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明治末の岡山で、片目を斬られて霊媒師になったタミエの元に様々な人たちが不思議な相談事をしにくる。なんとも言えず艶めかしく、不気味で哀しく、どこか懐かしいお話の数々。やはり岩井志麻子面白い。少女小説出身というだけあって、謎なくらい読みやすく、ちょっと内に籠って夢想に耽るような独特な味わいもある。これはホラー小説というよりは、抒情奇譚という趣だった。
舶来品をありがたがる明治期のあれこれもレトロで良かった。ドリップしたコーヒーを一升瓶に詰めて「珈琲液」として売り始めたって本当か。少し多すぎやしないか。日持ちするくらいだからものすごい濃いだろうにブラックで飲んで、苦い苦いと言いながらハイカラの味として有り難がってるのが非常にそれっぽくてホッコリした。
それにしても、関西地方のシャーマンを取材したアンヌ・ブッシィ『神と人のはざに生きる:近代都市の女性巫者』や、笙野頼子作品(三重県出身のシャーマンめいた小説家)にも通じる伝統文化の香りがするのは、岡山という地域がなせる技なのだろうか。どこがどうと具体的には言い難いのだが。もちろん文体やテーマの話ではない。