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読み終わった後もバッハの無伴奏チェロ組曲が静かに頭の中を流れていた。
クラシックに詳しくない自分でも知っているこの静かで切なく優しく、それでいて凛とした曲。
幼い時のトラウマと闇を抱えた青年の苦しさが、その原因となったチェロとの邂逅を通して解き放たれていく…なんて単純な話ではなく。
主人公は、音楽教室に潜入するスパイ。与えられた使命は著作権違反の証拠をつかむこと。
なんてこった。「音楽」をテーマにした小説たちの、美しい感動はどこにいった!
他人と親しく接することを避けて生きてきた主人公が、音楽教室の講師や仲間たちと少しずつ心を通わせていく過程。二年という時間の中で積み重なる信頼と安寧。
読みながら何度「ここで終わって!」「もう止めちゃって!」と思ったことか。
暗い海の底で、冷たい闇の中でひっそりと生きているラブカに光は射すのか。
上がった心拍数を無伴奏チェロ組曲を聴きながら静めていく。美しきスパイ小説@音楽教室、堪能。
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浅葉先生と橘が2人で飲むシーンが印象的でした。音楽の素晴らしさや音の深さは、コンクールの成績だけが全てではない。計り知れない。音楽教室の先生だって立派な音楽家。そう本心で思っているけど、20代も終わりになり、ラストチャンスが迫って時に焦ってしまう浅葉先生の気持ちが痛いほどよく分かりました。ずっと飄々としてるかっこいいイメージの浅葉先生が、この場面で一気に人間くささがでてきてて、めっちゃ好きです。
音楽を表現する部分や、橋を渡るところなどの景色を描写する文章がとても美しいです。
今年29歳になる自分がちょうど今の時期に読めて良かった小説でした!
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仕事、習い事、プライベート等々いろいろと考えさせられる話しでした。
登場人物がとても好感が持てた。
読んで良かった。
また、時間が経てば再読したい本です。
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嫌な設定。読もうと思えないような。
表紙の雰囲気に惹かれたのかな・・・
そして、それがぴったりでした。
そんなに社交的じゃない若い男の人が主人公の物語に
惹き込まれやすい気がする。砥上さんの本と同じ空気感。
根本の設定のところは、やっぱり嫌な感じで、
ずっと辛いんだけど、先が気になって惹き込まれました。
読後、やっぱり、疲労がね・・・。
でも、良かった。星はいくつにしよう・・・。
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著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむため、音楽教室にスパイとして潜入させられた橘樹。子供の頃チェロを弾いていたので、チェロの個人レッスンに潜る。
あらすじはこんな感じですが、題名やスパイといった語感からは程遠い、穏やかな一冊でした。途中まで、あまり響かずに読むのをやめようかと思うこともありましたが、後半は引き込まれて一気読みでした。
樹のチェロの講師の浅葉がとてもいい味を出しています。浅葉先生と樹のレッスン中の会話が何より面白かったです。
大きなチェーン店の音楽教室に、浅葉先生のように素敵で腕の良い人が本当にいるんだろうか?いるなら行って気楽にチェロを始めてみたいなとちょっと思いました。
心に残った文です
☆講師と生徒の間には信頼があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して代替のきくものではない。
(子供の頃経験したことで人間不信になっている樹の心の声)
☆透明な壁の向こうと自分との間には、著しい段差がある。世界のありのままの姿を、オートマティックに捻じ曲げてしまう分厚い壁。みずからの不信が作り上げたその巨大な防壁が、目に映るもの全てを脅威に変換してしまう。この脅威は、幻だ。手を伸ばすべき現実ははいつも、恐れの向こう側にある。
樹の、徐々に人との関わりを持つ楽しさを知り変化していく様子、変化させていった音楽教室で出会った仲間たちの様子に温かさと羨ましさを感じました。面白かったです。
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良かった。
深い深い海は暗くて静かで、寂しい海をゆらゆらと漂うような気持ち。
そんな感じの話だった。
潜入調査。
全著連のスパイ。
深海千メートルを生きる、鋭い歯を持つ周到なラブカ。
孤独を泳ぐ、醜いスパイ。
発表会は楽しかった。
他人との間に透明な壁を作っている理由。
中学生の時に拐われたことがある。
トラウマ。
ボックスカーに連れ込まれ背負っていたチェロが壊れて、結果的に無事で助かったが、家では家族が心配しておじいちゃんは怒り出しチェロを燃やした。
スパイ友の会。答え合わせみたいな会。
2年間は長かった。
自分達は悪いことをしたのだろうか?
2年間は重い。
音楽教室には信頼と絆がある。
あると思う。
何かを教える人と教えてもらう人。
毎週会話して目標に向かって学び合うのだから。
コンサートで出会ったかすみさん。みんなの様子が聞けて、少し安心した。
「戦慄きのラブカ」聞いてみたい。調べたが架空の曲なのか?見つからなかった。
自分の話をしても大丈夫と思うことができる。それが信頼。
その無数の信頼の重なりの上に、人間関係が構築される。
ヴィヴァーチェでの演奏会の時には、橘くんを応援したくなった。
行けて良かった。
ラストの再入会での会話、グッときた。
いい話だった。
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楽器に普段馴染みがない生活ですが、読みながらチェロの演奏を聴きたいと思いました。
また、全著連のことは以前新聞で読んだことがありましたが、楽曲の使用料については今どうなっているのか調べたいと思いました。
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160ページぐらいまでは、あんまりハマれなかったけど、それ以降の後半が面白かった。
音楽好きな人や楽器をやっていた人はもっと楽しめたのかもしれない。
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過去のトラウマを克服できずに深海の夢を見続ける孤独な主人公が、会社のスパイとなり潜入した音楽教室で色んな人と出会ったことによって人生を取り戻す話。
主人公の揺れる心情と登場人物それぞれが丁寧に描かれてて面白かった。
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「スパイ×音楽小説」という面白い組み合わせの小説だなと思ったけど読みやすくて面白かった。
うまく人間関係の複雑さを取り込まれていて綺麗な感じに進んでいくなと感じた。
内容ももちろんだけど参考文献がかなり多かったのが印象的。
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全日本音楽著作権連盟に務める橘樹は5歳から13歳迄チェロを習っていた事で上司からミカサ音楽教室二子玉川店へ著作権侵害の潜入調査を命じられる。少年期のある出来事から悪夢に悩まされ社会ともチェロとも距離を置く橘樹が戸惑いながらも再びチェロを弾く。音楽教室で出会う浅葉先生や仲間達との交流が公務員と偽る虚像の自分を苛む。
実際のJASRAC訴訟、ヤマハ音楽教室への潜入をモデルに係争中に執筆された。
物語の根底に穏やかな音楽が流れ心に深海を宿し、深海魚ラブカの如く潜む橘樹の揺れる心情に共鳴する。
★★★★★ 5.0
【レビューが帯に採用】
第5刷出来にて、帯裏面にレビューが採用されました。
https://twitter.com/shueisha_bungei/status/1582269431891517440?t=9W7cFQdvrb-XoKW3EzFPHw&s=19
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少年時代のトラウマから世の中に不審を抱き続けて、大人になっても不眠という症状に悩まされている。
でもトラウマのきっかけのチェロに再開してそんな彼の日常が一変する。
自分もほんの少しだけバイオリンに触れていた経験を思い出しながら読んだ。弦楽器は身体と密着していて音を内側から感じるようなイメージだった。だから心が弱っている人を優しく、強く励ましてくれそう。
また弾けたらいいな。
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音楽と著作権。芸術とその対価。難しい話ではあるけど、本来とても身近なものでもある。
唯一無二の個性なんてなかなかあるものでもないし、全ての創作物は、過去の模倣から始まると思っている。オマージュ、パロディ、パクリなどなど、私はその辺の線引きは寡聞にして分からないけれど、全て著作物は、生み出したものものだとは思う。音楽教室と著作権。確かに少し前に話題になった話だと思う。
本を読んで、楽器っていいな。と思った。主人公がやっているのはチェロ。深い音が出る大きい楽器。バイオリン族の3個目の楽器。
クラシックだけが音楽ではないし、映画音楽なんかも自分で引けたら憧れる。最近の映画は金管の方が主体な気もしますが…
表題のラブカ。深海魚です。最近何かと話題の深海魚。作中のタイトルだけ出てくる映画も、その曲も、見てみたいなあ。勝手にゴジラの曲みたいなイメージで想像してますが。
印象としては華氏451みたいかな。と思って読み進めて、その通り終わった感じでした。
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幼い頃のトラウマがある主人公の橘樹が音楽教室にスパイとして潜入する物語。
第一章まではゆっくり物語が進んでいき、この先どうなっていくのだろうと思って読んでいたら第二章から急激に展開が動き出していき、そこからは一気読みでした。
とにかく音楽教室の先生・仲間がとても優しく、温かかったからこそ主人公の葛藤が読んでいて苦しかったです。
樹が少しずつ変わっていく様子に胸が熱くなりました。
何か一つでも真剣に情熱を注げられるモノがあるのは幸せだし、そこに大切な人間関係が築けるのは一生の宝物になると思います。
クラシックに詳しくない人でも楽しめる作品です。
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去年からずっと読みたかったのだが、図書館の予約もなかなか減らずついに購入。結果的に買ってでも読んでよかった。
音楽を間に挟んで築かれていく関係性はすごく心地よくて、戦慄きのラブカも難破も今のところイメージだけだが形で聴こえてくるようだった。関係性を象徴する曲なのだろう。その関係性が変わらないでほしいと思いながらも、話は進んでいくので、続きが気になりながらも一旦読むのを止めてしまったほどだ。自分が勝手にイメージで作ってしまった相手との壁。その先に手をのばすのは容易なことではないが、この先もこの人間関係が絶妙なバランスで続いていくといいなと思える作品だった。