紙の本
素朴であり、世知辛くもあり
2022/12/02 22:33
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある時は教会の、またある時は権力者の権威付けや格付けアップのために必要とされる聖遺物。
聖遺物を盗んでくるエピソードは本当に世知辛い。
それでいて聖遺物には庶民の素朴な願いを受け止めてくれるクッションの役割も。
フランス革命で聖遺物が破壊されたエピソード…
カトリックの長女といわれるフランスでこんな事が起こるとは。
なんとなく日本の廃仏毀釈を思い出した。
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・ロワール地方のフリュリーという修道院では、なかなか聖遺物が願いを叶えてくれなかったので、聖遺物をたたいたという記録があります。
・天使がこの世に現れて残した痕跡も、聖遺物のひとつです。その中でも有名なもののひとつが、オベール司教の頭蓋骨です。708年のこと、モン・サン・ミシェルに程近い北フランスのアヴランシュという町にオベールという司教が住んでいました。ある日、オベール司教の夢の中に、大天使ミカエルが現れて、「沖の小島に聖堂を建てよ」と告げます。司教は「夢か」と思って聞き流していました。するとまた、大天使が現れて、もう一度同じことを告げます。が、これも「また夢か」と聞き流します。3度目に夢に現れた大天使は、これでも信じないのかと、司教の頭をかなり強くつつきました。頭の中を稲妻が通り抜けたような衝撃を受けて飛び起きた司教は、「不思議な夢を見た」と思って頭を触ってみると、そこには穴があいていたということです。
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「聖遺物」とは、キリスト教におけるキリスト、あるいは聖人が現世に残した痕跡をいう。
例えば、映画「インディジョーンズ」に出てきた「聖杯」、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に出てきた「ロンギヌスの槍」等は日本でも有名。
その他にもキリストの遺体を包んだとされる「聖骸布」や、キリストの磔刑に使われた十字架の破片、体を十字架に貼り付ける際に使われた釘をもとに作った剣他、数多くの聖遺物につき、その出自と、それらがキリスト教関係者だけでなく、王侯貴族の自らの権威付けとして使われてきた歴史、および日本の神社仏閣との共通点等々の考察で本書は構成されている。
本書で初めて知ったのだか、「聖遺物」は通常キリスト教にまつわるものだけを指し、世界各地に多くの聖遺物があるということ。
それらが前述の通り、映画やアニメ、あるいは物語を通じて、キリスト教信者以外にも世界中に広く浸透しているところが非常に興味深い。
また、日本では聖遺物とは言われていないものの、神社仏閣でご神体やご本尊と言われるものが安置され、それらを人々が拝みに来ることと、聖遺物は通常教会にあり、人々はそれを礼拝に来る、という点では共通点があるのでは、という著者の見解には、なるほどと思った。
前述の映画やアニメだけでなく、小説やゲームにも聖遺物をベースにしたアイテムが多く出ていると思うので、ファンタジー系や異世界系が好きな人は本書を読んでみると、自分の知っているアイテムの元ネタが見つかって面白いかも。
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1章 ミステリアスな物語とともに語り継がれる―聖遺物とは何か
2章 ロンギヌスの槍・聖杯・聖十字架―三大聖遺物の伝説
3章 権力者も教会も入手しようと競った―キリストの様々な聖遺物
4章 キリスト教の発展とともに浸透した―聖遺物礼拝の歴史
5章 高名な聖遺物を求め、人々は旅に出た―巡礼ブームと教会
6章 聖母マリアからマグダラのマリア、ザビエルまで―聖人・聖女の聖遺物
7章 民衆・教会・権力者、それぞれの思惑とは―聖遺物信仰の意味
終章 「中世史」のイメージがくつがえる―聖遺物探究の魅力とは
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キリストと磔刑から2000年が過ぎた。
その言い伝えが様々に着色され、まつわる品々も多岐にわたる。
全くの贋物もそれらしく飾りつけられ、人集めになったり、それが一つの心の拠り所となっているものもある。
聖地巡礼では目的となる見物となったり
現代の私たちが知る、神社の御朱印のようでもあるとあり、成程と思う。
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ソフトカバーの表紙にいかにもなサブタイトルで、あることないこと書かれたオカルト本かと思っていたら(それはそれで好き)、とても丁寧な上に真面目な一冊で驚いた。
聖遺物という事象に対し、聖と俗の両面が語られており、なるほどとタメになる。