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寝る前に松本隆のことばを読みながら、音楽に耳を傾ける時間はやすらぎのひとときだった。
彼がどのようにして言葉を紡ぎ、それに真摯に向き合ってきたのかがよく分かる一冊。彼こそが日本の作詞家である。
どの歌の話も良かったが、『君は天然色』では涙を流してしまった。
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何となく気になり、本書を手に取りました。
私は歌のことはよくわからないのですが、この本では「言葉」がとても大切に扱われていて、そのことが深く印象に残りました。
まっさらな気持ちで、感じ取ること。
「言葉」をたくさん自分の中に蓄えておくこと。
多くの人たちに届く言葉というのはこんなふうに生み出されていくのか、とあたたかな気持ちで読みました。
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時宜を得たというか、きっとこの本が出るのが数年早かったら魅力が半減していたように思います。やはり歌詞を読むだけでなく昔の音源にもアクセスしやすくなったサブスクの存在はとても大きいです。
何度も聞いたことのある木綿のハンカチーフってこんな曲だったんだ、みたいな再発見も多かったです。
松本さんが礎を築いた「日本語で歌詞を書くこと」の美しさというのは、近年のJ-POPでもしっかりと受け継がれているように感じます。YOASOBIなどはサウンド面の印象が強いですが、歌詞もとても魅力的ですし、星野源さんの作品などにもその影響をとても強く感じます。
余談ですが松本さんが作詞を始めたのも、星野さんがインストバンドのSAKEROCK後に歌い始めたのも、細野晴臣さんの一言がきっかけだったというのは面白いですね。才能を見抜く目がすごすぎる。
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松田聖子「渚のバルコニー」、「赤いスイートピー」や寺尾聰「ルビーの指輪」、Kinki Kids「硝子の少年」などのメガヒットを数多く生み出した日本を代表する作詞家、松本隆のインタビュー。
稀代の天才が紡ぐ言葉はどのようにして生み出されるのか?多くの読者が関心を寄せるところだが、冒頭で氏は言う。自分は、定型やテクニックのようなものからは一番通りところにいる、と。人の心を動かすには、言葉は顕在意識ではなく潜在意識に届けなければならない。テクニックは顕在意識には届くが、ここにいくら届けても感動は生まれないと。
例えばマーケティングなどの世界では、いつの時代もテクニックや定型化に余念がないが、作詞という文学的な世界ではそのようなものに頼っていては、時代を超えて語り継がれるものは作れないという事だろう。一方で、そうしたマーケの世界でも長く親しまれるキャッチコピーなどは存在する。松本氏のような発想で言葉を紡いでいく先にのみ、そのうような境地に至ることができるのかもしれない。
文字の見え方、字面、並び、リズム感など、さまざまな要素を深く考え抜いて、作品に仕上げていくのである。学ぶことはたくさんある。
リズム
語感の気持ちよさ
字数: 7、5調、日本語は3,5,7の組み合わせがベスト
美意識: ガラスの林檎 (x リンゴ)
言葉の並び: 好きよ、でもね、たぶん、きっと
冒頭で否定したテクニックのような話も上記のように解説されているが、これらはいわば後付けの講釈であり、やはり松本氏は自身の感性や感覚的なものを大事にしていたのだと見受けられる。そうしたものを育んだのは、幼少期から触れていたという国内や海外の文学なのであろう。人を感動させるには、まず自分が感動しなくてはならない。
言われてみれば当たり前に思えるが、凡人はなかなかそれに気づくことが出来ない。松本さんから教えて貰った事を生かしていきたいと思わせる、まさに言葉の教室だった。