投稿元:
レビューを見る
▼四年間というのは、それなりの期間で、この時間の中で顕著なのは、コロナ前とコロナ後で、生活のスタイルが一変しているところだと思う。
(中略)
もう一つ、はっきりしているのは、五十代の半ばから後半にかけての記録となったということ。これは、自分にとってのメモとして、それなりにおもしろかった。というのは、やっぱり五十代は四十代とすごく違う、ことに後半はそれがはっきりわかる。その感覚を書いているので、こればっかりは、この年齢じゃないと書けないことではないかと思う。(pp.268-269、「おわりに」)
中島京子の本はほとんど読んでいるはずが、久しぶりにチェックすると、未読本があった!そのうちの一冊を図書館で借りてくる。
ちょうど、コロナ禍の前後4年間の話が収められていて、そういう点でも、また少し年上の人の50代に入ってからの話という点でも、おもしろかった。
▼昔の小説や随筆を読んでいると、「彼女は五十がらみの老婆」とか、書いてある。いやいやいや。五十歳は老婆ではないでしょう、と思うけれども、もちろん、寿命が延びて、常識が変わったせいなのだ。
(中略)
…「老」になる年齢が先延ばしされるとなると、「中年」が間延びするような感じになるのだろうか。
NHKが二〇一五年に行った「中年は何歳から何歳まで?」という調査の結果は、回答結果を平均すると「四十歳から五十五・六歳まで」と、なったのだという。昔なら、三十過ぎれば、あるいは、三十五歳くらいから、「中年」枠だっただろう。五歳くらいずつ、感覚が以前と変わった感じ? 自分の年から七歳引いたものが、気分的にぴったりくるという話も聞いたことがある。(pp.257-259、「七十歳は、老婆か否か? グレイヘア問題、その他」)
「中年」て何歳やったっけ?と、私も思うことがあった。中島が書くように、私の認識でも「三十代は中年枠」だったが、読んだり、話したりする中で、(え?中年てなんぼ?)と思うことがあった。
辞書を引いてみる。(ドラマ「舟を編む」を見ていて、同居人が最近続けざまに買ってきた新しい辞書である。)
▼ちゅうねん【中年】①青年と老年との中間の年頃。四〇歳前後の頃。壮年。
広辞苑(第七版)2018年刊
▼ちゅうねん【中年】人を年齢によって分けた区分の一つ。五十代から六十代の前期にかけての年。
新明解国語辞典(第八版)2020年刊
えっ、すでに語釈にズレがある。「四〇歳前後」と「五十代から六十代の前期」って、重なってさえいない!
では、うちにある古い辞書を引いてみる。
▼ちゅうねん【中年】①青年と老年との中間の年頃。四〇歳前後の働き盛りの頃。壮年。
広辞苑(第二版)1969年刊
▼ちゅうねん【中年】青年と老年の中間。四十歳前後。
岩波国語辞典(第三版)1979年刊
どちらも岩波だからか、中年は「四十歳前後」である。前後、というからには「前」をとると三十代(の後半?)も入るだろう。こうなると、他の辞書も引いてみたい。新しいのも古いのも。いったい「中年」はどう定義されているのか、語釈の変化はあるのか。
ちなみに、広辞苑(第二版)は、私が���まれたときに、両親が「記念に」購入したもので、後ろの見返しに「誕生を記念して」と父と母がサインをしている。第二版の第一刷発行日は、私の誕生日の一週間ほど後で、両親が購入したのはさらにその一週間ほど後らしい。
(2024年4月22日 了)