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読書、それはすべての人に平等な行為。
イギリスの女王は最近読書を始めた。周囲が心配や不安から女王の読書を止めさせようとするが、女王はますます読書にのめり込み——
実際的な人に、読書は必要ないかもしれない。いや、読書に割ける時間や注意力がないだけかもしれない。読書は確実に時間を奪うし、読書によって人は新たな知識や経験を得る。その人の日常から時間も空間も離れた、あらゆる時代、あらゆる場所、あらゆる人の人生を知ることができる。読書はものすごい欲望で、選ばれた人の考えで、読書しない人にとっては許されない行為である。
知能や人への理解は鋭くなっているはずなのに、外見上は服装に気を使わなくなってぼんやりしてることが増えて時間にもルーズになるから、アルツハイマーを疑われる女王。最初はよき導き手だったノーマンに対して、読み進めて自分の世界を広げたことから、彼の読書傾向に気付く女王。読むことで自分や周囲を見つめ直し、次は書き手としての自分に気付く女王。ここには女王でも一般人でも変わらない読書量による変化がありありと現れている。
しかし女王の変化は歓迎されない。イギリス人がイギリス人の見本たる王族に求めているものは、そうじゃないらしい。日本はどうだろう。美智子様が本の話をするのは歓迎されている気がしているけれど。これもまた選ばれた立場の人の認められた範囲の読書だろうか。
読書は字が読めるなら読者を選ばないはずで、身分も性別も関係ない平等な行為のはずだ。しかし読書は万人に開かれていないようだ。少なくとも、読書することを喜ばれる人と喜ばれない人がいる。でも一度読書の楽しみを知ってしまうと、もう誰も逃れられない。今までの自分が変わり、義務を疎かにしても、読みたくなってしまう。そこはどこのどのような人にも一緒である。
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移動図書館で出会った王宮の厨房で働くノーマンの手引きで読書に夢中になるエリザベス女王が読書により思考が変化していく様子や、実際の閣僚が登場しユーモラスに揶揄される場面などがストーリーを通して描かれていて手軽に読めます。
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女王陛下が読書に目覚めて周りは右往左往。
なんとか読書をやめさせようとあれこれ画策するも上手くいかず。
ストーリーの面白さもさることながら、随所に散りばめられた本を読むことへの思いがいい。
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エリザベス女王(明言されてないけど明らかにそう)が読書にガチはまりして暇さえあれば読み漁り、面会する高官や外国要人にまで「最近何をお読み?」と聞いて回るようになるところから始まるコメディって感じです。
本を読んでいて食事に呼ばれたのにも気づかず、歩きながら読もうとして怒られた子供時代を過ごした人なら「あーーそれはーーわかるけど怒られる奴ーー!」ってなること請け合い。
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IF設定の英国女王。ある日、ウィンザー城の裏庭で移動図書館を見つけ、読書に耽溺し始める。なんとかやめさせたい臣下たちに対し、純粋に読書を楽しみたい女王。そんな彼女の変化を追いながら読書と向き合う中編コメディ。正直な話、知的でなく物事を深く考えず本さえ読まない人をトップに据えて国は統治できたとして、そこに住みたいかどうか。読書前の女王は、まるで仕事中毒のように思えた。
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結局この作品のあらすじを書こうとすると、ただただ女王が本を読んで変化する話です、という話になってしまうんですが、なのにこんなに面白いのなんででしょうね?
エリザベス2世(ご存命の、イングランド女王様)がモチーフで、さらに舞台は現代。日本だったらまず無理な話だと思う。
「女王とは感情がなくていい」(国民がその代わりをやるから)みたいな王室あるあるがたびたび挟まるけど、予想以上に女王って大変なのかなとか思ったりしつつ読み進めるとダイアナ元皇太子妃が亡くなったあたりから感情を少し顕わにしなくちゃならなくなったみたいな一文が飛んできて「アカン」の一言です。
お付きの人たちはなんとか読書をやめさせようとする(女王らしいふるまいが目に見えて減ったから)けど、当の女王陛下本人は本を読むことで下々の人の変化を慮ることができるようになっていくという。
最初は「こいつ面倒な文章書いてるな」と思った作家と数々の本を経て再会したらスッと読めたとか読書あるあるも豊富。
「ホモ」というストレートな差別語が溢れてるのは気になりましたが、読書の指南役ノーマンが良い。
イギリス本場のブラックジョーク、ハンパない。
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図書館で見かけて、そのまま2時間もかからず(遅読な私でも)読み終えたコンパクトな小説。
高齢のエリザベス2世が読書にいきなりのめり込んでいく、というだけで目を引くあらすじ。
女王様の特別すぎる経験と読書への飽くなき情熱が独特のユーモアを生んでいますが、その中にきらりと光る洞察が鋭くて本好きとして実に興味深かったです。
年齢、立場に関わらず、向学心があれば辿り着ける場所があると実に励まされました。
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’エリザベス女王が読書沼にハマったらこうなった’小説。やんごとないにも程がある。
女王といえば英国階級社会の中でもトップオブトップ、最上級階層にあたる人物なのでさぞや教養に富んだ方なのだろうと思い込んでいたが、巻末・新井潤美先生の解説によれば「上流階級の紳士にとって、頭があまり良くなくてものを知らないことこそが『美徳』である」(p154)、「上流階級が知性や学問と縁がないというイメージ」(p155)、「彼らが『知的ではない』、『物事を深く考えない』、『本を読まない』といったものであり続ける。そして王室のものとされるこれらの特徴は、じつはそのまま、多くのイギリス人が自分達の特徴として自虐的に抱いているイメージ」(p160)とあり、私の価値観とは全く違うものであった。そもそも私の英国紳士像は『ジョジョの奇妙な冒険』のジョナサン・ジョースターかジョージ・ジョースターか『007』のジェームズ・ボンド程度しか持ち合わせてはいないのだが。
という訳で、内容はといえばエリザベス女王が読書に目覚め、周囲の王室職員が眉を顰めたり顔を顰めたりする話。日本人にはピンと来ないが、恐らく’女王が本を読む’という事それ自体が英国的には大変なジョークに当たるのではないだろうか。
(全く余談だが’ひそめる’と’しかめる’がいずれも同じ漢字’顰’を使う事に初めて気付いた!)
ブクログユーザーの皆様はじめ本好きなら少なからず伝わる事と思うが、読書の魅力を表現したフレーズがたくさん出てくるのが楽しい。
「一冊の本は別の本へとつながり、次々に扉が開かれてゆくのに、読みたいだけ本を読むには時間が足りない」(p26)
「本は想像力の起爆装置」(p43)
「本を開いて他人の人生に入りこむことを知らなかったらよかったのに」(p77)
「私には声がない」(p127)
いやー、読書ってほんと、良いものですね。
そして迎える結末。
中盤サー・クロードのくだりも良い感じにくだらなくて好き。
1刷
2022.9.3
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エリザベス女王の読書を、移動図書館から宮殿の中での読書を司書係を交えて描いたものであった。日本では天皇の読書についてはたして書くことができるであろうか。この本の調子で書いたら真っ先に攻撃される可能性がある。
20231216に再度読んでしまった。
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英国のエリザベス女王が読書にハマりつつある中、周りを困惑に巻き込んでいくお話。
ひたすら女王と読書、その周辺の人間関係の話に終始していて、時代的な背景や政治的な話などがほとんど描かれることがなく、それがかえってノイズがなく物語を読みやすくしていた。
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面白くて、早く読み進める事ができた。
最近エリザベス女王の映像をよく目にした事もあり、読んでいて女王のチャーミングでキュートな笑顔が時折り脳裏に浮かんだのも良かった。
イギリスの事に詳しければもっと面白かったかも知れない。
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「やんごとなき」という語彙は適切だなーと思った。
あとがきにあるように原題は、
ヴァージニア・ウルフによる文学評論集の題名 THE Common Readerをもじった
THE UnCommon Reader だそうだ。
Commonには「一般的」という意味の他に、
特にイギリスでは「庶民的、品の無い」という意味もある。
のだそう。
イギリスの上流階級はあまり知的ではない
というイメージもしくは、実態を知るとよりこの本が興味深くなってくる。