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怪異を倒すでもなく祓うでもなく、やり過ごす。
もしくは、共存する。
倒そうと祓おうと試みた結果失敗してそうなったのではなく、最初からやり過ごすスタンスなのは珍しい設定だと思う。
何しろ主人公は怪異を見るという能力だけで、それ以上の特殊能力はないと自負している。
……実際は、ちょっとしたものは怒鳴って蹴散らしたり、意外に行動的でこうと決めたら貫き通す部分もあり、決してただの「弱キャラ」ではなかった気がするが。
そう、意外に怒鳴れるし、いざとなったら口も立つんだ、彼。
普段は惚れた先輩へなかなか踏み込めない、なし崩しに世話係になっちゃったみたいな弱い?キャラっぽくはあるのだが。
怪異を見るだけの主人公と、呪われたせいで大学卒業ができずにいる先輩、その他諸々が、じわっと怖い怪異から割とえげつないタイプの怪異まで「やり過ごしていく」物語。
前述通り倒しも祓いもしないので、基本的には根本的解決にはならない。
仮に怪異が出現しても無視できる程度に緩和させる感じ。
現実だって何もかも全てまるっと解決してすっきり!なんて展開はなかなかないのだから、ある意味リアルな塩梅だったと思う。
ただ先輩が抱えている呪いに関しては、ただやり過ごすというわけにはいかなかった。
何しろ規模が時間軸的にも面積的にも広い。
無論、主人公たちに完全解決できるだけの力はない。
それでも、先輩が呪いから徐々に解放される道筋は立てた。
きっと主役二人の関係性が落ち着く頃には、呪いも落ち着くことだろうと信じている。
そう、怪異の陰で進行していたのは恋の物語。
主人公は最初から先輩に一目惚れしているので言うまでもないが、先輩の方が意外だった。
最後まで読んで、改めて先輩のこれまでの行動を振り返り、うええ、そうだったのかと驚いてしまった。
鈍いのは主人公だけではなかったようだ。
怪異をやり過ごす以上に女心は難しいのである。
なお、個人的お気に入りキャラは蘭童くんだったり。
ボケもツッコミも両方こなせる素敵な関西弁キャラ(ただし関西人ではない)
放っておくと深刻なレベルで重くなりそうな話を彼の存在が和らげてくれたと思う。
それだけ頑張ってくれたのに、最後の最後に渾身のツッコミをする羽目になってしまい、本当にお疲れ様でしたと労ってあげたくなった。
彼にもいい出会いがあることを切に祈る。