紙の本
「から」でも「より」でも
2021/12/21 21:31
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投稿者:にゃにゃんこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画版は「ロシアより」だが小説版は「ロシアから」なんである。対して違わないようだが検索なんかしようとすると微妙にストレスになるんだよね。ボンド暗殺自体が目的の、シリーズとしては変化球。結末からすると、ひょっとしてフレミングシリーズ打ち切るつもりだったのかなんてことも思わせるが。
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なんだこれ、『カジノ・ロワイヤル』から、格段にスケールアップしている!
というのが、冒頭を読んでみて、いきなりの印象だ。
プールサイドで、底知れない男の筋肉をもみながら、その女性は、相手のことを、知るまい、知るまいと気をつけている。
読者としては知りたいのだが、彼女の生命のためには、まったくもってそれが正解だろう。
さて、読んでも読んでも、007は出てこない。
ジェームズ・ボンドの名前も出てこない。
出てくるのは、マッサージを受けていたドノヴァン・グラントなる男についてだ。
アイルランド娘とドイツ男性の一夜の関係で生まれたこの男は、殺人狂である。
今でこそ、犯人像として珍しくない人物だが、1957年出版の本に出てくるとは思わなかった。
自国に飽き足りなくなった青年は、ソビエトに渡り、天職にたどり着く。
SMERSH(スメルシュ)――ソビエトの誇る暗殺機関の、死刑執行官である。
ソビエトは、スメルシュを使って、ある男の暗殺を決定した。
007――ジェームズ・ボンドを「恥辱を与えて殺害せよ」今や首席死刑執行官となったドノヴァン・グラントに、その指令が下った。
さて、この作戦には、見目麗しき女性が必要だ。
タチアナ・ロマノヴァ――グレタ・ガルボの若い頃に似た美女――彼女が今回のボンド・ガールである。
国家保安省伍長、まだ24歳、すれたところのない彼女は、
「あなたの写真に一目惚れしました」
ジェームズ・ボンドに言い寄る役として、ぴったりだ。
ジェームズ・ボンドの名前が出てくるのが、数十ページ後、彼そのものが出てくるのが、第二部から、ボンド・ガールと合流するのが、ようやく、ええと――
グレタ・ガルボに似た美女もさりながら、実は私はこの人もボンド・ガールに入れちゃってよいのではないかと、気になる女性がいる。
ローザ・クレッブ、ヒキガエルに似た、美女ならぬ醜女である。
スメルシュにおいて、作戦遂行部責任者の地位についており、部下や同僚から、重宝され、疎まれ、生理的に不快に思われている。
偉そうで、拷問が好きで、"実動部員"としても実力者なので、近くにいたら堪らないだろうことはわかる。
けれども、私は彼女が気に入ってしまった。
『ロシアから愛をこめて』は、読んだ後に映画版を見た。
『ロシアより愛をこめて』――タイトルはちょっと違う。
まともにソビエトを敵にはしていなかったり、機械の名前、機関の名前が変わっていたりするが、大筋は変わっていない。
ドノヴァンは寡黙で、
タチアナは美女だし、
ローザは強烈だし、
ジェームズ・ボンドはショーン・コネリー――男前だ。
しかし、映画はさておき、この原作は困った。
面白く読んだ後にこれか!
早くつづきを読ませてほしい。
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2022/2/4北京五輪開会式の日に読了した。(当時、全く意識はしなかったけど)
SMERSHの「ボンドに恥辱を与えて殺害する」作戦が、なんかみみっちい。どうせ美女を使って誘惑するなら、ラブシーンに力を入れて欲しかったが、あの程度の描写が1950年代の限界だったか? あと、結末は所謂「クリフハンガー」で、次回作を期待させるものだったのかな?