紙の本
ひろとこ
2022/12/25 21:46
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投稿者:ひろとこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説はあまり読まないのだが、ナチス占領下のパリに興味があって手に取った一冊。洒落た映画を見ているような気分で、一気に読破。疎遠になってしまった親戚や亡くなった家族の思い出など、なんとなく懐かしい気分になるようなところもあって、主人公のオディールに共感できた。何より言ってはいけなかった言葉、言葉の重みについて考えずにはいられない。それでも希望を感じるラストに救われる。
紙の本
確かに本を守ろうとしたけれど
2023/10/02 20:58
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投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争を背景とした図書館の物語ではありますが、私にはむしろ人のもつ嫉妬心の怖さを書いたお話に思えました。一時の感情に任せて言い放った言葉によって大きな波紋が広がり、結局その報いは自分が受けることになる。
雄弁は銀、沈黙は金。
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ナチスの侵攻が辛い。
洗練された素敵なパリの街が、灰色にくすんできて
当たり前の日々がどんどん壊れてきて、大事な人が消えてしまう恐怖は想像がつかない。
オディールの今と過去が入れ変わり、物語が進んでいてオディールの過去が明らかになる。
明らかになった過去はあまりにも辛い。
浅はかとはいえ、ささくれだったほんの少しの心の隙間に芽生えた黒い気持ちなだけだったろうに。
当時の世の中が恐ろしい。
とはいえ、本をパリを愛する人たちの話でとても良かった。
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SL 2022.5.21-2022.5.24
ナチス占領下のパリ。アメリカ図書館に集う職員や常連たちの物語。
アメリカ人やイギリス人は敵性外国人、そしてもちろんユダヤ人への弾圧。
アメリカ図書館は困難な状況の中でも開館し続け、立入を禁止されたユダヤ人の登録者のために本を配達する。
本は、言葉は人類にとっていかに大切か。
戦争は命や建物を破壊し、生活をめちゃくちゃにするけれど、オディールのような喪失ももたらす。真に大切な人との断絶。
作者はウクライナにいたことがあるらしい。今のロシアによる侵攻に心を痛めていることでしょう。
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第二次大戦下のパリ。実在するアメリカ図書館と勤務する館長・司書の実話をベースにした物語。
ナチス占領下にあっても、可能な限り開館し続け、戦地の兵士や病院の負傷兵へ本を届け、更には迫害されるユダヤ人宅へも本を届ける活動を行なっていたことに感銘する。それは、職員が「本の力」を信じていたからに他ならない。
しかし、この登場人物たちも戦時の激動に飲み込まれていき…。四十数年の時を経て、主人公オディールの心が救済され、新たな希望を灯してくれる終末に感動の余韻が残った。
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最初の4分の1までは表現が独特で、状況も掴みづらく感じて読みにくかったけれどその後は引きずり込まれました。ナチスに見つからないようにユダヤ人教授の元に本を届けるシーン。戦争のもたらす困窮や憎しみが友人関係を乱す様。一気読みでした。
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面白くてサクサク読めた!
第二次世界大戦時、ナチス占領下のパリにあったアメリカ図書館の話。
読み進めていくと、だんだん不穏になっていくパリの様子が詳細に描かれていて、
戦時中、普通に生きていくのも困難なのに、図書館の職員たちの献身に脱帽する。
個人的には、パリが解放されていく様子、そして日常を取り戻す様ももっと詳しく書いて欲しかった。
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第二次世界大戦間近のパリ。そこにあるアメリカ図書館を舞台にこのストーリーは物語られる。並行して、1984年のアメリカモンタナ州の多感な女子高校生の家族の話も進んで行く。
第一印象の、戦争から、ゲシュタポから本を守る…彼女たちというだけではなく、この本には人と人との愛憎劇も激しくスパイスとして効いている。
信頼もあっという間に裏切りに代わる、それは戦争が原因であったかもしれない。けれど根本は人間の生き方や持って生まれた個性だったり、環境だったり。辛い。
国、人種は違っても本のチカラを信じたいという気持ちは普遍的なものと改めて確認出来た。
『なぜ、本なのでしょう。他者の立場から物事を見せるような不思議なことができるものは、ほかにないからです。図書館は本によってちがった文化どうしをつなぎます。』
感動しました。
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素晴らしい小説の一言。本を愛する人、図書館が好きな人、全ての人に全力でお薦めしたい。
1939年のパリから物語は始まる。本好きで野心的な主人公オディールは念願のアメリカ図書館の司書に採用される。図書館で出会った同僚、仲間との心温まるエピソードや家族との関係を通じてストーリーは進んでいくが、やがてそれはナチスドイツのパリ侵攻によって多くの変化を余儀なくされる。サイドストーリーとして40年以上経ったのちにアメリカに移住したオディールと隣家の少女リリーとの関係も描かれる。
正直なところ3/4くらいまで読み終えた段階では、この小説の真価を私は計り知ることができなかった。オディールはやや感情の起伏が激しくて感情移入しにくく、ストーリーもナチスの侵攻による変化こそ徐々に丁寧に描かれているものの、強弱とスピード感が少なく淡々と進む感じがした。サイドストーリーの意味合いもよく理解しにくかった。
だがそれは残りの1/4になって一変する。すべてはここから描かれる実に内容の濃い話の序章に過ぎなかった。ここで回収される伏線とそれぞれの出来事の深い描写には感嘆するしかない。作者の高い技量が惜しげもなく発揮される様に驚きながら感動のラストを迎えるときにはもう幸福以外の感情は無くなっていた。
巻末の著者の覚書も必読。登場人物の多くが実在していたことにも驚くとともに、とにかく深い言語への愛情がこのすばらしい小説を形成したことがよくわかる。ラストでオディールがリリーに教えたこと、これがこの小説の全てであり著者の心からの願いなのだろう。
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第二次世界大戦中のパリを舞台にした実話に基づくストーリー。タイトルの“あの図書館”とはパリにあるアメリカ図書館のことで、そこで働く人々や常連の読書家達の群像劇でもある。文句をつけるわけではないが、原題はシンプルに“The Paris Library”である。女性だけで図書館を運営しているような印象を受けるこの邦題はいかがなものか。
1939年2月、図書館学校を優秀な成績で卒業したオディールが面接に訪れ、1944年9月に去るまで、ほぼ時系列に沿って進むが、時々1980年代のアメリカモンタナ州のリリーとバトンタッチする。ナチスドイツ占領下では、ユダヤ人にこっそり本を届ける活動が描かれる。そうした行為や隠遁しているユダヤ人を密告する人々もいて胸が塞がる思いだった。
図書館と本への愛に溢れた作品で、数多くのタイトルが登場する。同じく多くの人達が登場するが、描写が繊細なので混乱なく読めた。実在の人物がモデルだとは言うものの、これだけ多数の人を扱う手腕は素晴らしいと思った。
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タイトルや帯の文句からすると、ナチス占領下と言う苦しい時にそれでもなんとか図書館を頑張って運営した事が中心に書かれた本と言うイメージを持つけど、
個人的には勿論それもあるけど、
より心に残ったのは過去にナチス占領下の中図書館を運営しながらも生まれた図書館員同士の友情だと感じた。
戦争と言う大きな圧力の中正しい判断力を持つ事の難しさ。
歪な事がさも正しい事のようにまかり通る。
そんな中で取り返しのつかない過ちを犯して友情を壊してしまった図書館員のオディール。
何もかもを捨ててアメリカに逃げてきたそんな彼女の心を救ったのが歳の離れた隣の家に住む学生の少女との出会い。
少しずつ打ち解け、過去を回想し、友情を育む中でオディールの心も救われていく過程が印象的だった。
オディールが学生の少女と出会う寸前まで何を思っていたのか。
初めて出会った時どんな心境だったのかが最後の方に明らかになるあの話の運びは思わずぐっときた。
いくつになっても人生ではプロローグが始まる事がある。
その展開がとても素敵だと思った。
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パリに存在したアメリカ図書館が舞台。当時、英語の本が読める貴重な場所であったらしい。
戦争がはじまる中で、司書たちは兵士に希望する本を送り届けるという活動を始める。ナチス占領下で監視されたり敵性因子と見なされたりしながらも、誇りをもって本を守り、必要な人に届ける活動をした記録。
実話をもとにした話のよう。(登場人物の名前は実在のものとそうではないものが混在するなど、どこまでがノンフィクションなのか分かりにくい部分はあった。)このような図書館があり、司書たちがいて、命がけで本を届けるという活動が実際にあったということを知れたのは良かった。
極限状態でも(極限状態だからこそ)本が大切な心の拠り所になる、というのは、東日本大震災でも同じような話があったと思う。本の普遍的な良さを示していると思う。
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ナチス占領下のパリのアメリカ図書館。図書館とそこを愛する人々を守るために奔走し傷つき翻弄された人々の戦いの物語。時に天を仰ぎ、時に不安になり、居た堪れない気持ちで読み進んだ。悲惨な戦争が憎悪を生み出す今こそ響く作品だ。
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今、読み終えたばかり。
図書館と、戦争と・・・
まとまらないけれど、
せめて、初読みの衝撃と感動がどれほど大きかったかだけでも
ここに残しておきたい。
一夜明けて、とりあえず、まとめてみました。
→https://blog.goo.ne.jp/mkdiechi/e/ca6d6cfa5b2a864676feaf6233d1c190
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パリのアメリカ図書館に採用されたオディールは、館長のミス・リーダーら仲間と司書として働きはじめる。時代は、第二次世界大戦中でナチスがパリを侵略しつつあった。ユダヤ人であることから利用すらできなくなったり、ドイツの敵国人だということでゲシュタポにマークされたりしていた。そんな時代のオディールと、1983年のアメリカに住む12歳のリリーの日々が描かれていく。リリーの隣人オディールは、なぜ戦争花嫁と言われいるのか。リリーの母親の死と父親の再婚という変化の中、リリーはフランス語を教えてくれるオディールに支えられ、またオディールがアメリカへ来た訳を知る。
実際にパリのアメリカ図書館での事実を元にしたフィクション。戦争状態が日常となった日々の中での正義とは、自分は正しいと思っていた事は誰にとっても正しいとは限らない。やるせない思いだ。
リリーとの関わりなどは、オディールの体験と別にしてほしかった。