紙の本
いまや死語?のサラリーマンを分析
2023/04/30 17:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の博士論文を書籍化したもの。
学術論文なので、タイトルほどの親しみやすさはないが、いまや死語とも言える「サラリーマン」。
その凡庸でもの悲しい存在は、いったい何だったのか。若手社会学者の著者が映画、雑誌、漫画などメディアに表れる姿を手がかりに、分析している。視点含め、面白い。ジェンダー研究にも接続できるのでは。
投稿元:
レビューを見る
俺の父親がサラリーマンやってた頃のサラリーマン世界観の一端を知ることができた
昔と今のサラリーマンで変わっていないことは案外多いのかもしれない 組織・上司の命令は理不尽でも服従しなければいけない悲哀がありつつ、会社の誰かが頑張って稼いでくれる陰で言うことさえ聞いていれば創意工夫せずリスクを取らず食いっぱぐれない甘えもある
俺の子供が成人する頃に世の中また変わっているだろうが、独立して事業やる気骨のある人間が急に増えるとも思えないので、やはり案外変わらないのかもしれない
投稿元:
レビューを見る
糸井重里が「サラリーマンという仕事はありません。」という西武セゾングループの会社説明会の告知のコピーを書いたのが1988年。現在、サラリーマンという言葉を口にすることはほとんどないような気もしますが、テレビのニュースや新橋駅前のインタビューなどでは使われていることもあるような…まだ完全に死語になっていないとすると耐用年数はかなり長い単語です。それだけ日本社会のメジャーを括る言葉として有効だったのでしょう。本書はサラリーマンという単語がメディアでどう扱われてきたか?という歴史から日本社会の変化を考察する論文です。「サラリーマンはサラリーマンをどうまなざしてきたか?」まなざし、という言葉から連想されるように社会学のスター、見田宗介の「まなざしの地獄」も意識し、特殊から見る社会変化ではなく、普遍から照射する普通を目指している、新しい社会学を目指した、と言っています。この意気軒高な志は本書が修士論文、博士論文の延長にあるからなのでしょう。そういう意味で本書からは、研究のテーマが決まったらそれをどう展開していくのか?の研究実例の参考書のように読めました。内容については、自分的にめちゃハマった新書「サラ金の歴史」とシンクロして読めました。日本社会の基本フレーム、終身雇用と標準家庭モデルが崩壊した今、サラリーマンというメジャーワードのオルタナティブは生まれるのか?本文で取り上げられている鈴木貴宇の近著「〈サラリーマン〉の文化史」にも期待です。
投稿元:
レビューを見る
明治後期から現代まで「サラリーマン」がどのような存在でありどのように変化してきたかを、サラリーマンを描いたり対象とした書籍、映画、雑誌などのメディアを通して、その質的、量的な解析から明らかにしようとした内容。
社会学の学術論文のような書籍で読みにくいな、と思ったら著者の博士論文を書籍化したものでした。博士論文なので、過去の論文との違いやこの本の意義、自分の主張の正当性だとかを論じる部分が多く、実質的な内容は多くなかった。社会学って分野は何してるんだろって言うのを知るのには良いかも。
本書の結論は、学校生活を送って就職して何らかの組織に所属して働いたことのある人なら誰でも理解できる、知っているようなことなので、最後の結論の章だけ読んでも十分かなと思います。