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排便は普通タブーな話題である。それを病気で常に意識せざるを得なくなった主人公。うんこドリルに嬉々とする小学生男子は、安全地帯なのがわかってるから楽しんでいられるのだ。自身の大便が漏れるなんて、まず受け入れられない。当然、読んでて気分のいい話題でない。でもこの話はタブーでない他の後天的な障がいにも置き換えられると思う。周囲の反応を恐れたり、障がい者としての位置付けに抵抗したりする、幾重にも重なる常識との対峙。でもやっぱりタブーを描く理由は、究極の選択的な発想でどこか「自分だったら、この病気には耐えられない」と思ってしまう、そんな安全地帯にほっとする読者心理まで描かれているのだと思う。
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「内臓器官で一方の端が閉じている管(盲管)において、その閉じた端のこと」
盲端、というその言葉を初めて目にし、すぐに調べてみました。自然な状態においてそれは「盲腸」にのみ見られるらしい。主人公にとって「盲端」とは…
就活中の大学生涼子。飲食店でバイト中に倒れ気付いたときには人工肛門の身体になっていた、って、それは信じられないほどの衝撃だったのではないか。食べてものを今まで当たり前のように肛門から排出していたのが、今後はおへその横に作った人工肛門からストーマパウチのなかに出すことになるのだ。しかも便意はない。いつ出るかわからないのだ。若い女性にとってこれは耐え難いことだろう。口と腸が一直線で繋がっていること。口から洩れる便臭。授業中でも食事中でもバイト中でも、勝手に出てくるのだ。そしてその出た後の処置もまた大変だし処置のできるトイレはどこにでもあるわけじゃない。
オストメイト対応の多目的トイレというのは人工肛門の人たちにとって必要不可欠な場所なのだ。
ネット上匿名で繋がるオストメイトたち。悩みを吐き出したり情報を交換したり。でも涼子はリアルで繋がろうとはしない。そこに一本の線がある。踏み込ませない、踏み込まない一本の線。手術で直腸をつなぎ再び肛門から排便できるようになれば彼らはそのグループから抜けていく。あくまでリアルオストメイトたちだけの場。
その線を超えて近づいてきた一人の男。排便を完全にコントロールしストーマパウチをつけていない彼との出会いで涼子は一つの線を超えていく。
この先の人生を障がい者として生きていくこと。一生ストーマパウチを身体にぶら下げて暮らすこと。それを受け入れること。
社会は健常者と障がい者に分けられている。健康であることと病気を持っていること。高さや大きさはいろいろあるけれど、その間にある壁。知らないということがその壁を厚く高くしていく。
いつ自分が壁の向こう側の人になるか誰もわからない。その時が来る前に一つでも知らないことを減らしておこう。多目的トイレにある白抜き十字のある黒い人型マークも覚えておこう。
ここまで書いてきて思い出した。健常か障がい者か、だけではない。学歴や職種、そのほかにもたくさんの壁が私たちの中にある。知らずに積み上げた壁。そのことを読み終わって痛感した。
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現役医師の著者によるデビュー作。大学生になった涼子は飲食店のアルバイトや学校生活を謳歌していたがある日、不幸が襲う。不自由な生活を強いられる中で、その意識と身体の変容を執拗に描く表題作に加え、第7回林芙美子文学賞受賞作「塩の道」も併録。
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どちらの作品も、扱っている内容が重くて、ひとつひとつ噛みしめながら読みすすめ、読んでいないときにも、頭のなかをさまざまな思いが渦巻く。表題作は、オストメイトになった女性の物語、「塩の道」は看取りと土地柄と医師のかかわり方の物語。題材は重いのだが、語り口はどちらも淡々としていて、ことさら煽ることもなく、沈むこともないのが、却って胸に突き付けられるようでずしんとくる。描写がリアルで、知らないことが多く、揺さぶられるような一冊だった。
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人工肛門についてよくわかった、というひと言に尽きる。女子大生の涼子はバイト先で大量出血し、緊急手術。人工肛門をつける生活を送ることになる。普段「あら、私ったら痔かしら」と危ぶむ時以外肛門について考えることはあまりないが、人工肛門生活は相当ハードだ。まず便意が感じられない。気がつけばお腹に設置した袋に便が大量に詰まっているとは気になるし不便だ。そして特筆すべきは本全体を包むカオスな雰囲気。これは涼子のバイト先のヤバさが醸し出しているのだろう。P140ほどのボリュームとは思えないくらいの読後の疲労感。
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色々なことが赤裸々に鮮明と書かれすぎてて最後まで読み切れなかった。糞尿の話が永遠と続いてました笑
初めてギブアップした本です
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健常者は、普通であることの有難さを忘れがちである。
毎日便通のある人間には肛門からウンコが出るという事、
こんなにもありがたいことなんだ。
人工肛門が神の試練であるわけはない。
でも、今ある現実を否定はできない。
すべてに共通することではあるが、やはりツライ。
読書中に便意を催したのは私一人でしょうか?
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大学生の涼子は、突然の出血で病院に運ばれ
気が付けば人工肛門(こうもん)が造設されていた。
便はパウチの中に溜まる。
外出先では、バリアフリートイレで便を捨て
ハンドシャワーでパウチの中を流す。
P79
〈肛門から排便する夢見たよ。気持ちよかったぁ〉
人工肛門を付けた人たちが集まるチャットグループで
あるメンバーが発した言葉。
食べて排出するという当たり前のことが変わってしまう。
P90
〈内蔵を忘れて生きて行くことなどできない〉
セリフのひとつ一つが真っ直ぐ投げられてくる。
それを受け止める覚悟のようなものが必要になる。
併録されている『塩の道』は
東北の診療所で働く医師が見た、村民の死に対する尊厳。
忘れられない一冊になった。
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これは、、、とても好みが分かれるのではないか。
著者のデビュー作『私の盲端』と林芙美子文学賞を受賞した『塩の道』の2作品が収録されているが、どちらもなかなかに読む人を選ぶ、と思う。
ブクログでの評価が3を下回っていることには些か驚いたし、そんなに不出来とは思えないが、多分、合わない人には合わないであろうことは容易に想像がついた。
現に私も、ちょっと受け入れ難くて読むのをやめようかと何度か頭をよぎった。結果として、手を止められずに一気読みしてしまったのだが。
なんと言ったらいいか…どちらの作品も、あるグロテスクさがあるというか。
妙にリアルで、そのなまめかしさや温度、粘り気のある音などが感じられて、いつまでも頭の中にこびりついて離れない感じがする。ちょっと気分が悪くなる。著者が現役の医師だからなのだろうし、そういう予備知識があることも、よりその感覚を増長させている気がする。
つまらなくはない、だけど、面白いかと言われればそうとも違う、かといって駄作だとも思わない。読んで気分が悪くなるくらいだけれども、なぜか引き込まれて読んでしまう。
この著者ならではの、なんともいえないざらつくような粘りつくような読後感が、怖いもの見たさ的に癖になる、かもしれない。
星のつけ方に悩み…う~ん、どうしよう。万人受けはしそうにないなということで二つにしておく。
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「私の盲端」「塩の道」2作品収録。
現役ドクターの作家デビュー作。
一言で言えば…
私の盲端→人工肛門について。
塩の道→高齢化した地域の医療について。
総合的によくわかった。
だけど、私では、何も出来ないもどかしさ…
ひとつ出来るなら親切にする事…くらい、だろうか。。。
‘22.05.07読了
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レビューに書いている人にグロい、読む気が失せた等、あるけれど、思ったよりは淡々とつづられていて、私的には読みやすかった。
たかがうんち、されどうんち、、、お尻から出るものが違うところから出る、とってもシュールで目を背けたいものになる気持ちはわかるけれど、息子氏のオムツのうんちが、でた!でないで一喜一憂する母の気持ちとしては、くさいという気持ちはあるけれど、汚いという気持ちはないなぁ、、、ただ、こういう体になったことに理解してくれる人がいない、孤独を感じるという空虚さは理解できるような気がします。
もう一つの、在宅医療を扱った塩の道の医師のやる気のなさが、半端なさすぎて、医師のメンタルも大変なのだなぁ、、、と思ったのでした。
現役の医師である著者が書いたというのが、やはりリアルティを感じます。
ただ、メンタル弱めのときに読む小説ではないのか、メンタル弱めの時だからこそとことんダークなものを読みたいという気に駆られる時もあるのですが、そういうダークさは中途半端な気がしました。
どちらにしても、淡々とかかれ、中途半端なリアルティーさと、幻のような幻影的なものを感じてしまうのが不思議な本でした。
また読みたいか?と聞かれるとNOですが、、、
人工肛門スマートパウチをつけている人たちについてかんがえたことがなかったので、車椅子用のトイレのビザの在り方など、そういう意味で考えさせられました。
そういう意味では読んで良かったと思う小説です。
読んで以来、車椅子用トイレに入ると人工肛門のことを考えてしまう自分がいます←
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人工肛門の女性の話。あらすじで気になって読んだ。読みやすかったけど主人公のバイト先がだいぶ下品で面食らった。引く。人工肛門が霞むくらいそっちに気を取られちゃうよ。
後半の方はそんなことして大丈夫?と思うようなことがある。
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読み終わって...
なかなか評価のしづらい本
でも読んで良かったと思える本
盲端という言葉を初めて知った
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読了後に現役のお医者さんが書いた本だとわかって納得。『私の盲端』も『塩の道』も医療描写がとってもリアル、そしてゾクゾクするような感じ。読者の想像力に訴える描き口。両作品ともに、なかなか接しない人々の描写が多くて、想像するまでに時間を要し、小説には珍しく読了までに時間がかかった。
時々想像力だけでは補いきれず、ググったりして無理やり想像したりして。面白い読書体験でした。
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大腸がんは増えているらしいし、人工肛門の方も増えているらしいので、シリアスな問題であり、真摯に読まないといけないのだが、なんだかスカトロ小説的な描写も多くて、涼子ちゃんが、膣ではなくどこにもつながっていない直腸を温められるシーンでは、悲しすぎて、嫌悪感さえ抱いてしまった。
個人的には、少なくとも読後感のいい小説ではなかった。
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オストメイトになった女子大生の話。ある日突然、人工肛門になり半年後の再手術までという話だったが…周りの人間関係や同じくオストメイトと出会ったりなど、全く知らなかったオストメイトについて知ることができる。便意がないのに便が出る、パウチの中の便は柔らかくほぐさないと出せない、そんな生活を想像したこともなかった。様々な描写が盛りだくさんで、特にアルバイト先の話はなんだったのか。便に絡んだ話ということなのだろうか。