投稿元:
レビューを見る
今年になって佐野眞一『巨怪伝』を読了してすぐの『プロ野球「経営」全史』。まったくのたまたま。本と本が勝手に繋がる、だから多読はやめられない、です。しかし中川右介の領域の広さに感心しまくりです。しかも、あとがきを読むと著者にとっての必然の執筆であることに納得してしまいます。(ここでは言えない!)『巨怪伝』が正力松太郎が読売巨人軍中心史観を社会に植え付けたか、という暴露なので、本書の球団オーナー55社をフラットに取り扱うスタンスはコインの裏表なのでありました。日本の経済人がビジネスとしての野球にいかに魅了され、ビジネスを超えた繋がりにいかに翻弄されいったか、の一大絵巻になっています。「プロ野球戯画絵巻」。古代ローマ社会の「パンとサーカス」という比喩を思い出すほど、産業とメディアと野球の関係の深さを思い知ました。本当に不思議な人物が次々と球団経営に関わっていきます。だから戦前戦後経済史でもあるし、新興ビジネス人名録でもあります。その中で『巨怪伝』であまり触れられていなかったけど、本書で気になったのは岸信介。戦後社会を成立させていく裏のネットワークが垣間見えます。また本書の帯にある「長嶋茂雄も江夏豊もイチローも大谷翔平も出てこない経営者たちのプロ野球史」という惹句を超えて、登場してくる江川卓という選手も本人の責任とは違う存在感を放っていました。DAZNというメディアDXが進行しながらコロナ禍の入場制限でプロ野球経営は、これからどんな物語を描いていくのでしょうか?本書の最後でも触れられている自前の球場を持たないジャイアンツとヤクルト…読売本社の東京ドームへの出資とずっと噂されている神宮外苑の改造プラン、そこら辺なのかな…
投稿元:
レビューを見る
断片的には知っている話が織り込まれているが、これだけのボリュームで迫ってくると。
しみじみと思うのは、プロ野球というのは、やはり企業がやっているものてせはなかったということ。良くも悪くも(どちらかというと後者か)ビジネスではなかった。
こんなに良いかげんなところがあるのなら、正直18チームで固定されれば良かったのに。
投稿元:
レビューを見る
経営者の視点からのプロ野球球団史。鉄道、映画会社から流通、ITへ。時代を反映した閉鎖的な社会を概観した力作。
何より分量の多い作品。プロ野球の誕生から今日まで、球団の歴史つまりは親会社の歴史。ある意味球団のオーナーは時の名士であるので、そのまま日本政治の裏面史となっているところが何より興味深い。閉鎖的な社会と巨人中心の野球界。
親会社が何度も変わる中、実は創設から全く変わらないのは阪神だけという意外な事実も面白い。
選手や監督がほとんど出てこない、また巨人中心でなく12球団満遍なく記載されているところも評価したい。
投稿元:
レビューを見る
小さいころから慣れ親しみ、プロスポーツといえばプロ野球として、純粋に選手、チーム、試合を見ていた子供の時から、球団とは会社であり、それもまた、スポーツとは関係のない企業が経営していることをいつの頃からか漠然と知った時に、とても不思議な感覚にとらわれたことを思い出した。さらに、好きな球団、スター選手、同郷の選手の活躍を喜々として楽しんでいた裏で、本書に記された政治、経済界、裏社会が暗躍するドス黒い駆け引きが繰り広げられていたとは、背筋が寒い。
投稿元:
レビューを見る
プロ野球、というより、もはやプロ野球を通してみる日本経済の歴史といっても過言ではない。
若干の阪神びいきを入れつつも、僅か数年しか存在しなかった球団のオーナーに関しても、その生年から丹念に記録をひも解き、書き重ねられるプロ野球の歴史に、次第にページをめくるスピードが速くなったのは言うまでもない。
なぜパリーグが一時期観客動員でセリーグに水をあけられたか、地元で熱烈に愛される中日がなぜ常勝軍団にならないのか、ホリエモン騒動ってなんだったっけ…色々ななぜが、読み進めるうちにすっと腑に落ちたのだった。
でも、この本を読み始めて私の心を鷲掴みにしたのは、プロローグのこの一文である。
…これまで球団のオーナーとなった企業で経営破綻したのは、偶然にも大映とダイエーのみである。
プロ野球ファンならずとも、日本の興行の歴史、社会経済の歴史のある人であれば、泣きながら一気に読める類の一冊である。
投稿元:
レビューを見る
85年に及ぶオーナー企業の興亡や経営者の活躍と暗闘を描いたプロ野球史といっていい本だと思います。
阪急と阪神の因縁が100年以上続きやがて一体化したというのは何の因果か。
徹底して産業史として描かれるため、ほとんど選手は出てこないのですが、読み終わるともう少し現状のプロ野球のオーナーも日本の経営者も新陳代謝が必要な企業が数社あるように思えました。
投稿元:
レビューを見る
中川右介さんはクラシック音楽関連の本が多数あり、半年前に「至高の十大指揮者」を読んだ。
阪神の大ファンであるらしく、日本プロ野球を牽引してきたのは巨人ではなく阪神だと主張するために書いた本らしい。
1936年にプロ野球が発足した時は7チーム。
親会社が同じなのは阪神タイガース(大阪タイガース)だけ。
球場が変わっていないのも、阪神甲子園球場だけ。
これが牽引してきたという拠り所みたいだが、素直に凄いと思う。
プロ野球の変遷という視点で、戦前から戦後・現在に至るまでの日本の産業の発展と衰退の歴史の一端をたどることもできる本だ。
テレビの普及が映画を衰退させる要因となったが、同時にパリーグも衰退させ1970年代にはパリーグ消滅の検討までされていた。
本書には戦争で亡くなった選手、チームを率いる監督が何名か名前が出てくるが、監督以外で登場するプロ野球選手は、江川卓。
1973年阪急、1977年クラウンライターとパリーグのチームが江川の交渉権を得るが、江川は入団を拒否する。
そんなタイミングでクラウンライターは総理大臣まで巻き込んで、ライオンズを西武に売ることになる。
時を同じくして巨人は"空白の1日"を悪用し、江川との入団契約を画策する。
この計画はセリーグ会長も知っていて、西武への球団譲渡の条件に江川の交渉権を認めないことを伝えていた。
江川の背後には、作新学院の理事長でもあり自民党副総裁の船田中がいたので、西武は総理の福田赳夫も利用して江川への説得を頼む。
空白の1日事件の舞台裏にコミッショナー、政治家、球団経営者、出資者などのドロドロの根回しや目論見があった。
この事件で、江川卓の悪役イメージが作られてしまったが、特に政治家が絡んでくると裏金の流れも含み醜態をさらす分かり易い例だ。
現在の12球団、セパ2リーグ制になったのは1958年。
1958年の順位で示すと、
セ:巨人、大阪、中日、国鉄、広島、大洋
パ:西鉄、南海、阪急、大毎、東映、近鉄
1979年からの10年は、チームの変更なく過ぎる。
セ:広島、大洋、中日、阪神、巨人、ヤクルト
パ:近鉄、阪急、日本ハム、ロッテ、南海、西武
そして現在、2022年は、
セ:ヤクルト、阪神、巨人、広島、中日、DeNA
パ:オリックス、ロッテ、楽天、ソフトバンク、日本ハム、西武
パリーグはすっかり変わっているが、今応援しているチームがある人は、チームの歴史を知りたければ本書は最適だろう。
球団経営には野球が好きな人だけでなく、プロ野球を利用した金儲けしか眼中にない人も集まって来る。
小佐野賢治や渡辺恒雄などがいい例だが、本書には堀江貴文や村上世彰なども登場してくる。
阪神も村上ファンドに大量に株を買い占められ、経営に口出しされてピンチの時があった。
阪神タイガースが村上タイガースになっていたら、中川右介さんはこの本を書いていないのでしょうね。
私は特に阪神のファンではありませんが、阪神タイガースは"永久に不滅"であって欲しいです。
投稿元:
レビューを見る
プロ野球の経営母体を通して日本の戦後史をたどる。プロ野球興味無くても、というか、興味無い方が楽しめるかも。
投稿元:
レビューを見る
日本のプロ野球の歴史を経営の観点で辿っていく。
昔から順を追って少しずつ今の形に出来上がっていく過程、知らないことが多すぎて面白かった。
「経営」なだけあって金勘定のドライな裏事情のみなのかなと思いきや、黎明期はとくに、「野球が好き」と言う思いから発達につながったというあたり、人間臭くていいなと思った。経営層とか政治家とか、そのあたりの人たちって普段直接は関わりないけど、「あいつが気に食わない」とか「気に入られる」「根回し」「紹介」とか、生な人間関係とかコミュニケーションが超重要なんだろうな。
投稿元:
レビューを見る
骨太なノンフィクション。
プロ野球の成り立ちからIT長者による買収までの
歴史がまとめられております。
鉄道会社がプロ野球に限らず百貨店などを運営するのは
あくまで鉄道を利用してもらうためのコンテンツとして
位置づけられていたとは驚きです。
冒頭のプロ野球オーナー会社一覧図が
非常にわかりづらいのですが、
そうせざるを得ないくらい、複雑な歴史でした。
これを執筆するにあたり、どれくらいの文献を
読み込んだのか、
とてつもない量だと思います。