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紐解き始めて夢中になり、素早く読了に至った。
本作は、題名のとおりに新宿の花園裏交番に勤務しているという坂下浩介巡査が主人公という物語である。警察官になって2年という、「交番の若いお巡りさん」という感じの青年である。作中、高校生であった頃の事を「10年前」としているので、27歳、28歳であると判る。
本作は4つの章、または篇から成る。最後の1つは「短めなエピローグ」という雰囲気も色濃いので、実質的には3つの挿話を組合わせて創られた物語という感だ。各章または篇には「冬」、「春」、「夏」、「秋」と季節の名が冠せられている。各章または篇の出来事が在って、3カ月程度を経たということで、次の章または篇が始まっている。
「冬」、「春」、「夏」の各章または篇である。各々が好い纏まりで“篇”という雰囲気も漂うのだが、各々に前のモノで語られた事柄への言及が出て来る関係で、各々が長い物語の“章”というような印象だ。故に以降は「または篇」を排する。
「冬」の章は、繁華街の数在る配置される警察官が多い交番の一つに勤務する坂下浩介巡査が登場し、起こった出来事に向き合って奔走しながらも、嘗て縁が在った人物によく似た男に出くわしたことを気に懸けているというような話しになる。「春」の章、「夏」の章にもその気に懸る人物が向き合う事案に関わる。
主人公の坂下浩介巡査の周辺の人達、交番の大ベテランである上司や、新宿で名前が売れている女性の名物刑事等、魅力的な劇中人物が多い。何か、経験不足を熱意で補いながら、出くわす人々と、人々が関わる事案に向き合う様が、「お仕事モノ」的であり、同時に「青春モノ」的で、更に事案の事情を解き明かす「事件モノまたは推理モノ」で、非常に愉しい。
個人的には、随分と古い時期ながら、新宿界隈に多少は馴染んでいるので、作中の色々な場所の雰囲気が少し思い浮かばないでもなく、何となく入り込む感じで読み進めた面は在った。
こういう感じの小説は好きだ。