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積読がだいぶ落ちついてきたので、中村文則未読作品を新しめのものから攻める。本作はなかなかの大作でした。恋人の物語を書かなければという前半までの話でかなりぐっときたんだけど(このあたりは彼女がベトナム人であるというのが、個人的な職業柄思い入れみたいのもあって)そこからが過去の歴史と、悪とされてきたトランペットの真実を探る壮大な旅でした。時をおいて再読したいかな。
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キリシタン迫害、新興宗教、第二次世界大戦、テーマが乱立していて難読なイメージ。何度も読んで理解を深めたいが今回は『トランペット』を焦点に書く。あまりにも完璧すぎて持ったものを狂わせるトランペット。トランペッター鈴木の手記の中に「これを作った男は、クルッタ」、「トリハダガタッタ」のように片仮名表記の文章が出てくる。大戦時の手記のため、旧字だったり読めなくなっている部分を「手記」というリアリティのための表記とも捉えられるがトランペットに関わってしまった人間が人間としてのあたたかみを損失して異常さを増していくことの表現とも感じた。
他作『銃』では、たまたま拳銃を手にした主人公がその魅力に取り憑かれ彼女も人間としての生活も捨てて狂っていく話が描かれているが、今回も「トランペット」のみを抽出するとそこに繋がる感じがした。
鈴木にトランペットを渡した男は、上等なスーツを着ていて広い部屋に椅子が一つだけ(家族はいない)、天井まで侵食した棚に膨大なレコオドがしまわれた部屋に住んでいる。『掏摸』『王国』の木崎、『教団X』の宗教家(敵の方、名前忘れた…)などもそうだが、中村作品に出てくる悪役は上品だがそれを超えてくる不気味さ、非人間性を持ち合わせていることが多いと感じる。その傾向はモノにもあって、それが今回のトランペットで『銃』における拳銃だと感じられる。
鈴木が上官の前で「ウミユカバ」を吹く場面。天皇のために死ねる喜びを綴る歌詞に寄った演技をしていたが、途中から「恐ろしいまでに入り込んだ」。そして最後は正気に戻っていたが同胞たちは涙を流していた。この本の最初の方に楽器は兵器であると書かれているが、鈴木が手にしたトランペットは吹くものも聴くものも戦争の道具として目覚めさせるという、まさに兵器とよぶに相応しい楽器であったといえる。
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一昨年の11月に四国へ旅行に行った際に高松の駅で買って以降、ずっと積読状態になっていました。
・第二次世界大戦で伝説を残す狂気のトランペット?
・トランペットを抱え、謎の組織とBに追われる主人公の山峰?
・山峰の恋人アインは不慮の死を遂げる・・・
・アインの先祖と長崎の関係
・長崎と山峰の関係
・トランペットと宗教
・宗教と政治の繋がり
・隠れキリシタンと長崎の原爆
・大戦末期のフィリピンとトランペット
色んな物語が混ざり合って絡まる物語・・・
物語が繋がっていくことに心地良さを感じる、不気味なストーリー
同作家の掏摸が好きな人にお勧めです!
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中村文則さん15冊目。
鬱々とずっと霧がかかってる感じ、ほんと好きすぎる。
自分が読んだ中村文則さんの中でもTOP3に入る位好きなお話だった。