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ポジティブ思考が跳梁跋扈する今の社会において、本書はその潮流に逆らって、クソみたいな「キャッキャ、うふふ」風土に風穴を開けてくれるだろう。
落ち込む時は徹底的に落ち込む─
人生、万事上手くいくわけではない。そんなことありえない。人生には必ず「良いこと」と「悪いこと」の二つ糸が織り交ぜられ、赤黒い糸を紡いでいる。人生という無色の糸の中に幸不幸という名の赤黒い糸が混じっているのだ。その糸を解きほぐして分解し、端から端まで一インチきざみに明るみへさらけだして見せるのが、「絶望名言」の任務なのである。
失恋したときは失恋ソングを聴いて徹底して落ち込む。失恋している自分に酔いしれるくらい落ち込めることができれば及第点だ。
失恋に限らない。試験に落ちたとき、仕事で失敗したとき、何かアンコントローラブルな事象が起きたときには徹底して落ち込むのが良い。無理に自分を奮起させる必要はない。しなやかさのない草木が無理に強風に立ち向かえばたちまち折れてしまう。受け止めるな、受け流せ。
徹底して落ち込みこれ以上ないくらいに落ち込んだら、あとはゆっくり浮上するだけだ。大丈夫。そのときにはこれまでは見えなかった微かな灯火が、それこそ本当に消え入ってしまうような光が、見えているはずだ。その光を目指してゆっくり、ゆっくり浮き上がって行けばいい。
盲目たる楽観主義者よ。本書を読み絶望に戦慄くが良い。それはきっと諸君らの良薬となるだろう。毒を制すには毒しかないのだ。
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『#絶望名言』
ほぼ日書評 Day695
「将来に向かって歩くことはぼくにはできません。将来に向かってつまずくこと、これはできます。
いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」
『変身』などで知られる文豪カフカによる、婚約者への手紙の一節だそうだ。
40歳で亡くなったカフカは、生涯3度婚約して、いずれも婚約破棄に至ったとのことだが、
この手紙を受け取った側の気持ちはいかばかりかとも思うが、この感性無くしては、あれら名作の数々が生まれなかったのかとも思わされる。
全編を通じて、文豪達のこうした「ネガティブな」名言が繰り広げられるのだが、これは、自身が難病を患って、13年間ベッドから離れられない生活を送った経験を持つ著者が、明るい言葉、希望に満ちた言葉だけでは生きられない、苦しい時には苦しみを和らげる言葉が必要という信念に基づいて拾い集めたもの。
終盤で、逆境はあったほうがいいのかと言う問いに対し、なくて済むなら、無い方が良いと結論づけている。
ただそうした経験がないと、本当にそうした境遇に陥った人の気持ちを想像することは困難だ。
そういった意味で、本書に取り上げられた珠玉の文学作品をひもとく行為を通じて、いわばそうした状況を疑似体験できるということが、文学が人の心を豊かにすると言われる所以なのだろう。
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きっと多くの人の心に響く本。
たしかに、太宰治の著書に惹かれたこともあるし、芥川竜之介のいくつかの言葉を覚えていました。弱っているときに勝手に心に染み込んだのでしょう。
カフカ、ドフトエフスキー、ゲーテの言葉が心地よいときは、自分をケアします。
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NHKのラジオ深夜便から。絶望の先にある別世界。有名作家のフレーズから絶望の中にある言葉を探る文学ヲタ向けの一冊。
思いのほか有用な言葉が多い。
カフカ、ドフトエフスキー、ゲーテ、太宰治、芥川龍之介、シェークスピア、中島敦、ベートーヴェン、向田邦子、川端康成、ゴッホ、宮沢賢治。
太宰治と中島敦と松本清張が同い年というのが何より驚き。
絶望とドン底はまた別物。人生は奥深い。再読したい。
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絶望には絶望の流儀があるのだな、と納得。
自分の知らない世界を知らない状態で非難する事はやめようと思った。
太宰治、芥川龍之介はすぐにでも何か一冊読みたくなった。
カフカ、ドストエフスキー、シェークスピアは、いつかの絶望の為に一冊ずつ、家に置いておくのも良いかもしれない。
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最初の方はまだ大丈夫でしたが後半につれて読むのが苦痛で投げ出したいほどでした。
自分の嗜好としては、論理的かつ資料を丁寧に引用した事実の羅列を好みます。
なので、この本は終始、頭木さんが思った視点で著名人の名言が語られるので読みながら自分に向いてないなと感じました。
名言に対しての解釈にしても、自分が想定していたものでなかったり、頭木さんのコメントで腑に落ちなかったり。ご自身の闘病や苦しかった時期を通してのコメントの場合はなるほど、と思うこともありましたが、それよりも多かったのが推測の根拠が弱く、雲を掴むようなふわふわしたコメントに不満を持つことでした。
文豪に関しては、『文豪はみんな、うつ』(幻冬舎文庫)の方が面白かったです。
ゴッホについては、原田マハさんの『たゆたえども沈まず』や『リボルバー』の方が面白く、またゴッホへの愛を作者から感じます。
ゴッホの回で思いついたのは、ここで取り上げている人たちに対して頭木さんの想いを感じないというところでした。
広く取り上げたことで浅くなり、一人一人の著名人(カフカは除くかもしれません)を深掘りし研究し尽くすというより、自分の考えに沿うものや、苦痛を和らげてくれる方向性の思考ありきで名言を取り扱っているように思えて、反発心を抱くようにもなりました。
ただ、最後のプロデューサーの方のあとがきを読んで、頭木さんというよりこの方の企画によるものとわかり、このプロデューサーの狙いが私と気が合わないということがわかりました。
私は、ポジティブでメンタルが強く、絶望しない人間というわけではありません。
希死念慮を抱き続け、若いころはメンタルを病みました。社会人経験を積んで、環境を整え、安定しても希死念慮がホルモンバランスによって消えない時に、ゴッホのことを思い、ピストルがあったら自殺してたなと思ってることに気付いた時にこのままではいけないと、超低量ピルを服用し始めました。
なので、この本の対象としては遠からずだとは思うのですが、この本は、根拠が薄い、響かない、と感じたのが正直なところです。
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NHKラジオの文字起こし版。こんな、なかなかアイデア勝ちなラジオ番組があったんだなと思わせてくれる、深夜ラジオらしい内容。苦しいとき、絶望した時に、その救いとなるのは必ずしも美辞麗句、ポジティブなメッセージではなく、ある種の絶望を語る、真の言葉ではないだろうか。
太宰治は、どうしようもないくらい絶望して、自殺をなん度も登場させる。一方で、正面から三島由紀夫に嫌いな作家と言わしめる。ただ、ただ、美しい言葉は、マッチョの三島由紀夫に言わせると筋トレと苦労が足りないということではあるのでけれど、これだけ美しい言葉を紡ぎ出す作家の言葉は、絶望に接しながらも何かを託したような細さを感じる。それを感じながら、一方でこのラジオは、聞き流しでは頭に入らない気がしてしょうがない。
本という媒体で、文字を追っていくだけでもちゃんと読まないとわからなくなるのに、ラジオでこれをやるってのは結構すごいなと。
カフカ、シェークスピアなど名作家が並ぶが、ある意味での作品の解釈やポイントも学べる。
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絶望は自分の地面を踏み締めるうえで有効な現実把握だと考えている
この本で紹介されている名言の多くも、自身の地面を把握する様について繊細な感覚から紡がれた言葉である、と私は解釈
その中で一際印象に残ったのはシェイクスピアがリア王で書いた台詞
「どん底まで落ちたと言えるうちは、まだ本当にどん底ではない。」
底と感じているうちはまだまだだと甘さを思い知った
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著名な方の、ネガティブな文書。みな、バラ色の人生ではなく、様々な出会うことに、考え、悩み、諦め、というルーチンが繰り広げられ、それを解説してくれる、といういい本でした。