紙の本
堪能しました
2022/08/08 09:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nikobuch - この投稿者のレビュー一覧を見る
魅力的な人ばかりが出てくる小説。
超人的な人が活躍するのを仰ぎ見るような魅力ではなくて、
普通の人が自分に与えられた能力で
自分の居場所で精一杯努力していることが
こんなにも尊く愛おしいものに思える、
そんな読後感でした。
この小説をこんな陳腐な感想でしか伝えられないのが残念。
ぜひ多くの人に読んでみてほしいです。
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50歳を過ぎても、新しいことは始められる。夢中になれるものがある。
スポーツクラブを舞台に、大人たちがいろんな目的で泳ぐ。単なる趣味、では切り捨てられない、それぞれの目標に向かって泳ぐ。彼らの姿は、傍目にはおじさんおばさんかもしれないけれど、人生の先輩としてキラキラと輝いて見える。
何かを始めるのに年齢は関係ない、とはよく言われることだけど、この話はそれを目の当たりにさせてくれた。
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本当にそこらで起こりそうな話。周りから見ればなんてことない話でも、中に入ってしまえば色々と悩ましいことに振り回される。普通にちょっと良くしたいだけなのに。
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篠田節子さんの作品はずっと気になっていたのだが、なんとなく後回しになっていたのだが、思いがけず読む機会を得た。
自分と同世代の女性が主人公ということもあり、彼女の変化やその先が気になり一気読みだった。
この物語の主人公麻里は、52歳。
一昔前によく言われたいわゆる結婚適齢期に、母の介護に徹していたため婚期を逃したという。
祖母、母の教えをしっかり守るところは立派だが、夫や孫のために自分の時間を捧げる友人の千尋も含め、感覚的にはちょっと上の世代のような気がしてしまう。
とはいえ、何事にも控えめで、ともすればそれは自信のなさの表れのようにも思える麻里の態度が、地元のスイミングスクールで、様々な泳法を覚え、体も心も健康になり変わっていくのは清々しい。
読後に思わず、地元のフィットネスクラブを調べてしまった。
netgalleyにて読了2022.6
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主人公がメタボの中年女性というところが親しみを感じる。それも決して綺麗ではない古いスイミングスクールで水泳にはまって行く。必ずしも何かが成功するわけではないけど、日常の中にささやかな幸せを感じる。
中年の方も水泳やりたくなりますよ。(私はカナヅチです)
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読後感が爽やかだ。相性がいいと思える作家の作品はサクサクと一気読みしてしまう。5日ぐらいかけて楽しみたかったが夜に読み始め翌日の夕方に読み切ってしまった。
主人公の麻里は不摂生な生活から抜け出し、スイミングスクールに、通い実に健康的になった、それだけの話。
とは言え当事者にとっては「それだけ」では済まない。流されるままに他者に尽くす人生を送ってきた麻里が、多少流されながらではあるが、その流れを自分の意思で選んで「生きる」と言うことを実感していく。これはまさに”先カンブリア紀”の進化ぐらい、すごいことなのだ。一つ一つ扉を開いていくさまが小気味よい。
読み終わった後はスイミングスクールに通いたくなる人が続出しそうだ。
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親の介護のため結婚もせず、母を看取ったときには51歳になっていた麻里。20年にも及ぶ介護は彼女の心身を痛めつけ、太りすぎた体は高血圧と高脂血症を患っていた。生活習慣病改善のため水泳教室に通うことにした麻里に、これまでやり過ごしてきた人生の“セカンドチャンス”が訪れる──。
もっと軽い話かと思ったが、意外にもスポ根的な話で驚いた。いかにもそっち方面な展開もありそうな感じだが、ほぼ皆無なのも好印象だった。
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映画化もされた三浦しおんさんの箱根駅伝小説「風が強く吹いている」に似た味わい。(とはいえ、あちらは青春真っ只中、こちらは中年過ぎた50歳代で、スケールも全然違うが)
麻里に拍手を送りたくなる。あと、千尋のキャラが素晴らしい。
「仮想儀礼」や直前作の「失われた岬」といったシリアスな作品群と180度違うテイストで、篠田さんの筆幅の広さに脱帽。
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痛快!の一言。スポーツがテーマで言えば「一瞬の風になれ」や「あと少し、もう少し」に通じるものを感じた。
だけど、そこは50代の女性が主人公のお話。経験を重ねたからこその、一生懸命になりすぎない、頑張りすぎないっていう加減ができる。
若い頃みたいにがむしゃらにはなれないけれど、歳を重ねるのも悪くないなぁと思います。
ちょっと毒が効いているところもスパイスとなっていて、クスッと笑える楽しい一冊でした。
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長い介護生活の末母を見送った麻理、51歳、独身に残されたのは肥大した身体と、最悪の検査結果。病院の生活習慣病撲滅プロジェクトでお尻を叩かれ一念発起、スイミングスクールに通うことになった麻理が、カナヅチからタイヤ〜オタマジャクシ〜クマノミ〜金魚を経てカワウソになっていく過程で取り戻していく自分のための人生。泳ぎの上達度がそのまま章のタイトルになっているのが面白い。
麻理の自分に甘く、常に言い訳を用意して自己弁護に終始する姿には正直イライラするが、そんな彼女に言いたい言葉を読者に代わってぶつけてくれる親友・千尋の存在が大きい。
言い訳を準備し、いらない気を回してぐじぐじする麻理に対し、千尋を始めスイミングスクールの伊津野や谷口といった周りの女性が魅力的。
自分を犠牲にして、便利にこき使われて、それを人の役に立つことは自ら望むことと自分に言い聞かせて変わろうとしなかった麻里が、それでも最後には叔母からの電話をシャットダウンすることができるまでに成長。まあ、この後も一悶着あるんだろうけど。
自分とは余りにも性格が違う主人公に共感はなかったものの、中年からでも人生を変えることは出来るというメッセージはしっかりと伝わりました。
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親の介護の後、このまま坂を下って行くだけだと思ってた人生。でもそうじゃなかった。自分もまだ頑張れるのかもと思えた。泳ぎたくなった。
篠田節子さんに持っていたイメージが刷新されました。
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麻里は母の介護に日々を費やし、両親を見送り気が付けばひとり。
人のために生きることも悪いことではないと思うけれど。
P77
〈事が起きれば真っ先に切り捨てなければならない、自分のための趣味の世界〉
自分の時間を持つのは大切。
麻里は水泳教室に通い、しがらみも、体についた脂肪も落としていく。
帯文の「敗者復活」って?
彼女は人生の折り返し地点に立っただけだと思う。
楽しみはこれからだ。
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あ~楽しかった!
「自分ファースト」私自身が、まさに今現在、大好きな言葉です。
篠田さんの「爽やか系」(私の中での呼び名)のお話。「女たちのジハード」系列という感じかな?
ホラー、ミステリー、SF、宗教、テクノロジー、民族、芸術、などなど、篠田さんの作品群も、本当に幅広い。そして、どんなジャンルであっても、登場人物たちが、自然というか、私達の生活の中で、すぐそばにいる人達というか、そんな感じがあるので、スイスイ読めてしまうのです。
今作の主人公・麻里。風邪で倒れても、お見舞いをいただくと布団の中で、お礼はどうしようか?と考えてしまうような女性。お若い方には「イタイ」とか言われてしまうかもしれないけど。
私はねえ…ちょっと分かる気がしたんですね。もちろん、麻里の考え方や行動、全てに同意~ということはありません。麻里は独身ではあったけど、親や親戚、そして法事や地域の行事など「当たり前にやるべきことだと思って、ちゃんとやってきた」という女性。こういう感じ、自分がこの年代になってみると、ああ~~~と共感してしまう部分もあり、なんだかしみじみしちゃったのです。
そして、こういう女性だからこそ、ちゃんとやらないと、本人もストレスになっちゃったりするんだよあなあ~と、そんなこともじんわり感じて。
「わかるよ~!でもそこまでやらないでもいいよ~」という、麻里の友達の千尋(彼女がとっても良い!)の気持ちにもなったりしました。
今作は、麻里が水泳教室に通い始め、戸惑いながらも、コーチや仲間たち(これまた、様々な人がいる)との交流で、少しづつ変わっていく様子が、あっけらかんと現実的に描かれていきます。
人は急には変われないけど、一歩踏み出すだけで、ちょっとずつ変わっていける、そんなことに勇気をもらえた作品でした。終わり方も良かった〜!
私自身は、OL、結婚、出産、子育て、PTA、パート、夫や両親を見送り…と、一般的には普通、といわれるコースかもしれないけど(普通じゃないとこいっぱいあるけど)さてと、ここまで来て、60間近になり、やっぱり何かと寂しくつまらないと感じることが多いです。子育ては楽しかったけど、これからは「自分ファースト」でいきたい!ってちょうど感じていたので(私は水泳は出来ないけど)いろんな意味でエネルギーをもらえた作品でした!
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読み始めは気持ちが乗らなかったが、中盤以降、麻里が仲間に支えられ、次第に生き生きと前向きになってゆく姿に勇気をもらった。看護師、伊津野の驚異的体力には脱帽。
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51歳、麻里。独身一人暮らし。20年にあまる母の介護の末(やっと)昨年母を見送ったら、腹は出る、高血圧、高脂血症に。看護師に促され病院の生活習慣撲滅プロジェクトに参加し、水泳教室に通うことに。そこで出会った、コーチ、同じ中高年の仲間たちなどとの「水泳」を通して、麻里に新たな未来が生まれる。
「女たちのジハード」の主人公は、競売の家を買う、という行為で、今までの自分とは違った道が開けたが、こちらは水泳を通しての再生、という感じがした。女たちのジハードでは、まだ若い女性だったが、こちらは51才。まだまだ「セカントチャンス」はあるんだよ、というエールだ。
この51才、麻里、30歳位の時に母が58歳で心筋梗塞を起こし介護状態に。すると常勤をやめパートにと、結婚もせず親の介護優先で30代、40代を過ごしてきたのだ。兄はさっさと結婚し家を出た。が近くにいて姪を可愛がっている。そして、自治会の役員、法事、墓参り、親戚づきあい、とかなり濃い、地縁血縁生活を送ってきている。ここまで濃密な人っているのかな、と思うが、篠田氏は、親といて、生まれた家にずっと暮らすということは、こういう「めんどうくさい」つきあいをし続けることですよ、と麻里を通して描いたんだと思う。
またお嫁に行ったら行ったで、麻里の友人は、娘、嫁、母、祖母の役をする。
先生にウォーキングとかやってるの? と言われると、いえ膝も痛くて。先生は、治らない人っていうのは、必ずそういう言い訳を用意するんだ、と言う。これは象徴的な言葉だ。言い訳はしない、そういう生活ができたらいいなあ。
しかし、麻里の母は58歳で倒れ、20年の介護の末78歳で死んだ。これって、88歳。98歳と、麻里が60歳、70歳まで介護生活が続いた可能性もあるわけで・・・
初出「小説現代」2022.4月号
2022.6.27第1刷 図書館