紙の本
終末がはじまり
2022/08/10 22:07
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
「絶滅」という不穏な概念を冒頭に持ってきて、そこから始める哲学書。巻頭ではそのようにぶち上げるが、その後は題材はさまざまでおもしろいが、案外オーソドックスな展開であったように思える。でも官僚主義をめぐる考察が村上春樹に結びつけるあたり出色。
著者の一貫しているであろう思考をたどるのは一読では到底無理そう。自分の印象もまとまらない。竜頭蛇尾、とは思うけれど。
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ここ数年で読んだ本の中で一番面白かったかもしれません。
各ページの参考本、参考資料も順次読みたいと思います。
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人類は絶滅する。この文明が1万年続くとは思えないし、
そもそも太陽だってあと50億年もすれば燃えつきてしまう
だろう。人類は絶滅するのだ。そこを基点に逆に現在を考え
その絶滅を引き受けることで、余裕を持って暮らせるのでは
ないだろうか、そういう哲学的エクササイズを図る本。
考え方は肯けるし、大変面白いのであるが、結論として
村上春樹を持ち出されても、彼の作品を読まない人間には
全く響かないのである。決して、そのことによって内容が
わからなくなるということではないのだが、やはり醒めて
しまうのだな。というかやっぱり一般常識として読まないと
ダメ?(苦笑)。
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手引きのようなもの――視野を途方もなく拡張する
1 絶滅へようこそ
2 「まだ始まっていない」と「もう終わっている」の隙間を生きてみる
3 機械のやさしさ
4 食べられたい欲望
5 神はまだ必要なのだろうか
6 人間はツルツルになっていく
7 苦しめば報われるのか?
8 大人しい人間と裁きたい人間
9 暴力と寛容
10 風景なきiPhoneは空虚で、iPhoneなき風景は盲目である
11 自己家畜化とどう向き合うか
12 歴史の終わりとは何だったのか?(過去からの終わり1)
13 村上春樹とピンボール・マシーン(過去からの終わり2)
終わりが始まるまでに――人間の行方
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少子高齢化、社会保障費、資源の枯渇問題、温暖化などの環境問題、、
待ったなしに次々と襲いかかる問題から来る不安な未来に対して
「まあ、50億年も経てば太陽の寿命は来るし、数億年経てば地表上の動物たちもほとんど生き残れないし、私たち人類が見据えられる未来なんて十数年〜精々100年先でしょ。」と気持ちをラクにさせてくれる本。
サスティナビリティという持続可能性に疑問を抱き、他方でそのサスティナビリティを達成する使命感を背負った現代人に対してその緊張感を緩めようという著者の狙い。
平和主義もヴィーガンの語る生命主義も肩肘張り過ぎだと。仏教的に生命への執着心を解いて世界を見つめ直してみようというユーモアに富んだ絶滅への論調。
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現代の思想がまるっと学べる本だと思った。
最も印象的だったのは、「出来損ない」「ポンコツ」など本来機械を形容する言葉を人間に使うようになったとき、人間は道具の側になるということ。
これは日常で本当に痛感してきた。私たちは生産性や効率でしか人を評価できなくなってる気がしていた。
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哲学について知るのは好きだけども、絶望という点について考えたことはなかった。絶望とは暗いイメージがあるが、わたしたちが感じていなかっただけですでに絶望派始まっていて、それは世界の流れの一部でしかない。ニーチェ、マックス・ウェーバー、デリダ、コジェーヴなど経済哲学者を知るきっかけにもなった。
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非暴力の社会になっているはずなのに、ますます暴力的になってしまう世の中。スマートでどんどん効率的になっているのに、人々は幸福になるどころか、システムの道具となってゆく。悲観的になりすぎないように現状に対して懐疑的であることは大切だと思った。
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ひっさびさに圧倒的に面白い一冊に出会った感覚。
衝撃的な面白さ。
ジワジワ、何十年も、ちょっとずつ熱狂的なファンが増えていくんだろうなという感じの本。
コロナ上位互換、みたいなのが来る度に、戦争危機が訪れる度に、人類絶滅が近づく度に、読まれる本なんだろうなと。
圧倒的情報量なのに、どこか風船のような軽さがある文章。暗い内容なはずなのに、どこか神秘的なそこはかとなく湧き上がるエネルギーが見え隠れする一冊。
読んでよかった。出会えてよかった。心からそう思える一冊。
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現実にある人類の諸課題に対し、現実の中からまともに向き合ってしまうのではなく、様々な視点拡張の試みで捉え方・考え方を変えることで苦しみの緩和や別の解法への糸口を探るといった筋の話だった。
テーマは12あり、下記のようなもの。
・太陽の終わりに伴う生命の流れえぬ絶滅
・機械、道具による人工的な環境の中での安寧な生活
・暴力を減らし、自己を家畜化してきた試みの成功
太陽の終わりから考えるという最初の視点は良かったが、それ以外のテーマは2022年時点の社会課題の描写に終始しており、現状理解には役立つが、解決への考えなどはなかった。
また、最後の章とそれに続く結びの文章が村上春樹の賞賛で締められていた。ここでも独自の展望などがあると期待していたため少し残念。
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50 57 61ポスト太陽的思考
64 身体なしの思考
74 ケアする機械
114 アンダース
183 絶対的寛容
219
224 自然の幻想☆
242
257 自己家畜化
263
266
270 女性イメージが好まれる
288 コジェーヴ
300 アウシュヴィッツ
318 345 村上春樹
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絶滅が救いであるという視点は興味深かったし、共感するのだが、それがほとんど哲学的な論証を与えられていない単なる主観でしかなかったのは残念だった。また、論が粗雑で危うい点も多々見られた。例えば、自己家畜化という生物学的な進化の方向を無批判に文明の向かうべき道かのように描いてしまっているところなど。