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本書は、作文(をはじめとする様々な形式の文章)を書くことが苦手な子どもたちを支援する方たちに向けた一冊だ。せっかくなので、本書の「推薦する文」(pp.111〜122)のフォーマットに則って感想を書いてみようと思う。
(point① 推薦するものの基本的な情報)
本書は3章構成になっている。メインは第3章「文種ごとの支援法&ワークシート」だが、1、2章で「なぜ作文が苦手なのか?の背景」「作文を支援するためにどんな視点を持つか」についてまとめられており、これらの内容を踏まえて3章で具体的な支援のアイデアが提案される。
(point② 内容の一部の紹介)
1、2章では「作文(というより書きたい内容を選んで決める、自分の伝えたいことを捉える、どのように表現するかの段取りをつける、など)が苦手な認知的背景」や、それに対する特別支援教育的な視点が述べられている。従って「なぜ、このようなタイプの子にこのような支援が有効なのか」が根拠を持ち、読者が支援のための具体的イメージをしやすくなるのではないだろうか。
(point③ 推薦するもののよい部分を紹介)
さらに、3章で提案されているワークシートはダウンロードできるようになっている。
実際に使ってみて、使い勝手に合わせてバージョンアップするのもよし、さまざまな応用が効きそうだ。文章は平易で堅苦しくなく読みやすい(字も小さくない)。「大学の先生が書いたなんて難しいかも…」という不安も無用。
(point④ 推薦するものについて価値づけるような一言)
「なんでもいいから思ったことを書けばいいんだ」では書けない子どもたちにとって、指導者や保護者が上手にガイドできるようになることは有意義だ。小学校の作文にとどまらず、言わんとする内容を相手に効果的に伝えるスキルは社会で生きていく限り必須だから、よい練習になると思う。
考えてみれば私たち大人だって仕事や連絡などで「報告」「推薦」「意見を伝える」など、文を書く機会は多い。
一度本書のフォーマットに沿って、効果的な文章を書けているかを大人自身が検証してみるのも面白いのではないだろうか。
(point⑤ 相手や目的を考えた価値づけ)
以上、本書のすすめるスタイルで書いてみた。
実際は、この後に不要なところを削ったり言い回しを工夫するなどの推敲作業が必要になるだろう。
作文指導の本はたくさん出ていると思うが、編者の専門とする「ユニバーサルデザイン教育」の理念が通底しているところが本書の最大の特徴と思う。
作文指導する機会のある指導者、保護者のどちらにもおすすめしたい。