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Amazonの紹介より
日本SF大賞、星雲賞受賞作家が描く意欲作!
AIに制御された監視カメラ網に「守られた」街。事件は何故映されなかったのか。
船田信和は「安全・清潔都市事業モデル地区」に指定され活気のある姫田市で自分の能力を発揮し、人生をやり直そうとしていたが、アプリに紹介された廃屋の解体現場で、バラバラにされた人体を発見してしまう。警察の聴取を終え、金のかからない空き家に住みつくがーー。
近未来を舞台に、人々の成功と生きることへの執着をAI監視社会を通して描く意欲作登場!
防犯カメラがあちこち監視されることで、安心安全と思われたある街。その実態を知っていくと、人間のエゴを垣間見たように感じました。
いくら最先端のAI技術を駆使したとしても、それを操るのは人間です。その人間が、完璧にやらないと、AI技術も活かせられないなと感じました。
この作品は、2人の視点で、進行していきます。一人は警察側、もう一人はフリーターの青年の視点です。
警察側は、とあるバラバラ殺人事件を捜査していきます。比較的こちらは、順を追って捜査していくので、そんなに驚きの事実を発見したといったことはあまりなかった印象でした。
一方で、フリーターの視点は、衝撃の連続でした。仕事紹介アプリで働くことになった職場。そこで出くわすバラバラ死体。その後も、妙な集団に誘われて、殺人を実行したりと待ち受ける様々な出来事が、ホラーの連続でした。
フリーターが気の毒すぎる一方で、彼ら達のアンダーグラウンドで生活していく中での野心や異常さが浮き彫りになっていて、人間の恐ろしさを垣間見ました。
「安全」の裏で働く人達の追い詰められた精神状態が、逃れられない恐怖心を駆り立てていて、グイグイ引き込まれました。
警察とフリーターの視点が交互に進行していくのですが、どちらも「集団」がゆえの杜撰さを知るのですが、それがこの作品の全てを物語っているようで、これからの未来に不安を感じました。
AIだから安心、ちょっとぐらい大丈夫ではなく、「安心」を持続するためには、何が必要か。そういった意味では考えなければならないなと思いました。
網の目をくぐるかのようにグレーゾーンを渡っている謎の集団ですが、発想や行動が、ある意味「凄い」の連続でした。
そして、最後の展開が、まぁ衝撃的でした。プロローグの話が、本編と全然関係ないなと思っていたのですが、ようやく発揮されます。ある復讐で、そんなにまで発展する?と思いましたし、発想がぶっ飛んでいるなと思いましたが、これからも続く!?といった余韻に恐怖がじわりじわりときました。
なんとなく事件の真相にモヤモヤ感はありましたが、近未来のAIによるセキュリティの課題が、現実でもあり得そうだなと思いました。