学術出版に縁がなくても面白く読みました
2022/08/19 13:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:一読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
研究者でもその志望者でもなく、読書は苦手な方ですが、わかりやすく書かれているため読み通すことができました。
研究に支えられた社会に生きる、現代人皆にとって大事なお話だと思います。
学術出版をめぐってこんな悪循環があるとは知りませんでした。
著者ですら自分の書いた論文を自由に読めない・引用できないことがあるなんて驚愕です。また、9章の化学総覧のお話に感激しました。
理系大学生さんは勿論、大学関係のお仕事の方、学術雑誌を扱う図書館員の方、それらを目指す方には特におすすめできるのではないでしょうか。
理系の高校生さんにも、早すぎるという事はないと思います、いずれ進むかもしれない世界の現状・歴史を知っておくことには価値があります。
単に読んでいて面白いですし。
なじみのない分野だけど、楽しく読めた。
2022/09/24 10:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふうん そーなのかー と、軽く読み進められた。
すごい。きちんと読めば、歴史や鋭い分析が満載だ。
巷で、論文の引用数が話題になるが、仕組みも知らず語っていた。
値段や採算のことも考えたことがなかった。
いろいろ知ることは楽しい。
投稿元:
レビューを見る
学術出版の歴史がコンパクトにまとまっている。文体もよく、読みやすい。
最近の動向を追いきれていなかったので、その部分に大いに示唆を受けた。
投稿元:
レビューを見る
いつも大学図書館側の目線で見てしまいますが、研究者目線もしくはもう少し俯瞰的な目線で学術出版や学術情報流通の流れが書かれていて、興味深かったです。学術出版や学術情報流通について、様々な視座から考えるきっかけになる1冊だと思います。
投稿元:
レビューを見る
学術出版の発達の歴史(機能の発達でもありビジネスモデルの発達でもある)が、近年のOA(や、一部オープンサイエンスも)の流れまで含めて書かれていた。
学術出版が、社会として捻出できる以上のコストを要するようになっているなら、量や質(論文の内容の質ではなく、学術出版の質)を社会が必要とする(コストを捻出できる)ところにまで適正化することも含めた検討が必要なんだろうかと思った。(もしくは量や質を落とさなくても対応できる仕組みを作れればその方がいいだろうけど・・)
その過程では、現在学術出版社が提供してくれているもの(IFや便利なサービス)を自明としない意識や評価システムが重要で、大学運営側・研究者側の理解がないと進まないんだろうなと思った。
投稿元:
レビューを見る
タイトルがよく内容を表している一冊。
学術書の中でも、いわゆるジャーナル部分に焦点を当てて、その歴史的経緯から平易に叙述している。
出版社側を批判する論調が多い中、そのような議論だけでは見えてこない視点が多く、示唆に富む内容である。
特に、アカデミック側に対する厳しいコメントが多いが、要するに批判した先の学術界をどう機能させていくか、という視点で対案を示していると思う。
その覚悟があるかどうか、いくつかの先例が示している実践例をどう捉えていくのか、議論のボールを移す一冊になる内容である。
投稿元:
レビューを見る
オープンアクセス,プレプリント,そして最近ではCovid-19など,最近になっても変化の激しい業界である。その歴史が科学とどう結びついているのか,簡潔にまとめられた本。
投稿元:
レビューを見る
学術出版の歴史や課題がわかった。学術出版で編集者といえば、出版社の人でなく著者側を指すことが多いなど、同じ出版でも大きく違う。
一般的な出版との違いを知りたいニーズだけでなく、論文を書く多くの人におすすめできる。
投稿元:
レビューを見る
専門家は、すべての既存論文を調べる。車輪の再発明は避ける。
日本ではA型が多い、英国ではO型、インドではB型が多い。遺伝子の型が安定する基本法則=ハーディー・ワインベフクの法則。
査読まで進めば、採択率は半々。
科学者どうしによるレビューこそ、質を判断する最善の方法。
良心的な商業出版社は、著作権の譲渡は要求しないが、ほとんどは譲渡させられる。出版社の自由がきくから。
p27
投稿元:
レビューを見る
主題は学術出版の大手のシュプリンガーやエグゼルビアが、どのように経営されていて、どのような利益体系を維持するために、様々な方略を用いているか、ということである。
オープンアクセスもそれに取り込まれているがそれは著作権と同様な動きである。
院生にとっては、学術雑誌への投稿がどのようになされているか、について知ることができる。学術雑誌に投稿することがない学部生の卒論ではあまり関係がないであろう。
投稿元:
レビューを見る
nature等の雑誌の掲載料は20万円近く。問題は著作権を雑誌側に譲渡することとなっている点。現在、商業誌はオープンアクセスに転換を迫られている。その場合、natureでは掲載料が125万円でオープンになるのはその論文のみで残りを読むには購読料が必要となる。学会誌などでは、査読後の最終稿(レイアウトをする前)を機関リポジトリに置けばオープンアクセスとみなせるらしい。
☆論文はデータと考察で構成されが、データは公開(共有)し、考察部分を論文に掲載する方向とするのはどうだろう。オープンデータとの連携によるオープンアクセスジャーナルがいいのではないか。文系の場合、データに相当するのは何だろう。また、そうなると、短報と総括論文(メタ論文)に分かれることとなろうし、それぞれ掲載誌も分かれるのではないか。
投稿元:
レビューを見る
学術出版全体の歴史や、現在の課題などについて概観して分かりやすく解説している本。
「アインシュタインはピア・レビューが嫌い?」みたいな項目もあり、興味をそそられた。
投稿元:
レビューを見る
学術出版の現状の姿について、商業出版社、アカデミアの研究者、大学図書館、政府機関といったステイクホルダーの利害の観点からその変遷を解説している。ピアレビュー、商業誌と学会誌、ランキング、オープンアクセス、ビッグディール、論文レポジトリ、データベースといった学術出版を取り巻く様々な仕組みは、その登場や発展の歴史を持ち、かつ、科学の発展にとってというより、ステイクホルダーの利害の妥協点として存在していることがわかる。
現在の様々な仕組みが、目敏い起業家や実業家といった商業出版社サイドから提案されたものが多く、アカデミアや政府が後手に回っていることは見逃せない。また、PMCへの論文登録義務化などは、アカデミアの草の根運動ではなく、政策や論文配分機関の施策として実現している。これらの例からもわかるように、研究者個人の研究活動を規定する(少なくとも影響を与える)環境を構築するのは、必ずしもアカデミアではなくその外部に依ることが極めて大きい。
ガーフィールドによる引用データベースの構築と、日引用数やインパクトファクターの分析は、現代的な計量文献学の先駆的な仕事としても重要であった。それが研究者の評価に使われたことで、様々な歪みが生じているにしても。
投稿元:
レビューを見る
最近、エルゼビア等が刊行する専門誌の掲載料がバカ高いとネットで話題になっている。知人にも自然科学系の研究者がいるが、数十万円の金が飛んでいくのはざららしく、よく愚痴をこぼしている。学術の世界は業績があってナンボであるので、高いインパクトファクターのついた国際誌に掲載するためにはやむを得ない先行投資とされてきた。しかし、ここに来て、それが正しい形なのか、疑義が出ているのである。
本書は学術出版の成り立ちからピアレビューの意義まで丁寧に解説してあり、とても興味深く読んだ。著者は出版者が営利を追求するのは自然なこととしつつ、そこに何かいびつなものがないか、問いかけてくるのである。投稿論文を書いたことがなかったとしても、世界の科学のあり方が見えてきて、非常に面白いのである。
ただ、これは医学や化学、物理学などの自然科学系、それもPubMedに掲載されるような一握りの国際誌の話だろうと思う。国内の専門誌は、商業誌であっても掲載料など請求しないものがほとんどだろう。そこを区別しないで学術誌はすべて無料公開しろというのは、学術出版そのものの崩壊を招く。本書はもちろん、そんな主張はしていない。
本書はまた、学術出版の形態の変化も追っている。その一つが掲載料を抑えたWeb版での論文無料公開である。この形態がどうなるのか、それはまだこれからである。科学の智慧をいかに共有して、次代につなげるかはとても大切なことだと思う。本書で学術出版を知り、また研究者がどのような世界にいるのかを知れた。