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大国のハイブリッドストラグルから1年後の続編。
中国、アメリカ、ヨーロッパ、ウクライナなど、
各国や地域の専門家の講演やクロストークの書き起こしがベースとなっている一冊。
各国のマニアックな話と地球儀的な俯瞰の議論のバランスが面白い。
中川コージ氏の、
中国一帯一路構想の拡がりの象徴として、サウジアラビア、アルゼンチン、を例示する部分など、
いきなり聞くと中国と関係薄い国々だが、
実例を踏まえて一帯一路の拡張でることを分かりやすく説明している。
そして、当書にも書かれているとおり、
このイベント(書籍はイベントの発言書き起こし)の直後に、
中国によってイランとサウジアラビアが国交回復しており、
中川コージ氏の議論は予言であったかのようである。
マニアックさの議論の解像度の高さも素晴らしい。
クロストークセッション内で話題となった、
ハイブリッドな外交、その中でも裏の外交を支える、
フィクサーの存在は興味深かった。
各国は元軍人などがフィクサーとして暗躍するケースがあるようだが、
日本はそういった存在は皆無らしい。
本書の最後に書かれているとおり、
救国のために何かすることは難しい。
近所の町内会を変えるだけでも大変。
それでも、国を変えることを政治家や官僚に丸投げせず、
したたかな個人としてあらゆる立場の人間が考え、動くことが、
文明国として生きていく自信につながる。
したたかな個人になるための知恵の一つを授けてくれるのが、本書だと思う。