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スパイ物の、ミステリーというふれこみで読んだら想像とはかなり違っていました。
人と人との信頼関係を描いた作品だと思いました。
全日本音楽著作連盟(全著連)に勤務する橘樹は、中学一年時まで8年間チェロを習っていたことがあります。
その経験を買われて上司の塩坪にミカサ音楽教室ニ子玉川店に生徒として二年間、潜入して、ミカサでの著作権のある楽曲についてどう使用されているか、調べてくるように言われ、生徒となって潜入します。
ミカサでは、講師の浅葉桜太郎が好人物で、橘はチェロにもう一度向き合いたくなります。
浅葉の他の教室の生徒たちとも交流し、持病の不眠症が少しづつ改善されてミカサを去るのが淋しくなってくる橘。
けれど、橘の潜入期間である二年間が過ぎようとするとき皆の前で、橘の秘密が暴露される破目になってしまい絶対絶命のピンチに陥りますが…。
「音楽は人を救う」
「講師と生徒のあいだには、信頼があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して代替のきくものではない」
「無数の信頼の重なりの上に、人間関係は構築される」
などの言葉が印象的でした。
そして、後半の物語は橘のとある決心により、ハッピーエンドです。
「ラブカは静かに弓を持つ」というのは映画のタイトルで映画音楽にチェロの伴奏が使われているという設定です。
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著作権侵害を告発するためのスパイとして音楽教室に潜入した橘。トラウマを抱えて不眠に陥り、ストイックに周囲の人間関係も絶っている様子が痛々しい。
そんな彼が教室で、新たな人との交流で自分の居場所と思える関係ができていくのが気持ちいい。
でも、当然そこに入り込んだ理由があるわけで…ってのがなんとも苦しく切なくなる。
チェロの深い音とともに読みたい一冊です。
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あまりハマりませんでした。スパイというにはスケールが小さくて。ラブカとか?なものを複雑に出してくるのが遠回りの表現で分かりづらかった。
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最初に余談ですが、私はこの本を図書館で借りたんですね。本屋大賞ノミネートが決まってから図書館で予約したんですが田舎なのか、読書家が少ないのか、本屋大賞というものが知れ渡ってないのか…大賞が発表される前に読むことができました。「爆弾」もそんな感じでした。田舎で良かったー!
著作権を侵害してる証拠をつかむ為、上司に命ぜられ音楽教室にチェロを習いに行き、潜入捜査をする主人公の話。
チェロ良いですよね。自分も学生時代にチェロを習っていたのでチェロの良さが文章の表現力から伝わってきました。左手の弦を押さえる事よりも右手の弓を持つ手の方が良い音を出す為には大事である事。そうなんですよね〜体が固いと弓を動かすのも滑らかにいきませんし。良い楽器なんだけど弦楽器って本当難しい。
浅羽先生の人柄の良さが読んでるこちらにも伝わってきて、潜入がバレた時の浅羽先生の怒りが読んでて痛いくらい切なかなった。
スパイ仲間の三船さんが、連絡先をメールするって言って送らなかったのがふふってなりました。こういう強かな女…好きだぜ。
ミステリーとか刑事ものの小説を最近読んでいたせいか、第1章の最後で浅羽先生に「スパイなんだろ?」って言われるんじゃないかヒヤヒヤしてしまいました。
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本屋大賞ノミネートになったので図書館で予約してみた1冊。
音楽を題材にした作品は初めてで、自分に合うかなーと思って読み始めたけど、予想以上!すごく引き込まれた。面白かったー。
橘くんが表現した浅葉先生のチェロの音色が気になって、読む手を止めて思わずYouTubeで検索してしまった。
ストーリーにしても、周囲と壁を作って自分自身の心の闇に苦しむ橘くんが浅葉先生や周りの生徒さんと繋がりを持つ中で変化していく姿にどんどん引き込まれて。
最後の100ページは一気読み!
"講師と生徒のあいだには、信頼があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して代替のきくものではない"
抗えなかったとはいえ自分の居場所を作ってくれた大切な人を裏切って傷つけてしまった後悔や取り返しのつかないやり切れなさを感じているから心に響いて仕方なかった。
エピローグは何だか久しぶりの橘くんと浅葉先生のやりとりが嬉しくてニヤニヤしてしまったー。
浅葉先生の全部が好きすぎて、好きすぎて、恋してしまった!
本当にいい作品だったなー。
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信頼の物語であると思った。生徒と講師というあるようで無い絆を描きつつ、スパイをしているがために最後はその信頼を裏切らなくてはならない。特に後半は胸がきりきりする。上手く収められないのかと何度感じたことか。そして最終的に樹が下した結論とは。ラスト付近は何度か読み返し涙した。現実としてこんなに素敵な人物たちばかりではないかもしれない。どうやって相手よりうえにあがるか、という事ばかり考えてしまう世の中だ。だから小説の中くらい夢を見てもいいんじゃないか、そんなことを思いながら読み終えた。ストーリー展開はシンプルながら、その流れを外すことなく書ききった安壇さんのファンになった。
彼女の書く文章は(特に会話文)非常に胸に残る。そういう作家の方は中々に出会えるものではないので大切にしていきたい。
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私は幼稚園に入る前くらいからピアノをはじめました。
中学生まで続けましたが、特にうまいというほどにはなれませんでした。
これはひとえに練習不足。
ピアノに夢中になることはできませんでした。
そしてどもっと上手な人はたくさんいるしと昔から悟っていたところがあります。
中学生時代は吹奏楽部でクラリネットを3年間吹きました。
練習は多忙なわりに結果は出ず、人間関係もどろどろで部活に良い思い出はありません。
自分はやっぱり音楽は向いてないなと感じ、高校生以降音楽に触れることはぱたりとなくなりました。
本当は音楽って上手い人だけのものではなくて、誰でも自由に楽しんで良いものなのだと思い出させられました。
これほど情熱を注げる趣味があり、趣味を共有できる仲間に出会える人生って幸せだなと思います。
樹はあまりにもチェロを愛しすぎましたね。
最後には自分で作っていた不信の壁を自らで越えていく姿がぐっときました。
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誰もが変化する。主人公のようにどんなに恐ろしい過去にきつく縛られていても、誰かと触れ合い他愛もない会話を交し、時には腹の底までさらけだして、影響されて変わっていく。最初は変化をすることが怖いかもしれない。でも自分が好きだと感じる相手を信じて相手に身を任せて変化を受け入れることで手に入るものは大きいはず。ぼーっとしてても、変化してないつもりでも、人は変わっていく。それなら、自分の意思で変わっていきたいなと思う。
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このサイトで紹介されていた。
全日本音楽著作権連盟が、音楽教室でのレッスンで使用する音楽にも著作権使用料を徴収すると発表したところ、大手の音楽教室から訴えられた。そこで連盟に勤務する、チェロの演奏経験のある主人公が、著作権違反の実態を把握するために、言わばスパイとして実際に大手の音楽教室に通うことになる。そのうちに音楽の素晴らしさを思い出し、講師を始めとする気の合う仲間とも出会い、自分を取り戻すという話。
そう言えば日本音楽著作権協会(JASRAC)とヤマハ音楽教室との間で、そんな話があったことを思い出した。その時にはニュースになったけど、その後どうなったか知らなかったので調べてみたら、現在最高裁まで争っていて、JASRAC職員がヤマハ音楽教室に2年間通って潜入捜査をしたことも事実だった。
という時事ネタを知れたことはよかったが、小説としてはこれといった盛り上がりもなく、心動かされるところはなかった。ただ、習い事という場で出会った仲間はいいなと思った。趣味という共通点だけで繋がれて、しがらみがないので、気の置けない仲間になれそう。
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スパイ小説と聞いていたため、ミステリーや殺人でも起こるのかと思っていたが、音楽教室の中で得た人間関係の中で、主人公が前向きな気持ちに変わっていく様を描いた、人間味のある作品だった。読むとヤマハ?の音楽教室に通いたくなるかもしれない。
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❇︎
主人公(橘樹)が上司から対立企業への
潜入操作を命じられ、身分を隠して相手の
懐に入り込み内情を探るスパイ物語。
スパイ・潜入捜査と言えば、相応の訓練を
積んだプロがする仕事という思い込みが
そもそもあったので、企業の一末端社員が
上司の業務指示でスパイ行為を行うという
設定にちょっと驚きました。
音楽の権利関係や著作権の利用料について、
それが著作権者にどう関わるか深く考えたり、
知ろうとしたことがなかったので小説を読んだ
勉強になりました。
主人公が子どもの頃に関わっていた楽器の
チェロを通して、忌避し続けていた子ども
時代のトラウマと向き合わざる得なくなり、
人間関係を避けて孤独を受け入れていた生活に
音楽という彩が蘇ったところが素敵です。
どんなことも受けながし、やり過ごすことに
疑問を抱かなくなっていた主人公が、
『死ぬ時に後悔しない』ために行動する姿、
心の変化に温かい気持ちになれました。
自分と人の間にある壁、自分の恐怖心が
自己防衛から勝手に作り上げたかも知れない壁、
それを打ち破ることはとても勇気が必要。
だけど、やり直せる可能性を見せてくれた
勇気をくれる物語でした。
心に根付いた深く暗い恐怖心をラブカ(深海魚)
とチェロが奏でる音色に喩えたところが
とても絵画的で詩的でした。
ラブカの妊娠期間は地球一長い(⁈)3年半、
特徴的で恐ろしく見える外見とは違って
とても慎重で臆病なのかなと想像して、
殻にこもって膝を抱え続けてきた主人公の
心情と重なって見えました。
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スパイ物と聞いていたから、全く違うストーリーを考えていた。しかし、最初の数ページでそれは砕けた。
仲良しの人たち。たぶんよく描かれる上司。その他、人物像は、スーパーじゃないから、受け入れやすく。
橘樹の心の成長の物語として読めるのだが、そんなに魅力的な人物ではない。
浅葉先生の話がもう少し前面に出て来たら、もう少し魅力的だったかもしれない。
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想像以上の面白さでした。
主人公が産業スパイとして音楽教室に通うことになるのですが、音楽を通して主人公の心の氷山が溶けていく様にグッとくるものがありました。
そうした音楽教室での人々の暖かみが鮮明に描かれているので、主人公だけでなく読者である私自身も、産業スパイであることがバレないで欲しいと願うようになるくらい感情移入しやすく、作品にのめり込みやすかったように思います。
キャラクター、ストーリー共に魅力的な作品で、本屋大賞候補に入って欲しいなぁと思う素晴らしい作品でした。
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やっぱり人は人。人とのコミュニケーションには自分を開示しながら時間をかけて信頼を積み重ねることが大事。時間がトラウマを克服して、大人になる。
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チェロの音は人間の声に近くて親しみやすい。何より心にドスンと響く重さが好きだ。
著作権に関して音楽教室と揉めていることはなんとなく知っていた。私も楽器演奏するので、著作権協会の論理には理解ができない部分もある。
一方で作曲家の生活を守るという趣旨も理解はできるが、あまりに自由度がなさすぎる解釈だ。
そこに板挟みになる主人公。
でも音楽を純粋に楽しむ気持ちを最後に読めたことで心は洗われた。