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※Amazonレビューからの抜粋です。
テストエンジニア歴10年目(ソフトウェア開発のテスト)の私が本書を読んだレビューを、下記に掲載します。
「ゲームテスト」の本とのことなので、思わずポチって読みました。
本書の購入を検討している方の参考になれれば、幸いです。
卒爾ながらこれから書くのは、筆者よりも業界歴が"短い"エンジニアの一個人の意見としてのレビューとなります。
まず本書を読む前に、「この1冊でよくわかるソフトウェアテストの教科書[増補改訂 第2版] 品質を決定づけるテスト工程の基本と実践」を読んでから読むことをお勧めします。
最初に本書の対象者は「ゲーム業界に興味を持っている学生さん、ゲーム業界に勤めている方」向けに書かれた本です。
内容は、筆者の経験やゲームの変遷からゲーム開発の組織図、ゲームテストの現状やJSTQB FLレベルのシラバスに掲載しているテスト手法やテストプロセスの内容をわかり易く概要を解説した本になります。
さて、レビュー1つ目は未経験の方に対しての解説としては読みやすいのですが、本書の目的である「興味をもってくれる」のかどうかはちょっと疑問に思うところがあります。
というのも、テストプロセスやテスト技法、現状や雇用形態などをただ解説している内容のため、そこからどう魅力を感じるのかという部分が見えなかったと言うのが理由です。
私の想像力が乏しい所為でありましょうが、本書から「ゲームテストって、こんなところが面白いよ!」と感じる文は見当たりませんでした。
2つ目は、「活用してもらいたい」と本書のはじめに書いておりますが、章ごとの知識の関連性が紐付けしずらいためにゲーム業界の方に向けた内容としては、「活用方法がイメージしずらい」ものになっているのではないかと感じます。
3つ目は、テストプロセスや技法の一部の解説が不足している、または不十分であることです。
例として、狩野モデルという有名なモデルの解説で説明不足(一元的品質の解説が無い)だと感じました。その説明不足である理由を、以下に列挙します。
・当たり前品質、魅力的品質、一元的品質の本質」を見誤っている事
・ゲーム業界に従事している方が一番知りたいことと思われる「狩野モデルのそれぞれの要素を踏まえた、ゲームプレイヤー(もしくは、ユーザー)が満足できる良いゲーム(もしくは、長く愛されるゲーム)とは何か、について明文化されていないこと。
・それに必要なゲームテストのプロセスとは?」について明文化されていなかったこと。
この3点です。
ディレクターさんやプランナーさんなどの読者対象の方々は、この事についてゲームテストに従事している方の意見が知りたかったのではないのか、とも思いました。そうすれば、本書を読んで一番有用になったり、品質の本質に迫った内容でテスト手法やテストプロセスを関連付けて提示できたのでは無いかと思いました。
経験ベースで「ゲームデバッグが職人化」したことによって属人化し、「バグの見つけ易さは"人次第"」であるという人海戦���によるカルチャーによって保たれていたゲームの品質保証は、今や「費用対効果が望めない慣習」「コストパフォーマンスの悪いテスト」となってしまった現状を何とか打破したい、効率的にテストしたい、面白いゲームを一つでも早く世に出してプレイヤーを楽しませたいと考えている方へ向けた"技術本"としてはレベルが低いということが、本書を読んだ感想のまとめです。
よって、厳しいとおもいますが星1つとさせていただきます。
※補足 2023年08月03日に追記
狩野モデルにて、「当たり前品質は、最低限保証すべき、ユーザーが思う品質」とありますが、"当たり前品質が担保される"ことによって、顧客が満足するとは限りません。
狩野モデルのグラフを見ていただければ分かる通り、当たり前品質が担保されても「不満の度合いは低くなるが、それでも顧客満足度は"不満"である」ことが示されています。
なので、他の魅力的品質、そしてなくてはならない一元的品質(機能の充足)が担保されているかが重要になってきます。機能が無ければ、当たり前も魅力も推し量ることはできませんし、魅力がなければ当たり前にある機能に対しての品質評価もしずらくなります。
このように、それぞれの品質「当たり前品質、魅力的品質、一元的品質」はグラフにある関係のように相互に作用するものとして考えて品質を評価すべきだと考えます。