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あるインタビュー記事で、「いろんな人生が詰まったおもちゃ箱」と述べれています。
法華経妙音菩薩品第二十四
中国伝統の民家、四合院造り
来国俊の短刀
端渓の硯
竹細工の花入れ…など
「見ていると幸福な気持ちになる。それはやがて『もの』ではなく幸福そのものになる。わたしはそういうものを探して集めてきた。綾乃もそうしなさい。探せば見つかる。探さない人には見つからない。」(p.93)より引用
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著者新刊を読むのは、『灯台からの響き』(2020)以来なので3年ぶりか。
https://booklog.jp/users/yaj1102/archives/1/4087717011
相変わらず豊饒な筆致に磨きと円熟味が加わり、安心して読み進むことができる。
本書は、「四合院造り」という中国の伝統的な建築様式の建物から物語がスタートする。建物がキーとなるのが『骸骨ビルの庭』(2009)を思い出させたが、描かれるハイソでブルジョワジーな暮らしぶりが、2010年代ころから顕著になった金持ちの老人が物語を引っ張り回すヤな作風を一瞬彷彿とさせたが、鼻につくほどではなく良かった。
とにかく、「よき時を思う」というタイトルのとおり。しかも、この「よき時」、読む前は老人の懐古趣味、昔はよかった的なお話を想像したが、主人公のひとり綾乃のこのモノローグで、そうか!と膝を打った。
「わたしは、このよき時とは過去のことだと解釈してきたが、未来のこととも受け取れる。もしそうだとしたら、九十歳の徳子おばあちゃんにとって、未来に待つよき時とはなんだろう。それが死後の西方浄土や補陀落(ふだらく)ではないことは、わたしはよく知っている。」
そこから先は、元気な徳子おばあちゃんが物語をグイグイひっぱっていく勢いに任せ、未来に訪れる「よき時」を楽しみに読み進むことができる。
この徳子さんの、経歴、思考、感受性といったものを味わいながら、彼女の中でそれらがいかにして醸成されてきたか、先の戦争の体験も交えながら読み解いていく。四合院という建物からスタートしたが、大半はこの徳子さんの物語が中心になっていく。
恐らく著者も、生み出してしまったキャラに引っ張られるように筆が走ったのではなかろうか。やや、四合院が置き去りにされてしまった。
最後に、結びの章として再び四合院に舞台は移るが、中盤の徳子ストーリーとは浮いた印象は否めない。あるいは、この先、いつの日が続編もあり得るのか?
四合院の住民もだが、徳子ファミリーのその後も気になる終わり方だった。その先のことは読者に想像せよということか。読者なりに、この先の「よき時」を思い描いてみるのもいいのかもしれない。
『骸骨ビルの~』の中に、こんな一節があった。
「どんな魔法使いになるよりも、「人を幸福にする力」を持った人間になりたいと、子供がお伽噺を夢想するのと同じ気持ちで…」
多分、先行きの見えない現代社会において、この“お伽話を夢想する”力が、あきらかに弱まっているのだと思う。本書でいうところの「よき時を思う」ことだ。過去の良かった時代のことを思うのではなく、未来の希望、この先に訪れる「よき時」を思うこと、いや、積極的に夢想して期待して、機運をあげていくべきなのかもしれない。
そんなメッセージなのかな?と、かなり好意的に解釈して読了!
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徳子おばあちゃんが素敵すぎる。筆で書く手紙、90歳で開く華やかな晩餐会、状況が目に浮かぶ!
全ては、徳子さんの教師時代に起因する。徳子おばあちゃんの素晴らしい先生ぶりもさることながら、登場人物全てが素敵すぎる。玉木少年への導き、吃音を治す練習法、人として立派だなぁと感じ行ってしまった。
綾乃の兄弟、特に春明との掛け合いが面白い。兄弟仲良くて素晴らしい!
最初から最後まで、考え尽くされた?構図なのか楽しく読ませてもらったし、ポカポカした気持ちになった。
欲を言うなら、綾乃と棚田さんとの関係ももう少し読みたかったかなー。
題名も素晴らしい、読んだあとかなり余韻がすごかった!
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食事のシーン多かったけど、どれも丁寧に描写されていて美味しそうでしたね〜!
綾乃さん、素敵な家族に恵まれててるね。
大切にしてほしいです!
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長い描写のカクテルドレスもタキシードも超一流のフレンチも、結局は断絶を再生に導く序章だったのか、と思えるようになったのはやっぱり歳のせいか。二つの物語の底流に流れる生命の繋がりと縁の重さを感じた作品。
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四合院作り、端渓の硯、ノブレス・オブリージュ、ランスタンドゲラン、少病小脳、晩餐会とは今日生きていることへの敬意etc 知らないこと、なるほどと思うことが多々あった。「錦繍」や「流転の海」の感動を期待して久しぶりに宮本輝作品を読んだが、少し違った。ラストに違和感。