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自分の死と向き合うとき、身の回りの世界が徐々に消えていき、最後は自分のことしか考えられないことが丁寧に描かれている。 自分の死に直面するとき、水の中に潜っていくときのように、だんだんと周りの騒音が聞こえなくなり、世の中の動きなどどうでもよくなるのだ。 話しの中のテロや映像の謎などどうでもよい、誰かが解決してくれるだろう。また自分と向き合うことなどもどうでもよく、死ぬまでの日々の痛みをいかにやりすごすことしか関心がなくなる。 これは綺麗事ではない、とても謙虚な小説だ。
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作家ミシェル・ウエルベックの最新刊。時は2027年、大統領選挙を間近に控えるフランスを舞台に、経済財務大臣補佐官のポールを通して同国および世界の抱える病理と苦悩を見つめた大作。
相次ぐ国際テロ事件、選挙に向けた候補者応援活動、そしてパラレルに進行するポールと彼を取り巻く親族の家庭問題が、筆者の皮肉やジョーク、近現代の哲学思想をふんだんに交えて展開される。
ポピュリズムに支配される政治ゲーム、晩婚化と少子高齢化、過酷な介護の現場、メディアによる暴露など日本とも無関係ではないトピックに彩られながら、救われたいと願いつつ運命に翻弄される現代人を浮き彫りにする。滅び行く世界の中で、ポールと妻プリュダンスが行き着いた風景とは。サスペンスであり、恋愛小説であり、はたまた医療ドキュメンタリーであり。多彩な側面を示しながら、物語は静かな余韻を残して締めくくられる。
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滅ぼすとはそういうことだったのかと、読み進めるにつれて、悲しい気持ちになった。オーレリアンは自殺し、ポールが末期の癌になるとは。喉頭や口腔癌になると、舌を切除しなければならないこともあるとは、知らなかった。
プリュダンスと仲良しに戻っていて、本当に良かったと思った。死期を悟った後も冷静で、手術を拒み、点滴の際は読書をして過ごしたポール。自分だったらどうしていただろうか。
所々に散りばめられたウエルベックのユーモアにはクスッとさせられた。デュボンとデュポンは特にお気に入りだ(笑)。
政治や歴史、文学に恋愛、扱う内容をフランスらしいと言って良いかは定かではないけれどそのように感じ、読み応えのある好みの本だった。
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謎の組織によるテロ行為はエスカレートし遂に犠牲者が出る。
その煽りを受けながら大統領選は終結する。
家族内での不幸。もっとも若い息子が死に、体の不自由な父親は生き延びる。
主人公は妻との関係を修復するも過酷な運命が待ち受けていた。
上巻から物語の重要な要素と思われていたテロとの戦いや大統領選は尻すぼみに終わり、家族の話、そして主人公個人の生死をめぐる話へと収束していく。スケールの縮小。
弟オーレリアンはともかく、妹セシルや義妹インディーは最後まで活躍するかと思ったが。イラストまで用いたテロ組織の正体は投げっぱなし。
大統領選もあれだけ騒いでおいていざ終わればあっけない。その終わり方も味気ない。
ウエルベック作品の割には強烈な毒や怒りはない。諦念と悲哀のトーンが全編に漂っている。世界は混乱し、人は死に、運命には抗えない。
「自分が耐えられなかったのは、無常そのものであると、彼は不安な気持ちで気づいた。無常とは、この世のものは何であれ、いつか終わるという考えである。彼が耐えられなかったもの、それは生きることの本質的条件のひとつにほかならなかった」。
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もはや一種の黙示録とも呼べる文学作品を作り続けているフランスの鬼才、ミシェル・ウエルベックによる新著であり、過去の作品と比べても単行本上下巻という大著。
個人的に新著が出たら、迷わずに買うことを決めている現代作家の一人がウエルベックなのだが、迷わずに買ったことを全く後悔しないほど完成度高く魅惑的な作品であった。
ウエルベックの作品は登場するテーマや意匠に強い共通性がある。デビュー当初は、カルト宗教やセックス/性の問題に始まり、ここ10年ほどは極めてアクチュアルな移民問題やテロリズム、資本主義の限界など政治・経済学的な側面が強まっている。本書はまさにウエルベックを構成するであろう様々なテーマ・意匠が総動員されることで、作家自らの代表作といって過言ではない文学世界が構築されている。
正直、圧倒的な物語の面白さはありつつも、その陰惨たるテーマ・意匠の連続によって読み手の体力を著しく奪う書物に仕上がっている。そのような辛さを味わってでもなお先を読み進めたいという中毒性を与えてくれる作品というのは非常にレアであり、その黙示録的な現代社会の救いのなさの前でただ佇むことしか私にはできない。
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上巻はのろのろ読みだったけど、下巻はあっという間に読めた。
上巻始めの感じはハッキングなどの技術による社会崩壊の話かと思ったら全然違った。もちろん世の中の在り方の事も含まれているけど、もっと大きな生死についての話だった。
意外な展開で、帯に書かれているように「読み出したら止まらない」
フランスらしさがふんだんに出ていて良い。
ベストセラーに納得。
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巧妙なフェイク動画の謎は、船を沈めたテロリストの正体は、正五角形と五芒星の意味は、ポールの父親のメモの真意は…すべての伏線は一体どこに行ってしまったのか?
下巻の半ば以降は、ポールが患った病を通して生の意味を問う、ひたすらそんな類の描写に尽きることに、いささか面喰らい、そして肩を透かされた思い。
性描写がここまで必要なのかどうかも、私には分からない。
惹句にあるように、リーダビリティが高いことは認めるが、カタルシスを得ることはなかった。
「フリードリヒ二世は愛犬のそばに埋葬されることを望んでいた。邪悪な種である人間にかこまれて眠らなくていいように。」
「森は、生命の本質であり、闘いも痛みも知らない、穏やかな生命である。永遠を思い起こさせることはなく、それは問題ではなかったが、我を忘れてじっと眺めていると、死はそれほど重要ではないと思われてくるのだった。」
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「何が何でも物語作品が必要である。自分以外の誰かの人生が語られていなければならない」
これは物語終盤、主人公がある危機に陥るが、「読書」によって一時的に絶望から救われる場面。
あまりにも絶望的?な本筋とはすこし離れるが、
ウエルベックの読書に対するポジティブな考え方が集約されているような気もして、無性に嬉しくなった。
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上よりサクサク読めた。大きなストーリーではなく、個人の物語と集約されていくのは面白かった。テロの話とか全然解決されてないけど人生そういうもんだよね
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ミステリー系かと思っていたら全然違った。
人種差別、性差別、階級思想などが見え隠れする表現に共感できず、がっかり。
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著者のウェルベックは「鬼才」と呼ばれることもあるようで、個人的には物語の主題、伝えたかったことが読み切れなかったように感じた。50歳前くらいの主人公ポールの周囲の出来事、それらを通じて悩んだり、自分自身を振り返ったり、妻のプリュダンスや父をはじめ、人との関係を考えていく。宗教や、輪廻転生の話題も上がるが、それも主題を構成する要素の一つでしかないよう。
上巻の冒頭に起きたサイバーテロは、下巻の途中では多くの犠牲者が出る事件も。治安総局DGSIは、ポールの父が倒れる前に作成した資料から捜査を続け、グループや目的は突き止められないまでも、次の事件を予測することに成功。そこから先は触れられず。本筋ではないと分かってはいたが、ちょっと残念。
以前に興味を持ったが読んでない「地図と領土」はウェルベックの作だと知った。他には「素粒子」が有名らしい。機会があれば読んでみたい。
なお、上下巻のカバー画に惹かれたことも、この本を手に取った理由だが、これは日本版オリジナルのよう。引地渉さんというイラストレーターの作。
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上巻で一部暗示された死と性については考えさせられたが、壮大に煽った政治、テロについては全くほったらかし
上巻は楽しめたが期待はずれ、上巻と方向が違いすぎる
うちにばかり向かうのなら、設定と主人公、父親の職業は別にした方がよいのでは
あと宣伝文句は詐欺っぽい
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テロや政治の大きな物語を背景としつつ、フォーカスされるのは、一人の人間がどのように己の死に向き合うかということ。
文明の滅びのイメージと人間の滅び、自然の巡りなどを相互に響かせながら物語は進んでいく。
伏線では?と勘ぐりたくなるような匂わせが頻発するが、それらの記述は解決されず、物語の背景で滞留し続ける。
その解決されない問題に取り巻かれながら、もやっと曖昧に、でも確実に死に向かって歩んでいく流れが、私達の現実の肌触りに似ているような気がして震える。