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タイトルが実在する用語だとは。単に彼の国を批判するのは簡単だが、翻って我が国はどうなのか。どの国も同じ、と言えなくもないのではないか。マスコミが報じない事は多いだろう。目に見えるモノが世界の全てではないと思わされた。
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あくまでもフィクションです。
しかし取材に基づく作品であるため、知らなかったことが満載でした。
私の中の普通とか常識からかけ離れており、恐怖を感じてしまいます。
狭い世界で生きているのを思い知らされました。
そして、最高のミステリーでした。
未来が明るいことを祈ります。
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北朝鮮という国はどんな国なのか?
報道を信じれば軍国主義で一部の幹部が法律を剛拳の如く振るい多くの国民はそれに従わされている。併せて食料や医療が逼迫しておりアジアの中で非常に貧しい国のイメージがある!
果たして本当にそうなのか?
本書を読むと真実かどうかはさておき、ベールに包まれている北朝鮮の地方の実態に触れられる。
また、日本は裕福で自由の国とは言えるが北朝鮮という国と経済的な豊かさ以外でどれ程の違いがあるのだろうと、改めて考えてみたい。
主人公のクム・ヨンイルは北朝鮮の警察官!
11年前の殺人・強姦事件の再捜査を命じられるが過去の捜査の杜撰さを認識させられながら操作を進めていくのだが・・・
物語は二転三転四転する!!
さらに、本書は人権無視や階級差別と密告社会の恐ろしさを本書は語ってくれる!
ジョージ・オーウエルの1984年を思い出した。
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北朝鮮を舞台にしたミステリ
出身成分と言う名の階級社会。抗うことができない絶対的な権力の中で、ある村で起こった殺人事件が真相解明に向けて捜査されていきます。
北朝鮮であるが故に起こり得るストーリー展開に引き込まれるように読みました。
脱北者の話をもとに書いているとのことで、北朝鮮の現状を想像しながら読むことが出来ました。
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出身成分というのは、北朝鮮の階級制度のようなもの。特権階級にあるもの、降格の不安を抱える保安署員が過去の犯罪捜査のやり直しを命ぜられ、再捜査の過程で偏った体制、貧困下でのずさんな捜査が明らかになっていく。
帯には、脱北者の証言に基づく・・・とあったが、これが北朝鮮のリアルなんだろうか?
それにしても、何とレパートリーが広いこと。毎度のことながら呆れるわ。
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私は彼の国について、解説の冒頭にある以上のことは知らない。知る術もない。ただ、不気味な国、国民全員でカルト集団に属しているみたい、と言った印象を持っている。高齢者や田舎から出たことのない、極狭い範囲での常識が全ての常識だと思い込んでいるような相手と、同じ言葉に話しているのに会話が成り立たない、理屈が通らない、そう言った類の気持ち悪さも同時に持っている。そう、この物語は『気持ち悪い』のだ。解説にもあるように非常識が非常識ではなく、そのおかしさに誰も気付いていない。外側から見れば、明らかにおかしいのに国全体で『非常識』なのだから、非常識も既に『常識』だ。これは、泥に靴底が沈む不快感と似ている。
世界的に差別は悪しき習慣とされ、平等や公平さを理想としているはずだ。そうであるはずなのに、国が階層を設けているとは。もちろん、カースト制度やアパルトヘイトも学校で習った程度には知ってはいる。それらもこの物語を読めば、階層や分断が何を生み、人をどう作り上げるのか、浅い知識しかない私にでも想像がついた。出身成分に加えて性差による不平等。食事ひとつ取ってみても、家長が箸を上げなければ家族は食事もできないだなんて、そんな非合理的なルールに意味はあるのか? 馬鹿馬鹿しい。女性に生まれた時点で家長にはなれない。いや、それ以前に出身成分によって、人生は決められてしまう。最下層の敵対階層に生まれるか、そうでなくとも降格してしまえば、仕事どころか教育の機会さえない。女性は売春でも、トウモロコシの粉をひと握りだと言う。性上納? そんな言葉を私は初めて知った。おぞましい。寒気がする。検索してみたが存在するようだ。俗っぽい言い方をすれば、枕営業や性接待か。いや、営業や接待なら女性にも利益はあるはずだ。インジャが言うように、ただの性欲処理だろう。11歳で養父から性交渉を強要され、時には親戚にも貸し出されたと言う。要職に就いていた相手だったがために短期間で出世したと言うが、それが彼女にとって望んだことでもなく、なんの意味もなさなかったことは怒涛の終盤で分かる。彼女は尊厳を失っただけだ。人間の扱いじゃない。主人公ヨンイルが性交渉を要求しなかったことが嬉しかっただなんて、彼女を取り巻く世界が無慈悲過ぎて涙なしでは読めなかった。
私は貧困から抜け出すには、勉強が一番手っ取り早いと考えている。そのために、子どもたちには平等な教育が必要なのだ。そうでなくては、選択肢は広がらない。国が国民の夢や理想を取り上げてどうする。馬鹿か。
今年2月、某プロゲーマーが「人権がない」と発言したことで炎上していたが、本当に『人権がない』と言うのは、こういうことかと思い知らされた。私は余りにも無知だ。私もまた、自分の周辺しか見えていないのだ。裕福ではないが人間らしい生活はできてはいる。だが、人間性の幅としては小さな集落暮らす陰湿で狡猾な人たちと、大差ないのかもしれない。
国民の衣食住を保証できない政府は、政府として機能しておらず、無能だと思う。これを彼の国で口にすれば、私はたちまち敵対階層の中でも最下層に降格だろう。いや、即刻死刑か。私の二親等まで道ずれにし、孫の代まで生き地獄を味わわせてしまうことになる。
読了後、私は分かっていたつもりの『人権』と『言論の自由』について考え直さずにはいられなかった。日本だって、女性の選挙権は先人たちの努力あってこそだ。未だ男女格差もあれば、富裕層か否かで、子どもの学力・学歴に直結してしまう令和。そんなのおかしい。生まれはどうであれ、人生は、当人が選択を繰り返し進むものだ。国にも何者にも、選択肢を取り上げられてはならない。そして、今、手にしている権利も何もかも当たり前に享受されていると奢ってはいけない。そして、見つめ続け、考え続けなければならない。思考を停止させれば、待っている未来はこの物語だ。
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「出身成分」
タイトルだけ見るとなんだかいやーな印象を受けるが、内容はとても興味深いものだった。なんが真実なのか分からないが、日本から飛行機で3時間ぐらいで行けそうなところに、こんな世界が存在すると考えると本当に怖いことだなと思う。
最後に少しだけ救われた感じがしたが。同時に途方もなく切なくなった。
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保安署員クム・ヨンイルは11年前の殺人・強姦事件の再捜査を命じられる。再捜査に父への思いが重なり自国の体制に疑問を抱いたヨンイルは、ついに真犯人らしき男にたどり着くが…。鉄壁な国家が作り出す恐怖と個人の尊厳を緻密に描き出す、衝撃の社会派ミステリ。(e-honより)
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主人公みたい正義感にかられて罪のない人を助ける事に全力を尽くすことはできないし、自分を犠牲にし、しかも家族も犯罪者同様の生活になるのは耐える事はできない。北朝鮮の実体はまだまだ暴かれていないのかも知れないし、この小説は真綿にくるんでソフトな言い回しなのかも知れないけど読むのに苦労し、主人公の思考にも読むのに胸がつまる思いをしながらなんとか読み切る。
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うわー面白い。ラストの展開めちゃくちゃ痺れた。松岡圭祐はこんな重苦しい重厚な物語も描けるのか。いつものエンターテイメント全開なのとは全然違うけどやっぱり面白い。作中にあった「市民がへらへら笑いながら歩いていたらおかしい」って主人公のモノローグが北朝鮮の雰囲気をうまく伝えてるよなあと舌を巻いた。そんな描写が散りばめられてて、取材力半端ねえよ。希望のあるラストでとても良かった。