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このシリーズが無性に好きなんです。何故なのかなぁと考えると…
まず、抑制された筆致。淡々と事実が進む中で、じわじわと悲しみとか怒りが滲む。
犯罪もいつも、何かを考えさせられるケースが多い。
捜査手法も多様なやり方を駆使して、ラストに向けて加速して真実に到達するところは、痺れます。
大人向けのかっこいいミステリで、どこか観察日記みたいな、過剰な盛り上がりがないところも、とてもいい。
こういうミステリがもっと読みたい!
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CL 2023.5.19-2023.5.21
ヴィスティングが個人的に捜査を始めて上司に嫌がらせをされて、どうなることかと思ったけど、すぐに正式な捜査になり、ヴィスティングもその捜査に加わることになる。
こういう真っ当なところが好感持てるんだよなーこのシリーズは。
地味だけど飽きさせない、淡々と進んでいるようで起伏に富み、最後の最後まで真相を引っ張る。
読むたびに好きになる作者。
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<未解決事件四部作>の最後を飾るシリーズ第十五作目。異色作でもあった前作とは打って変わり、著者の持ち味である地味(誉め言葉)ながらも巧みで堅実な筋運びが展開される。翻訳も中谷友紀子さんによる原書からの直訳に戻っており、最後を飾るに相応しい仕上がり。今作ではリーネの活躍を見られないのが残念だが、定年を間近に控えたヴィスティングの進退が気になるところ。私的に今作を含む三作品は結局のところ「カタリーナ・コード」の完成度を越えられなかったが、次作以降も年一ペースで翻訳を続けてくれると非常に有難いです、小学館さん。
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〈ヴィスティング〉シリーズのコールドケース四部作のラスト。休暇中のヴィスティングに届いた差出人不明の数字の書かれた一枚の紙。昔に解決されている事件番号が記されていて、さらに別の紙も届く。解決されているはずのものを誰が調べて欲しいのか。そこから見えてくる当時の状況と事件の関係者たちのその後。地道な捜査の描写と終盤の展開の面白さが際立つ今作。コールドケース四部作はこれで終わりだけれどシリーズはまだ続いているらしいのでこの先も読めると嬉しい。
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ノルウェイの警察小説。ヴィスティング警部のコールドケースシリーズ最終作。
人間味のあるヴィスティング警部の地道な捜査がミステリーに留まらずに骨太小説としても楽しめた。
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読み終わってみると、今のこの時代なんだから、情報は共有して不明点はとっとと解明して話を進めてほしいと思っている自分にぴったりな内容だった。今までに読んだことのないイマドキなデータ分析が犯人特定のカギになったりした。
訳者あとがきによると、ホルスト自身が刑事を務めていた時代に捜査にあたった事件があり、ホルストの現役のうちには解決しなかったが、退職した後、最新の手法によって遺留物の鑑定のやり直しを経て解決に至った事件があったのだという。このコールドケースシリーズを地でいく実話だ。
そして、その事件では折に触れて捜査資料を読み直し、被害者の父親とも連絡を取りあっていたという。
これは、まさに『カタリーナ・コード』のヴィスティングではないか!ということで感激した。
ヴィスティングはいつものヴィスティング。大好き。
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休暇中のヴィスティング警部に届いた封書には1999年の事件の番号が書かれていた。17歳女性の殺害事件で、元恋人が逮捕され刑務所に行った。ヴィスティングが担当していた事件の番号も封書で送られ、こちらも女性殺害事件事件で容疑者は獄中で死んでいた。もしかすると真犯人は別にいるのか?
面白かった。封書を送る者の意図、既に刑期を終え出所してるダニーというキャラ、1999年の捜査と現代の捜査の違いなど読みどころたくさん。北欧のミステリーにはご馳走が多し。
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警部ヴィスティングの未解決事件四部作の最後の事件。今回は休暇中のヴィスティングのもとに、謎めいた手紙が届くところから物語が始まる(いい加減、個人情報や自宅のセキュリティを真剣に考えた方がいいぞ、ヴィスティング)。手紙に導かれるまま、ヴィスティングは過去に解決済みの少女殺人事件に注目する。調べるうちに幾つかの疑問点が明らかに。この事件は本当に解決しているのか。手紙の主に操られているような感覚を覚えつつ、ヴィスティングは過去の事件にのめり込んでいく。スティレルには「あなたが過去の事件を調べるたびに、予想もつかない事態が起きる」と軽口を叩かれる始末なのである。
いい!やはり、このシリーズはいい!何と言ってもヴィスティングの人物像がいいのである。彼には日本のミステリにありがちな超人的な推理能力も、変人じみたキャラ設定も、意味ありげな過去も、類まれな容姿もない。至って実直な中年オヤジであり、娘や孫を愛する家庭人である。捜査方法は現場百遍で堅実そのもの。繰り返し報告書をチェックすることも怠らない。これは自身も本警官だったという作者ヨルン・リーエル・ホルストのこだわりなのだろう。
本作のヴィスティングには、少しずつ変化が見られる。成長した部下の捜査に口を出すか迷ったり、このまま独り身でいいのかと考えたり、身体の不調が出てきたり…そう、我ら中年の悩みをヴィスティングもまた抱えているのである。そろそろ定年も近そうなヴィスティング。この先の彼を見てみたい。ぜひ、シリーズの続刊と、未訳の初期作品の翻訳をお願いしたい。
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前作はこのシリーズにしては、ダイナミックなアクションでスタートする動的な物語であったが、本書は静かな世界の中で終始する物語との印象が強い。本来、この作者はこうした静かな作品が得意なのではないか。文章の洗練に洗われるが如き心地の中で、美しい文章に魅かれるように読んでゆく小説。そう思える。
その大きな理由が、ヴィスティングが休暇中である中で進む物語だから、なのかもしれない。これはコールドケース四部作の最終作品であるそうである。ハヤカワ・ミステリ『猟犬』でこの作者とこの主人公に引き寄せられてしまったのをきっかけに、『カタリーナ・コード』『鍵穴』『悪意』と読んできたが、間に年単位の隔たりがあるせいで、ぼくの中ではうまく世界が繋がらない。
実は今年は札幌読書会で本シリーズを四作連続で毎月取り上げるというイベントが盛り上がっているようだったのだが、過去作品を順番に読み直すきっかけとしてこれを利用するのもありだったか、と痛い悔悟の念に囚われているのが本作読了直後の現状である。なので、本作品もぼくの中で連続性は失われ、朧な記憶のヴィスティングに再会する物語、それ以上でもそれ以下でもない一冊に終わる。
本書では休暇中の老警部の日常が取り上げられる。そして過去の未解決事件、誤認逮捕かもしれない疑念に彼は夢中になる。きっかけは郵便受けに投函される怪しげな手紙。差出人不明。筆跡を隠すためにおそらく定規を使った直線で描かれた文字は一枚の紙に、数字だけを書いたものだった。それは過去の事件が起きた年と、残された事件番号だけを示していたのだ。
休暇中のヴィスティングは、これをきっかけに事件を過去から蘇らせ、誤認逮捕であったかもしれない容疑者、あるいはその関係者たちの現在に対峙する。本作の元警察官でもあった作者が、実際に経験した未解決事件へのこだわりをペンで追想しているとも取れる、限りなく真実に近いリアリティが全編に感じ取れる作品である。
ヨルン・リーエル・ホルストという現実に事件に関わり合った経験を持つこの作家は、ヴィスティングに自分を投影し、当時の未解決事件を現代の科学捜査技術、現在なら辿ることのできるであろう情報取得の繊細な一面を強く感じつつ、作中でも過去に十分に捜査したとは言い切れない過去の実際にあった事件を、現在に蘇生させようとしてるかに見える。
そのデリカシーでいっぱいな作業が、今翻訳されてぼくらのもとに届けられている、そんなリアリズムたっぷりの印象が強い作品が本書である。過去に起きた事件の疑わしい真実。間違った人間を犯人にしてしまったかもしれないという疑惑や懊悩。今のデジタル疑術を基にした科学捜査、同じ技術を使った犯罪が、過去の事件を覆うように本書の暗い世界に踊る。照射される新たな真実。アクション・シーンですら、過去のものではなくデジタルなものに変容している今を、本書では、古い刑事が長く生きた捜査の世界の中で新たに体感し、見つめている。
時代の変遷を経た現在というフィルターで、過去の事件を見つめなおす<コールドケース>的シリーズが、現代のヒットメー���ーとなるのは必然であろう。現実に書き手の情報もかように適応してゆくことが必要な時代なのだ。古い騎士(ナイト)の真実を求める誠意は一ミリたりとも変わらなくとも、世界の変化は止めようがない。
ミステリーの歴史を振り返りたくなるような一作である。
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地味だけどカッコイイ!丁寧で本職刑事の捜査を体験できる、警部ヴィスティング・シリーズ第四弾 #疑念
■あらすじ
休暇中のヴィスティング警部のもとに一通の手紙が届く。そこには事件番号と思われる数字のみが書かれていた。
その事件では少女が殺害されており、すでに犯人も逮捕されている。手紙に何らかのメッセージを感じた警部は、その事件を調べ始めるのだった。
■きっと読みたくなるレビュー
地味。鬼のように地味。
しかしこの地味さが本作の持ち味ですね。
まるで本職刑事になったみたいに、丁寧で実直な捜査を体験できる作品です。なにもミステリーにラノベ感抜群のキャラ刑事や、才色兼備なスーパー名探偵が出てくる必要はないですね。現実に居そうな真面目な刑事の捜査を追っていくだけで、十分しっかりと推理小説を楽しむことができます。
何と言っても主役のヴィスティング警部、これがカッコイイのよ。ホント普通の特徴のない、ひとり人間であり、ただの刑事である。しかしながら意思と信条をもって一手一手を指していく。決して正義は語らず事実を追っていく様は、頼りがいのある父親の背中を見るようです。
特に人間性が垣間見えるのは、娘の元夫と対峙するシーン、これは惚れる。私も親なので家族を守る難しさは分かっているつもりです。やるべきことを淡々と進める姿勢に痺れました。
そしてこの事件の真相ですよ…腹立たしい。久しぶりに怒りが沸々と湧き上がってきました。人間は確かに罪を犯す。経済的な事情、幼い時期の不幸、人間関係の軋轢など、いくばくかは私も理解できる。しかし本作の犯人は許せない。なにを基準に生きるべきか懇々と話したいと思いました。
作者が刑事だった時代に、実際にあった事件をもとに作られた未解決事件シリーズ。まだこれまでの作品が読めていないので、挑戦したいと思います。
■きっと共感できる書評
現代のネット社会において、世間をくすぐる情報が発信されるとすぐに炎上する世の中。本人と意図しない文脈で情報が拡散され、関係者はもちろん、様々な人たちが傷ついてしまう。
ただなにも全員が自分本位のことを主張しているのではなく、それぞれの正義感と公正基準が入り交じってしまうだけ。その結果、何が正しい判断かわからなくなるんですよね。
結局は自分自身で答えを出していくしかない。派手な行動より、本作の主人公のように、ひとつひとつ誠実に向き合っていくことが近道ではないのでしょうか。
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司書さんから個人的にお借りした本。
しかし四部作の最終作って…この作者の本初めてなんですけど…。
で、結論としては、私はちょっと納得できなかったのです。
読みが足りないのかもしれません。
いや、きっとそうでしょう。
だけど、納得できないことをここにネタバレなしで書く自信がないので、これからこの本を読む予定の人は、読まないほうがいいと思います。
納得できない部分というのは、殺人事件の犯人として逮捕され、取り調べ中も裁判中も刑に服していた約17年間もずっと一貫して無実を主張してきた人が、しかも逮捕時はまだほんの青年だった彼が、自分の無罪を主張するためとはいえ、いろいろ証拠をでっち上げて刑事を誘導するかな、ということ。
証拠がでっち上げとバレた時点で「やっぱり冤罪じゃなくて、真犯人だったんじゃないか」と思われて終わりじゃない?
しかも、真犯人だったみたいだし。(ここの部分も、はっきりそうだという決め手が私には読み取れなかったから、もしかしたら読みまちがっているかもしれないけれど)
あと、周囲の人々の証言がみんな、彼が犯人であるだろうという前提で、悪いことしか言ってないけど、もともと彼女が彼のどこを好きになったのかが不明のまま、と作中で言っているにもかかわらず、不明のまま終わるのもフェアじゃない気がしました。
あと、アメリカの独立記念日のアリバイについて、ノルウェーとアメリカの時差の関係で、カレンダー的にはアリバイが成立するけれど、実は違う時間帯の出来事だったんじゃないか、と考えましたが、それは考え過ぎだったようです。
え?本当に?
ここも、問題なしという証明がなされていないので、もやもやが残ったまま。
結論としては、最後まで読んでも納得感はなかったです。ごめんね。
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警部ヴィスティング、コールドケース四部作の最終作。
あらすじ
ヴィスティングは休暇中。管内では放火された自宅後から妻の死体が発見される事件が起こっている。自宅に送られた手紙には事件番号が書いてあった。それは女性殺害事件で、犯人は元恋人で、服役・出所していた。続く2通目。同じような女性殺害事件で、これはヴィスティングが担当してものだった。2件を調べ直していると、圧力がかかったりする。その後国家犯罪捜査局(クリポス)からスティレルが加わる。二人は女性の衣服を発見したり、封筒の指紋をたどったりするがそれらは元恋人と記者の策略だった。二人は罪を逃れるため、別の人物に罪を着せようとしていたのだった。
《感想》
ヴィスティングは手堅いなー。今回の事件は、簡単に言うと犯人の悪あがきと逆恨み。また、犯人が逆恨みしていたのは当時の担当捜査官なので、ヴィスティングは巻き込まれた感じであった。それでも粘り強く対応し、着実に真相に近づくベテラン、ヴィスティング。年齢的には定年が視野に入っているところで、健康にも気遣うようになっている。捜査に対しては図太くて、ちょっとやそっとの圧力や、同僚からの凄みや妨害なんかも平気。むしろそこを怪しんで捜査を進めていく。
良作・名作が多い北欧ミステリーの中でもこのシリーズはバランスがいい。事件と私生活の。作者は元警察官だけあって、捜査の様子は地に足がついた感じ。また、登場人物も個性はあるけど、本当にいそう。ヴィスティングが歩数計を気にしているところは印象に残った。ノルウェーでも一日1万歩ってあるんだな。