くもその完結編である。
これを読んだのは、北海道までをも巻き込んだ猛暑のさなかだったのだが、作品世界は雪に閉じ込められたアイスランドの一軒家である。とりわけ、三人だけの登場人物による恐ろしい駆け引きの第一部は、大雪で閉じ込められ、血も凍る恐い心理小説なのである。まさに猛暑対策にはこの上ない一冊なのだった。
アイスランドという国、その特色を生かした寂しさと孤独と、辺縁の土地を襲う暴風雪。それらが重なるだけでも、いわゆるヒッチコック的スリラーの完成度が極めて上がる。そこに加え、前二作によるヒロインの運命と、娘についての叙述を読者は知っているという困った事実である。
本書は、恐ろしく少ない登場人物による300ページ強の小説でありながら、いやな汗をかきそうな第一部の怖さ、そして一気にその世界をひっくり返してしまうかのような第二部への驚愕の展開が、何といっても読みどころである。
その他にも、フルダが担当することになる行方不明の少女はどこへ消えたのか? という付きまとう謎がある。これは本ストーリーとの関係性はどうなのか? 読者は何もつかまされぬままに、本書の恐怖と不思議に立ち会ってゆくことになる。この恐怖の館の驚くべき仕掛けとは? 物語の主たる装置はどこにあり、どう動いているのか?
近年、登場人物や舞台装置の目まぐるしい展開が多くページ数も費やして説明に終始した小説の多いなか、この作品のシンプルさはどうか? それでも作られてしまう驚愕の展開とストーリーテリングは、何なのか? この作者の作品は、おしなべてそう厚くない長編でありながら、しかし、外れがない。アイスランドという国の人口の少なさと犯罪の希少さ、そこに生きる人間の寂しさのような風土まで含めてミステリーの素材としてしまう作者の力技が素晴らしい。
本シリーズは三作を時間的に逆順で書かれることにより、読者側はヒロインの未来を知りながら読むことになる。また、未来において語られていた事実をも知っているからこその不思議も感じることになる。だからこそ過去の時系列にヒロインとともに遡行することで、怖さが高まる、という経験を珍しくさせて頂いた。
おそらく逆に時系列で三作を読んでみても良いのかもしれない。そうしたチャレンジ体験者のレビューについても改めて伺ってみたいものである。
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そういうことか、、うまいな、とうなってます。アイスランドの厳しい冬が少しだけでもイメージできました。全く外に出られず、外と繋がる手段もない、テレビもない、なんてとても無理です。誰もがそうしたくなかったのにな、、とため息が漏れます。
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フルダシリーズの完結編。アイスランドの厳しい気候、吹雪で遮断された一軒家での怖さがひしひしと迫ってくる。季節の特徴を背景に寒々とした闇の広がりが伺える。
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フルダシリーズ、最終章。3作め。
遡ってシリーズになっているので、彼女の、苦しみを、わかりつつも、最後は、結果的に、~なんだよね。って!
事件における物語は、いつも解明される段階で、味わい深い。もう一度、1作めから、読みたくなった。
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2022/4/6読了。女性刑事フルダシリーズの第3作目。この作品によってフルダの人生の闇が分かる。
なかなか練り上げられたシリーズになっている。
極北の国アイスランドの雰囲気がまたドラマの進行をより想像力を掻き立たせ、その世界に引き摺り込まされる。なるほどと⭐️四つ。
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(アイスランドに雪が積もっていない時期があるのかわからんが)雪のせいで停電したり、交通機関が麻痺したり、平気で外界との連絡が取れなくなる時があり、恐怖ともに「都合悪いことは嘘ついちゃえばまずばれねえ」みたいなのある。(新潟県などは道路にお湯じゃばじゃば巻いているので滑らない、凍らない、雪かきしなくていい)(その分言い訳きかない?)
なんか雪国に限らず、都合悪いことは隠蔽します。でもなんかあったら警察とかはばっちり助けてくださいね、みたいなの、うーん。でもやっぱり日本人って大真面目で少しはサボれ。と思った