電子書籍
スパイ?
2023/03/17 22:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
スパイ、かなぁ?音楽教室へ潜入するという、カタチは、スパイ物なんですけど……読み進めると、コレ、スパイ小説ではありませんねえー。本屋大賞ノミネート作品だけあって、あと味は、悪くないです、ホッ。
投稿元:
レビューを見る
過去にチェロを習っていた樹は、就職先の全著連が訴えようとしている大手音楽メーカー・ミカサ株式会社に潜入調査を上司に命じられる。
著作権使用料を支払うか否かの裁判の証拠を掴む為である。
樹は過去チェロが原因で家族の軋轢を生んだ事があり鬼門としていたが、潜入調査の為に再びチェロを習い始める…
初めは潜入調査の為だったチェロが、樹にとって少しずつ楽しみを思い出させる。
ミカサのメンバーも良い人ばかりで、スパイである後ろめたさと、純粋にチェロの楽しさとの板挟みがジリジリしていました。
過去に囚われていた樹が、再びチェロと向き合い、そして前を向いて歩き出した時はホッとしました。
流れるような文面がとても心地よい一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
●感想
自分自身が主人公に同化してしまい、後ろめたい気持ちを感じたりもしながら引き込まれて一気に読み終わった。心理描写や人間関係のやり取りに現実感が感じられて楽しめた
●なぜ読んだか
2023年本屋大賞2位であることが大きな理由だが、「JASRAC vs ヤマハ音楽教室」がイメージされる、現実感ある舞台で繰り広げられる展開を楽しみたく、読みたくなった
#ラブカは静かに弓を持つ
#安壇美緒
22/5/2出版
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
https://amzn.to/40W8JFO
投稿元:
レビューを見る
Amazonの紹介より
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……。
聞いたことのある内容だなと思っていたら、やはり実際にあった出来事をモチーフにしていました。
2017年から2019年まで、職員が「主婦」として、バイオリンの上級コースを受講し、発表会にも参加していたという。当時は大炎上して、話題を呼んでいました。そして、2021年に判決が下され、原告側の主張が棄却され、その後控訴して、今も続いています。
この作品では、主婦ではなく男性公務員、バイオリンではなくチェロに設定されています。
ちなみにラブカとは水深1000メートル近くの深海に棲むサメの仲間で、間接的にスパイを表現しています。
実際にあった「著作権」をめぐる、音楽教室の潜入調査。
読者としては、背景を知っているからこそ、生徒に音楽を教える先生とスパイとして「仕事」をする生徒のやり取りには、心苦しいものがありました。
先生側としては、音楽や楽器の魅力を教えるために一生懸命頑張っている姿が魅力的で、良い先生だなと感じさせてくれます。先生を慕う他の生徒も、純粋にチェロだけでなく音楽を愛し、飲み会を開くほどの仲の良さが伺えます。
その反面、生徒側では、スパイとして潜入しながらも、その葛藤が丁寧に描かれていました。上司からの命令だからやらなければならないミッション。毎回レッスンごとに録音しなければならない一方で、先生や仲間は優しく接してくれるので、段々と続けていくうちに良心の呵責に苛まれる描写が痛々しかったです。
他にも、登場人物たちの様々な悩みが描かれています。主人公はこの他にも昔の苦い経験から不眠症に悩まされていますし、先生は先生で、音楽教室の講師としての今の立ち位置に悩んでいます。
その描写が、個人的にも共感する部分もあって、いつの間にか世界観に引き込まれていました。
お互い段々と打ち解けていって、良い信頼関係だと思ったのに・・・それが崩壊されていく描写はまぁ心が痛かったです。話としては、ちょっと捻った展開になっているのですが、いずれにせよ、先生だけでなく周囲との関係にもヒビが入っていきます。
自分だったら、人間不信ですかね。
そしてこれで終了ではなく、何らかの形で再び会うことになります。
2年間の信頼関係があったからこその展開にじわりじわりと
くるものがありました。
最初は冷たい空気感があったのですが、段々と「人」の温かみが加わって、最終的に良い読後感を味わいました。
投稿元:
レビューを見る
音楽の著作権料について町の音楽教室との裁判があり、著作連盟側からはスパイを派遣し音楽教室の著作権侵害を証明していく。そのスパイとして選ばれたのが主人公橘樹。スパイ活動をしていたが音楽教室内での人間関係が嘘ではあるが、橘樹にとってはとても大事な人間関係になり、最後は証拠の隠滅もおこなった。スパイでチェロを習ったが最後は著作連盟を辞めてまで再度チェロを習いにいった。そこでの師匠との出会い、友達との出会いはスパイ活動の一部ではなく、本当の心が通った関係であった。
スパイは普通の人間にはなかなか難しく自分には出来ないなぁと、感じました。人間関係について考えさせられるいい話でした。
投稿元:
レビューを見る
著作権管理会社に務める主人公が、著作権法の演奏権侵害の証拠を掴むため、生徒のフリをして音楽教室に潜入。
企業スパイもの×音楽というミステリアスな設定に惹かれて読み始めましたが、面白くて一気読みでした!
音楽教室での演奏にも著作権料が発生するのかという、少し前に物議を醸した件がモデルになっています。
主人公は昔チェロを習っていて、その時のトラウマを引きずっているのですが、レッスンを受けるうちに過去の恐怖心が解けていって、チェロや音楽の魅力を思い出し、レッスン仲間とも交流するように。
深い海の底から浮上していくにつれ、良心の呵責に苛まれていき、主人公がある行動に出るのですが、予想外の展開に。後半のスピード感が良かったです!
何よりチェロの先生がとても魅力的で、プロアマ問わず音楽を奏でることの素晴らしさを存分に伝えてくれました。
特にアマチュアの演奏って、音楽やらない人から見たら「たかが趣味」に見られることが多いですが、アマならではの青臭い感じとか周りが引くくらいのめり込んでしまう魅力を違和感なく書いてくれていたのが、音楽好きとしては嬉しかったです。
ふとしたところの描写も綺麗で、深海にほんのり光が差すような感じがしました。
主人公が美形設定ぽいのですが、その描写がちょっと説明不足だったかな……。それよりも、極悪上司の嫌味な感じの描写の方が際立っていたような。
チェロの先生がコンクールを受けると決めた動機も、もう少し説得力が欲しかったです。
全体的に、細かい描写がもう少し欲しかったなあという部分がある一方で過剰だなと感じる描写もあり、ところどころ引っかかる部分もありますが、とても楽しめる1冊でした。
投稿元:
レビューを見る
読み終わった後もバッハの無伴奏チェロ組曲が静かに頭の中を流れていた。
クラシックに詳しくない自分でも知っているこの静かで切なく優しく、それでいて凛とした曲。
幼い時のトラウマと闇を抱えた青年の苦しさが、その原因となったチェロとの邂逅を通して解き放たれていく…なんて単純な話ではなく。
主人公は、音楽教室に潜入するスパイ。与えられた使命は著作権違反の証拠をつかむこと。
なんてこった。「音楽」をテーマにした小説たちの、美しい感動はどこにいった!
他人と親しく接することを避けて生きてきた主人公が、音楽教室の講師や仲間たちと少しずつ心を通わせていく過程。二年という時間の中で積み重なる信頼と安寧。
読みながら何度「ここで終わって!」「もう止めちゃって!」と思ったことか。
暗い海の底で、冷たい闇の中でひっそりと生きているラブカに光は射すのか。
上がった心拍数を無伴奏チェロ組曲を聴きながら静めていく。美しきスパイ小説@音楽教室、堪能。
投稿元:
レビューを見る
浅葉先生と橘が2人で飲むシーンが印象的でした。音楽の素晴らしさや音の深さは、コンクールの成績だけが全てではない。計り知れない。音楽教室の先生だって立派な音楽家。そう本心で思っているけど、20代も終わりになり、ラストチャンスが迫って時に焦ってしまう浅葉先生の気持ちが痛いほどよく分かりました。ずっと飄々としてるかっこいいイメージの浅葉先生が、この場面で一気に人間くささがでてきてて、めっちゃ好きです。
音楽を表現する部分や、橋を渡るところなどの景色を描写する文章がとても美しいです。
今年29歳になる自分がちょうど今の時期に読めて良かった小説でした!
投稿元:
レビューを見る
仕事、習い事、プライベート等々いろいろと考えさせられる話しでした。
登場人物がとても好感が持てた。
読んで良かった。
また、時間が経てば再読したい本です。
投稿元:
レビューを見る
嫌な設定。読もうと思えないような。
表紙の雰囲気に惹かれたのかな・・・
そして、それがぴったりでした。
そんなに社交的じゃない若い男の人が主人公の物語に
惹き込まれやすい気がする。砥上さんの本と同じ空気感。
根本の設定のところは、やっぱり嫌な感じで、
ずっと辛いんだけど、先が気になって惹き込まれました。
読後、やっぱり、疲労がね・・・。
でも、良かった。星はいくつにしよう・・・。
投稿元:
レビューを見る
著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむため、音楽教室にスパイとして潜入させられた橘樹。子供の頃チェロを弾いていたので、チェロの個人レッスンに潜る。
あらすじはこんな感じですが、題名やスパイといった語感からは程遠い、穏やかな一冊でした。途中まで、あまり響かずに読むのをやめようかと思うこともありましたが、後半は引き込まれて一気読みでした。
樹のチェロの講師の浅葉がとてもいい味を出しています。浅葉先生と樹のレッスン中の会話が何より面白かったです。
大きなチェーン店の音楽教室に、浅葉先生のように素敵で腕の良い人が本当にいるんだろうか?いるなら行って気楽にチェロを始めてみたいなとちょっと思いました。
心に残った文です
☆講師と生徒の間には信頼があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して代替のきくものではない。
(子供の頃経験したことで人間不信になっている樹の心の声)
☆透明な壁の向こうと自分との間には、著しい段差がある。世界のありのままの姿を、オートマティックに捻じ曲げてしまう分厚い壁。みずからの不信が作り上げたその巨大な防壁が、目に映るもの全てを脅威に変換してしまう。この脅威は、幻だ。手を伸ばすべき現実ははいつも、恐れの向こう側にある。
樹の、徐々に人との関わりを持つ楽しさを知り変化していく様子、変化させていった音楽教室で出会った仲間たちの様子に温かさと羨ましさを感じました。面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
良かった。
深い深い海は暗くて静かで、寂しい海をゆらゆらと漂うような気持ち。
そんな感じの話だった。
潜入調査。
全著連のスパイ。
深海千メートルを生きる、鋭い歯を持つ周到なラブカ。
孤独を泳ぐ、醜いスパイ。
発表会は楽しかった。
他人との間に透明な壁を作っている理由。
中学生の時に拐われたことがある。
トラウマ。
ボックスカーに連れ込まれ背負っていたチェロが壊れて、結果的に無事で助かったが、家では家族が心配しておじいちゃんは怒り出しチェロを燃やした。
スパイ友の会。答え合わせみたいな会。
2年間は長かった。
自分達は悪いことをしたのだろうか?
2年間は重い。
音楽教室には信頼と絆がある。
あると思う。
何かを教える人と教えてもらう人。
毎週会話して目標に向かって学び合うのだから。
コンサートで出会ったかすみさん。みんなの様子が聞けて、少し安心した。
「戦慄きのラブカ」聞いてみたい。調べたが架空の曲なのか?見つからなかった。
自分の話をしても大丈夫と思うことができる。それが信頼。
その無数の信頼の重なりの上に、人間関係が構築される。
ヴィヴァーチェでの演奏会の時には、橘くんを応援したくなった。
行けて良かった。
ラストの再入会での会話、グッときた。
いい話だった。
投稿元:
レビューを見る
楽器に普段馴染みがない生活ですが、読みながらチェロの演奏を聴きたいと思いました。
また、全著連のことは以前新聞で読んだことがありましたが、楽曲の使用料については今どうなっているのか調べたいと思いました。
投稿元:
レビューを見る
160ページぐらいまでは、あんまりハマれなかったけど、それ以降の後半が面白かった。
音楽好きな人や楽器をやっていた人はもっと楽しめたのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
過去のトラウマを克服できずに深海の夢を見続ける孤独な主人公が、会社のスパイとなり潜入した音楽教室で色んな人と出会ったことによって人生を取り戻す話。
主人公の揺れる心情と登場人物それぞれが丁寧に描かれてて面白かった。