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書物が焼かれる場所では、いずれ人間も焼かれるだろう
過去を記憶にとどめない者は、過去を繰り返す
第1章 土に埋もれた粘土板のかけら
第2章 焚きつけにされたパピルス
第3章 本が二束三文で売られたころ
第4章 学問を救う箱舟
第5章 征服者の戦利品
第6章 守られなかったカフカの遺志
第7章 二度焼かれた図書館
第8章 紙部隊
第9章 読まずに燃やして
第10章 降り注ぐ砲弾
第11章 帝国の炎
第12章 アーカイブへの執着
第13章 デジタル情報の氾濫
第14章 楽園は失われたのか?
結び 図書館や公文書館はなぜ必要なのか
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古代から現在に至るまで攻撃されてきた図書館・文書館。資料は戦利品として略奪されたり、後世に残ることを恐れて燃やされたり、文化のアイデンティティを破壊するため、資料の所蔵機関が攻撃されたりする。それは決して過去の出来事ではない…と著者の憤りとともに、警鐘を鳴らす図書。結びには図書館や公文書館がなぜ必要なのか、解説する。特定のコミュニティの教育を支える、多様な知識や思想を提供する、重要な権利の保護と健全な意思決定の奨励を通じ、開かれた社会を支える、確かな判断基準を提供する、社会が独自の文化的・歴史的アイデンティティを確立するのを助ける、などがあげられていた。
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12751504157.html
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2017年1月、真実とは別にオルタナティブファクトが存在し得ると言う概念をアメリカ大統領顧問ケリーアン・コンウェイが示した。トランプ大統領の就任式に集まった聴衆は映像やデータを見れば明らかにバラク・オバマの時より少なかったが、トランプは自らの聴衆の方が多いと主張したのだ。
侵略し、言語を奪い、歴史認識を書き換える。信仰を奪い、教育を操り、生活様式を変える。国の生命線を握り、政治を操作し、国民はいつの間にか、知らず知らずのうちに、貧困で窮屈でストレスフルな労働の日々を当たり前のものとして、無気力に感受し、暮らし始める。
知識の破壊。相手に打撃を与えるための破壊、不都合な真実を隠すための破壊、人や文化の存在を消し去るための破壊、自ら望んでの破壊。戦争の度に、または為政者の都合によって、奪われてきた。人類はミームを紡ぎ、倫理観を向上させ、より良い暮らしを目指すのだが、それは種の領域において利害が一致する範囲においての事で、利害関係が相反すれば、衝突する。
アパルトヘイト体制下、南アフリカの政府当局者は膨大な量の記録文書を破棄した。ナチスはユダヤ人から書物を奪い、アレクサンドリア図書館は独裁者カエサルに都市が略奪された際に消失。アッシュルバニパルの図書館では粘土板が割られ、宗教改革でも何十万冊もの本が破壊。引き揚げ時に日本兵は資料を燃やし、かと思えば、GHQに戦前の本は黒塗り、焚書される。マレーシアは1957年にイギリスから独立したが、マレーシア植民地政府の多数の記録文書は破棄された。アーカイブの破壊は旧植民地政府関係者の人種差別的な行為や偏見を隠蔽するために行われたのだ。
本を読めるのは、幸せな事だ。
知識を破壊するのは、知識に力がある事の証明でもある。知識は信仰であり、歴史認識であり、科学技術であり、それらを身に付けた集団の結束力の源泉でもある。本一冊一冊、有り難く、読み、身に付けていきたいと改めて思う。