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久しぶりに待ち望んでいた一冊に出会えた気がします。
中年の記者が、離婚して離れて暮らしている息子の高校の卒業式に出席。毎年、在校生以外までがわざわざ聞きにくるという、評判の校長の話を聞き、校長に興味を持ち取材を申し込む。
話は校長の生い立ち、これまでの人生を中心に進む。
昭和感があり、学歴偏重な所がやや見られますが、それが悪い方ばかりに出ておらず、一昔前の、突き出て頭の良い人達の言動は面白くためにもなり、出てくる人出てくる人、みな魅力的で、琴線に触れる所が随所にありました。
女性にはなかなか知り得ない、高校、大学の頃の男子の本音も興味深かったです。知ってもあまり共感できなかった気がしますが…、当時を思い出して、男子達の言動と照らし合わせ少し納得した、みたいなところはありました(笑)
医学部に入学した堂本(校長の若い頃の友人である先輩)が最初の英語の授業で出会った白髪教師のエピソードは、度肝を抜かれ、特に面白かったです。その教師が黒板に一心不乱に書いていたのは、英語の授業なのにスワヒリ語!その英訳をプリントで配り、その内容が強烈!!
是非読んでみて欲しいです。
そんな笑えるところがある一方、涙ぐむ所も。最近の私は、恥ずかしながら、心が氷…どころか、氷をさらにフリーズドライしてしまったような状態なのですが、そんな状態なのに激しく心を掴まれたシーンがありました。
校長が大学生の頃、病気の彼女と結ばれるシーン。その彼女の台詞。必読です!
他にも、堂本が薦めた英語の参考書の話。〈現在形とは実際は過去・現在・未来形のことです〉と書かれていて、それを実感できる例文などを挙げているわけですが、そのレベルの説明が最後のページまで続く、生涯の一冊とまで言わす参考書。何なんだその参考書、読んでみたいと、またこんなところでもいちいち楽しく引っかかる。
最後に…
登場人物の中で、個人的に一番お気に入りの登場人物、堂本さんの台詞。
「おれはいつも言い過ぎてしまう。黙っていればいいのに、つい余計なこと言ってしまう。そういう性格なんだ。でも、腹の中でそうしたほうがいいと思っていても、やっぱり黙っていたほうがいいのかな。それが本当の親切なのかな。実際は面倒事をタブーにしているだけじゃないのかな。面倒を避けるのも一つの生き方だ。そのほうが楽だし、誰も傷つかないから大半の人はそうしてる。ひょっとしたら、それが正しい生き方なのかもしれない。だって世の中ってめんどくさいじゃないか。俺も面倒なことが嫌いだ。誰がどんな間違いをしようと知ったことじゃない。でも敬二にはやっぱり言ってやろうと思う。敬二はいい奴だし、俺の数少ない仲間の一人だ。そう思うから言うんだよ。ただし、言い方には気をつける。あいつが傷つくような言い方はしない。それでどう?」
最近、上っ面だけの一見心地良い会話、態度に辟易し、疲れ切っていました。心では全然違うことを思っているのに、関係にヒビが入らないように、自分にも不利益が降りかからないように、そして、そういう言動を取れるのが素敵な大人なんだというように、外面がいい人に接していると、それをしない、できない自分がダメなのか?でも嫌なんだと葛藤していました。なので、本の中の台詞ではあるけれど、この言葉を聞けて嬉しかったです。
随所は魅力があり過ぎて、とても書ききれないですが、今、出会うべくして出会った本、神様が出会わせてくれる本というのは、本当にある物なんだなと思えた一冊でした。いやー、本当に素晴らしい一冊です。
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久しぶりに出た蓮見圭一さんの作品にワクワクしながら読んだ。
沼津の高校の校長が取材に応じて語る彼の半生。
壮絶な生い立ちとその後の学校生活、そして生涯忘れえぬ恋が生き生きと語られるが、正直、最初の卒業式のエピソードが一番良かったかな〜。あとは昭和のおじさんの回顧録といった印象。同じような年齢の人には古き良き時代的なしみじみとした良さがあるのだろうけど、昭和のおばさんにはさほど響かなかった。
琴線に触れるであろう言葉もちらほら出てくるけど、みなどこかの本の言葉や誰かの名言だったりで新鮮味もないし。
ちょっと期待外れでした。
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記者をしている阿久津が、離婚して会うことも少ない息子の高校の卒業式に行く。
そこで出会った高校の校長先生・真壁純のスピーチに聞き惚れて、話をしてみたいと…。
それほどまでに魅了してしまう先生の人生とは…。
裕福な家庭で育ったわけではなく、両親を知らずに北海道の父方の祖母の家から中学の途中で沼津の母方の実家へという具合に祖母に育てられたようなもので、金銭面では苦労があった。
だが彼の周りにはいつも素晴らしい友達がいた。
その出会いと一緒に過ごした日々は、とても尊いもので何十年と経っても忘れることはないのだろう。
ゆっくりと心の中にことばが沁み込んでいくような小説である。
文中で病気の明子に向けて真壁の同級生の池田が朗読した詩が心に響いた。
室生犀星の『五月』
悲しめるもののために
みどりかがやく
くるしみ生きむとするもののために
ああ みどりは輝く
静かに浸透していくものの正体は何だろう…。
やはり美しさというのが当てはまる人生だからだろうか。
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avec totoさんと湖永さんのレビューで読みたくなった本です。素敵なレビューをありがとうございます。
初読みの作家さんです。
トップ屋の阿久津哲也45歳は事情があって妻の仁美と息子の哲が小学校5年生の時に別れました。
阿久津は哲の高校の卒業式に出席することになり、初めて別れた家族と再会し哲の高校の校長の真壁純のスピーチを聴きます。
真壁のスピーチには人を引き付ける力があり、阿久津もスピーチが非常に気に入って、真壁に取材をして話を聴くことになります。
真壁は1967年生まれで東京の大田区で生まれています。今は妻と小学生の娘がいます。
阿久津はなぜ東京生まれの真壁が北海道の中学を出て、沼津の高校に入ったのか不思議に思っていました。
大学は東京です。
そして真壁の話を聴くと真壁は生まれたときから両親のいない子どもだったことがわかります。
以下、軽くネタバレしているので、これから読まれる方はお気をつけください。
真壁は両親が二人一緒に交通事故で亡くなった日に帝王切開で一人、生き残った子どもだったのです。
真壁は父方の祖母の家に引き取られ北海道の伯父の家で従兄とともに育てられました。
そして、真壁は中学で、東京から転校してきた美しい少女水島明子と出会います。
真壁は明子を好きになりますが、言い出せず明子の方から誘ってデートの約束を中学二年のクリスマスイブにします。しかしデートをした後すぐに祖母が亡くなり伯父に家を出て母方の祖母のいる沼津の叔母の家に行くように言われます。
そして、沼津で、真壁と明子の文通が始まります。
明子の明るくしっかりした性格と真壁のとても純粋なところが人を惹きつける恋だと思いました。
明子が他の男子高校生と付き合っているのではないかと気が気ではない真壁。真壁の方も彼女ができてしまいます。
でも、大学に入学してから北海道で真壁は明子と6年の時を経て再会することができます。
そして、真壁は明子の本当の気持ちを知ることができます。
最後は大きな悲しみがありますが、ハッピーエンドであると私は思いました。
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読んでいて真壁校長の話は自分自身の高校、大学時代を思い返してくれた。
因みに本の中に出てくる高校は県内でも屈指の進学校である沼津H校ですね。流石に今は変わりましたが50年前までは下駄で登校したりバイク通学もできたりと校風は自由であり変わった人が多かったと思います。
戦前からあり一中と呼ばれ多くの著名人を輩出した高校です。余談まで
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6年ぶりに再会した『夢の人』は、まるで別人のようになっていた。
目の前に広がると人生にもっと興味を持ちなさい。
人々、物事、文学、音楽
この世界は豊かで胸を躍らせる宝もの、
美しい魂の持ち主、
興味深い人々に満ちている。
自分のことは、忘れなさい。
この言葉の意味を噛み締めている。
人生の中で一度でも、大事だと思える瞬間、
忘れがたい言葉を聞けること、
それだけで十分なのかもしれない。
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読み終わった。
悪くは無い。
校長の一人語りでも
良かったんじゃない?
まあ、そしたら、さいごのところがうまくいかないかぁ。
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ライターが話し上手な校長先生に興味を持ち、物語は展開します。それがとても自然な雰囲気で、没頭します。校長先生が出会う人々がそれぞれ味があり、時に大事な言葉を残します。今から変われの件とか、きみがいまどこにいようとそこが出口だ。は胸に残り、考えさせられました。美しき人生にぴったりなエピソードが続き、胸が踊ります。最愛の人が最後に妻にと願って読んでいましたが、残念な結果に。泣けましたが、リアルさを感じます。大切な人を思い出す良い本です。大好き度❤️❤️❤️
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ある校長先生の人生を振り返りながら物語が進んでいく。回顧録なんだけど、現代の視点も混ざり、続きが気になる。儚くて辛くて温かい、色々な気持ちにさせられる小説。What is Life…
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長崎でがせねたをつかまされたトップ屋が主人公かと思ったら違った。
離婚して別居している息子の卒業式でスピーチをしていた校長先生が主人公だった。
東京に戻って改めて取材を申し込み、そこで校長先生が話してくれた、
中学生時代から大学生時代にかけての純愛物語、これがこの小説の核だった。
いわゆる胸キュン、読んでいて切なくなる、雪の北海道での若い男女の淡い恋。
やがて彼は沼津に引っ越す。文通。そして思わぬ形での再会。そしてそして、、
こんな内容を取材で話すかなあ、などとどこかで冷めた目で見る自分もいたが、
それはそれ。いいおはなしだった。
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近年最高に心が震えた作品でした。ちょっと宮本輝の語りに近いような気もします。心の底流に思いやりが感じられる登場人物たちの言動の一つ一つが心に響きました。純愛と友情の物語です。