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黒いモヤモヤと闘い続けた母が失踪し「黒屋敷に行きなさい」という手紙が残された。冬乃ひなげしは母の手紙に従いそこを訪れる。そこには黒ずくめの鏡見夜狐がいた。
綾里けいし特有の残酷で残忍で救いのない展開、それでいてどこか美しさを感じる描写は相変わらずだ。異能もののバッドエンドやグロいものに抵抗がない人には合っている作品だと思う。
メインキャラの1人鏡見夜狐、時に少年のように無邪気で時に青年のように無関心でで時に老人のように達観した独特で毒々しい存在。現段階では彼がどういう存在なのかは明らかにされていないが、謎は謎のままでいいのだろうかと感じさせる人物だ。
もう1人のメインキャラの冬乃ひなげし、無自覚な聖なる存在。個人的にはこの作品の壊し屋の彼女を好きになれなかった。かわいらしい見た目、愛嬌のある性格、いざという時の度胸、守ってくれる唯一無二の存在。共通点がなさ過ぎた。
各話の流れは黒屋敷に依頼が来る、それを鏡見が解決するだが、そこにひなげしがいるか、いないかで展開が変わる。ノーマルエンドかバッドエンドかくらいの差がある。ひなげしがいると物語の黒い靄がかかった舞台が強制的に明るく照らされる印象だが私はその無理矢理感が好きではなかった。
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私が死んだら、<黒屋敷>へ行きなさい。
姿を消した母の言葉に従って、冬乃ひなげしは黒ずくめの男・鏡見夜狐と出会う。
黒ずくめの謎の探偵・鏡見と、その助手になったひなげしが、冷蔵庫の中で育つ胎児、落下する三つの首の幻など、恐ろしい怪異を解決していく幻想連作ミステリ。
初読の作家さんですが、短い文章を連ねていくような書き方が特徴的で、若干詩寄りにも感じます。
そういった文章の雰囲気もあるのかもしれませんが、悪夢のような怪異はどれもとても幻想的で美しく、幸せな解決はしないのに何だか魅了されたような気分になりました。
それぞれの事件には、テーマとなるような有名近代文学や詩が設定されていて、それを知っていると尚楽しめるかなと思います。
一例をあげると、冷蔵庫の中で育つ胎児の話『胎児よ、胎児よ』には、夢野久作の『ドグラ・マグラ』。三っつの首が落ちてくる話はヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』など。
こんな文学的・幻想的な雰囲気なのに、主人公のひなげしが直情的で、猪突猛進物理アタッカーぶりを発揮してくれるので笑ってしまいます。怪しげで美麗な怪奇譚に合っているのかは読んでるうちによく分からなくなってきますが、真っすぐでとってもかわいい。
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「胎児よ、胎児よ」
冷蔵庫の中に眠る。
大切な命を奪った後に、何故平然とした様子で次を考えることが出来たのだろうか。
「少女神」
ねじ曲がった真実。
過去を改竄して記憶を塗り替えなければ、受け入れることすら出来なかったのだろ。
「みっつの首」
何度も落ちてくる。
勘違いしたまま生涯を終えていればいいが、最期の瞬間に気付いたら最悪だろうな。
「サナギの母」
蝶となったのは誰。
閉ざされた空間で行われている日常は、段々狂っていったとしても気付かないだろ。
「鋼の羊」
消えた探偵はどこ。
最高な夢を見続けることが出来たとしても、そこにあるのは全て幻でしかないよな。
「燦燦と晴れ」
見ないし聞かない。
目の前で自分の子供に起きていることを無視し続けれるなんて、残酷過ぎるだろう。
「つまりすべてはどういうことであったのか?」
対価を払った時に。
釣り合わさせるためには仕方なかったとはいえ、こんな話しを信じたくないだろう。