紙の本
今風の戦争文芸評論のような書
2022/10/04 13:41
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争体験者の言葉や文学などを頼りに、戦争を過去の誰かのものではなく現在の自分のものだと捉えようとする試み。
さまざまな作品が紹介されており、ゆるーい文芸評論のような趣。
全体としては読みやすく面白かったが、個別各論では、すっと入ってくる部分とそうでない部分があった。
ただ、先人の言葉をたどっていくことで、その小さな記憶の数々に触れ、それが「彼らの戦争」から「ぼくらの戦争」になる、ということは何となく分かる気がした。
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多くの引用と作者の意見とが交互に出てくる構成。原文を読んでおきたくなる。少し細切れに読みすぎたので、再読したい。
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好きな作家の高橋源一郎が書いた本ということで読んでみた。平和を世界中の人々が望んでいるのに、何故愚かな戦争へと突き進むのか?
ヒントを作家としての目線で書き綴ってくれている。
平易な言葉で書いてあり、若い人に是非読んで欲しい作品だと感じた。
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毎日新聞2022813掲載
読売新聞2022911掲載
日経新聞2022108掲載 評者:井口時男(文芸評論家)
論座web20221013掲載 評者:野上暁(児童文学家,評論家)
ダ・ヴィンチ202211掲載 評者:あつしな・るせ(?)
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よく見る想像しやすく触れやすいのは1章まで。
それ以降は、慎重に慎重に、小さな声から思考を深める。
じっくり読むことが要求される書であった。
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不安定な世相にこそ、氏の言葉に耳を傾けたくなる。そして氏も、本書の中では戦争前後にものされた作品に耳を傾けているから、二重に耳が傾けられとる訳やね。それはさておき、大きい声ならば、特に耳を傾けなくても否が応でも聞こえてくる。でもそんなではなく、自分事として考えて、積極的に耳を澄ましてみないと、なかなか聞こえてこない声もある。そしてそういう声にこそ、本当に聞く価値のある言葉が込められている。こういった氏の論旨は、今回も当然、変わることはない。それを求め紐解き、読み終えて少し安心する。
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「みんなのせかい」
あたらしいこくご 1年生用の最初の言葉
教科書 「公」「国家」の「声」
ドイツ 現代史教科書
19世紀以降までの690ページのうち130ページがナチスドイツについて:対決
フランス 近現代史教科書
2年間で700ページ 世界史と自国史の区別なし 第二次大戦の二重人格:懐疑
大きなことば:強く支配する 小さなことば:地に足がついた現実
「野火」 「変身」「うわさのベーコン」
生きるとは ことばを用いて、そのことばの法を知って、
自分以外の誰かとコミュニケーションすること
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厚めの本だったが、読み始めると興味深い内容だったので、どんどん読み進めることができた。
文学者と彼らが紡ぎ出す文学が、戦争という背景の中でどう順応し、あるいはどう抵抗したのか、その足跡が丁寧に考察されていた。
しかし、これは戦争の時代だけの問題ではない。文学はいつの時代でもその時代に順応したり、抗ったりしている。文学者は言葉と共に時代を生きるその時代の証人なのだと改めて感じた。
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単なる戦争批判の本では無い。詩、小説、文学、ことばに関する作家の深い深い考察だ。そして、ふだん、世の中の大きな声に流されて、考えていない、感じていない私たちへの警鐘に思う。帯に書いてある通り「こわい本」だし、丁寧で優しく書いてあるが「渾身のことば」だ。この本で、太宰治に対する見方が180度変わってしまった。作者の次の小説に現代の太宰を期待してしまう。文学論として読んだ。
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【感想】
非常に示唆に富む本だったと思う。本としては厚いが、文章が読みやすいため、すらすらと読める。様々な本や詩集等から引用がなされ、戦争というものを多角的な視点から見ることができる。戦争とは、こういうものだと広く一般化されている見方だけではなく、他国からの視点、教科書、詩集、大きな言葉ではなく、ぼくらの世界の中の小さな言葉で語られた戦争等多くの立場からの戦争の語られ方があった。
この本で筆者は、こうこう語られてるけど、これはこういう立場で語られていて、こっちはこういう立場で語られているからこっちが正しいと主張しきる訳ではなく、読者に考えさせる、もしくは著者も考えている道中であり、経過なのかなとも感じた。
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鶴見俊輔、いろんな国の教科書、「この世界の片隅に」「野戦詩集」、「野火」、「うわさのベーコン」、後藤明生、向田邦子、太宰治などを俎上に載せて戦争にアプローチする。古市某のことは忘れよう
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読むまでは、「僕らの戦争なんだぜ」というのは「当事者意識を持てよ」という意味かと思っていたけれど、違った。大岡昇平『野火』の読みを通して、「僕ら」の前に、ある一本の線が引かれる。その線が引かれた後に読むことになる最終章の太宰論には、こみ上げるものがある。
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5/12 読了
タイトルからは内容を想像できなかったが、読み進めていくと、そういうことだったのかと、腑に落ちていく感じ。
2020くらいの時点の日本で、戦争に、本気で向き合った大先輩(日本人という広いくくりでの)の、素直で、真剣で、正直で、日本人に対する愛が湧き水のようにあふれ続けていた一冊。
大きく雑に捉えるのでもなく、感情的にハナから拒絶するでもなく、短絡的で軽率に結論づけるでもなく、自分と過去の戦争、自分と今の戦争、そして、自分とこれからの戦争、そのことに、大先輩のような姿勢で、「戦争」を捉え、考え、向き合い、行動することができるか。
最後の方に書かれていたが、それは「戦争」に限ったことではなく、国や自治体、学校や保育園、PTA、会社やバイト先、習いごとの集まりや、なんやかや。人が複数人集まったり関わったりするすべての場合においても同じことであって、すでに生じている多くの問題を、「ぼくらの〇〇なんだぜ」と捉えられるかどうか、とのこと。
愛が深いぜ、源一郎さん
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いい本に出合いました。
今テレビに映る映像、どうすればいいんだろうと戸惑ってしまう。
今流されていきます。
「大きな声」の方へ。
私はその中で「小さな声」に気づいているのでしょうか?
教科書・戦争小説・戦争詩を読む。
知らなかった(名前はよく知っていた。読んだこともある)作家の魂に気づかされました。
著者もまた探っていく過程だそうです。
世界中が戦争に向かっています。
遠いところではなく、その兆しを見逃さないようにしたいです。
今ここにあるそれを。
≪ 流されて 気づけば泥沼 立ち止まれ ≫
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強く強く心を揺さぶるものがありました。
それは必ずしも本書で語られた内容によるものではなく(だってたぶん僕はこの本で語られたことの1/3も分かっていないと思いますから)、高橋源一郎という人が、背伸びをせずに、かといって自身を矮小化することもないまま、できるだけ等身大で、それはつまり戦争体験者でもなく、かといって戦争に無責任にあるわけにもいかず、ただ戦争というあまりにも巨大な(少なくとも巨大だと思われてしまう)課題についてどうしたらよいか分からないという立場に立って、戦争を考えるためにはどうしたらよいかということを実演してみせてくれた、その正直なありように、心が、あるいは偉そうに言えば僕の知性と呼びうるものが反応した、そんな気がします。
本書は太宰治の「私は虚飾を行わなかった。読者をだましはしなかった。さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行こう。絶望するな。では、失敬」という『津軽』の言葉で締め括られていますが、これは本書にかけた高橋源一郎さん自身の自負であるように僕には感じられました。
「戦争についてできるだけ誠実に向き合ってみた。そしてその過程で見たもの、感じたもの、考えたことを、できるだけ正直に書いてみた。さあ、君は僕の言葉をどのように聞いてくれたのだろうか。いつか、君の意見も聞いてみたいね。(タモリさんが言うところの「新しい戦前」というこの時代を)しっかり生きよう。考えることをやめるな。では、また次の本で」
本書のなかで「日常」について語られる箇所がありました。
「日常」を忘れず、「日常」を保持し続けるためには、「日常」を経験するだけでなく、その日常の中で「日常とはなにか」を問うという行為が必要でしょう。
思考停止だけはしてはいけない。
そんなメッセージを感じて、心は揺さぶられたのではなかったと思います。
2023年一番最初に読み終えた本になりました。
今年もできるだけたくさん本を読みたい。映画を見たい。
そんな気持ちになりました。
今年最初の出会いがこの本でよかった。