投稿元:
レビューを見る
大学に入学した時に大学の図書館で初めて雑誌「数学セミナー」を手に取った。図書館に行くたびにながめていたのだけど、その記事のほとんどがわからなかった。
その当時も専門的な数学の内容から少し外れた、この本のような記事もあり、それだけかいつまんで読んでいた。
大学数学を学んで、少しずつわかる記事も出てきて、卒業後は定期購読をしていた時期もあった。
今でも時々手に取る雑誌。
この本は、数学に関わる、でも数学を本職としていない人々のインタビューを集めたもの。
数学をするとは数学を考えることと思ってしまいがちだけど、数学をするとは数学を使うことでもある。そして、断然使う側の人が多い。
どの章も、その道のプロの話なので、完全に内容が分かったわけではないけれど、こんなに数学が様々な場面で、しかも高度な内容が活きていることに驚いた。まだ、2巻、3巻もある。
ゆっくりその人の数学への思いや、仕事への思いを楽しむ。
「昭和のくらし博物館」「関所からくり美術館」には行ってみたい。
投稿元:
レビューを見る
前書きにあるとおり、数式はほとんど出てこないし、数学とタイトルにあるものの、あまり関係なさそうな話も(^^)
いろんなクリエイターや職業の方たちの仕事ぶりや考え方などが幅広く紹介されていて、数学云々は気にせず楽しめるインタビュー集になっている。
幅広いゆえに面白い話もつまらない話もあるので⭐︎3にしました。
投稿元:
レビューを見る
1980
【目次】
1. デザインと数学の架け橋を/野老朝雄氏にきく
数学から生まれたデザイン
模様が〝つながる〞
勘の赴くままに
数学は誰のものでもない
架け橋を作りたい
2. 天地のない絵が描きたい/高野文子氏にきく
きっかけは伏見康治
線対称は自分語りをしない
仕組みを描きたい
3. 「数学をすることの意味」を求め続けて/青柳碧人氏にきく
クイズ問題になぜか数学者がよく登場する
『浜村渚の計算ノート』誕生
なぜ数学小説が書かれるのか
数学者を怪人に仕立て上げたい
数学好きにはミステリ好きが多い
数学の「アイドルグループ」を作ろう!
数学に感動している人たちがさまざまな分野にいる
4. からくりと3進法と漸化式/岩原宏志氏にきく
驚きの作品群
楽しみ方を提示するためのからくり
ドロップアウトして出合った世界
5. 数式はいかに組まれるか/株式会社精興社 数式組版チームにきく
数式組版の流れ
『数セミ』組版の歴史
数式が組める技術とやりがい
6. 数学を楽しく考えてくれるだけで/松野陽一郎氏にきく
大学院を出て教員に
生徒のつまずきに耳を澄ませたい
問題は解けなくてもいい
基礎の重要性
7. 気象の理論と観測の狭間にある数理/荒木健太郎氏にきく
数学が好きだったから気象に興味を持った
天気予報における方程式
関東地方の大雪と台風は予測が難しい
天気予報に携わるために数学はどの程度必要?
気象学の啓蒙活動
こんな身近なところに数学が
8. 折り紙の窓から見る数学/前川淳氏にきく
折り紙設計と幾何
折り紙とのこれまで
「新しい博物学」としての折り紙
数学と折り紙の永遠
9. 自動生成で広がる世界/藍圭介氏にきく
シンセサイザーに興味を持った学生時代
竹内関数で音楽生成
大学で研究するために大学職員に
大学での研究
研究にも仕事にも数学が欠かせなくなった
ビッグタイトルのゲームは数学の塊
AIはプログラムを自動生成するのか
ゲーム業界は数学の才能を求めている
数学が好きな人が美しい数式を見て「美しい」と感じたときに反応する脳の部分は、芸術家が良い絵 画を見て感動するのと同じ部分だと聞いたことがあります。そういう意味でも、数学は人間の感覚に訴えかける刺激なんだと思います。 数学は、「新しい角度からものを見る」ということを教えてくれて、それが人生を開くヒントになることもあると思います。だから、数学を好きでいることはすごく良いことなのだと伝えたいですし、僕は数学好きの人たちを尊敬しています。数学の本を読んでいて、これが分かればもっと面白いのでは、 ���思うことがたくさんあります。 また、数学の予想に取り組む情熱、自分の思い通りにならないもどかしさ、正しそうなものに反例が 見つかったときの感覚など、数学を研究する営みは本当に感動します。あんまり役に立たないじゃない ですか(笑)。でも、そういうことこそ称えたいのです。読者のみなさんには、数学を専門にしていない 人たちの中にも、数学に感動している人がいることを知っておいて欲しいです。
青柳碧人あおやぎ・あいと
1980年、千葉県生まれ。早稲田大学教育学部を卒業後、学習塾にて学習指導をする傍ら小説を執筆し、『浜村渚の計算ノート』で第3回「講談社Birth」小説部門を受賞。以降、小説家として活躍する.最新刊は『怪談青柳屋敷』(双葉文庫)。
私はほとんどインプットがありません。数学については、 五弁の花を見て「奇数だな」と思う、そういうレベルなんで すよ。BUILDVOIDなども、あとからWikipediaを見て、 こういうかたちがあるんだと知ったりしています。数学的な世界はもちろん大好きなのですが、学問としての数学に入っ た瞬間に、自分が遠くへ飛ばされちゃったような気がして⋯。 六十歳くらいになったら、数学の勉強を始めようかなとは思 っていますが、いまは勘の赴くままに作っています。
野老朝雄ところ・あさお
美術家。1969年、東京生まれ。幼少時より建築を学び、江頭慎に師事。2001年9月11日より「つなげること」をテーマに紋様の制作を始め、美術・建築・デザインなど、分野の境界を跨ぐ活動を続ける。単純な幾何学原理に基づいた定規やコンパスで再現可能な紋と紋様の制作や、同様の原理を応用した立体物の設計/制作も行なっている。主な作品に東京2020オリンピック・パラリンピックエンブレム、大名古屋ビルヂング下層部ガラスパターン、TOKOLO PATTERNMAGNETなど。2016年より東京大学工学部非常勤講師、2018年より東京大学教養学部非常勤講師、2022年より國立臺灣師範大學(TAIPEI,TAIWAN)客座教授を務める。
授業では十年くらい前から「数学をやることによって理知と優しさを身につけることができると思う」と言っています。数学を一所懸命やっているひとを見ていると、論理的・理性的なのは当たり前で すが、同時になんとなく優しさが感じられる。ひとそれぞれに都合があるとか、考え方がいろいろであるとか、人間は理屈通りに動かないとか、そういうことがわかっているひとが多いような気がします。 むかし森毅先生が「数学者はかえって矛盾に強い、公理系の違いだと思って納得できる」といったこと をおっしゃっていたのと似ていると思います。
科学哲学に興味があり、ちゃんと物理を勉強したいと思って理学部物理学科に入ったのです。なので、 まうな数学はいちおう真面目にやりましたが、数学や理論物理というのは天賦の才能に恵まれた人がやるものだと思い込んでいて、研究者になろうとは考えていませんでした。」 本当にできるひとがいますよね。いま考えると、自分の才能の有無などにとらわれずに、好きなことをやっていてもよかったと思わないでもありません。 大学卒業後はまともな就職もせずに、本の印税で長期の自転車旅行に行ったり、一年くらいふらふらしていました。今の学生さんの厳しい状況に比べると、申し訳ない気がします。
数学のいちばんの魅力は、公平なところだと思っています。まずは、人に対して公平です。格言「幾何学に王道なし」のとおりです。そして、これとは違う意味もある。それは、どの定理もそれぞれに尊いということです。たとえば、ABC予想とピタゴラスの定理。例えばABC予想が理解できる人は数人いるかいないかだそうですが、ピタゴラスの定理は、中学生でも証明を思いつく。しかしその違いは、一流のシェフがつくったごちそうと、ままごととの違いとは別物です。どちらの定理も偉大です。その定理がある人のなかで腑に落ちた、「わかった」という感覚は、基本的に同じなので はないでしょうか。
数学に関して、二つ重要だと思うことがあります。一つは、わかったふりはしないこと。もう一つは、 自分の関心は努めて客観的に分析するけれども、それをつまらないものと卑下しないこと。これらがとても数学的なのではないかという気がします。ピタゴラスの定理は中学生でも証明できると言いましたが、それと同じように、簡単に証明できる定理であっても、数学の真理の一環を支えている。一見、自明でつまらなそうでも、味わい深いことがあります。 数学は隠しているものがなく、誰に対しても開かれており、ごまかしようがない。それが一種の永遠になると感じます。その永遠は、石碑に刻まれた永遠というよりも、語り継がれていくタイプの永遠。 それが数学のいちばん清々しいところではないでしょうか。折り紙の作品にも、そういう一種の永遠を持つものがあると思います。
前川淳まえかわ・じゅん
1958年生まれ。東京都立大学理学部物理学科卒業。天文観測および解析ソフトウェアのエンジニアとして働くかたわら、折り紙の創作、折り紙の数学、歴史等の研究をライフワークとしている。主な著書に、『本格折り紙』、『本格折り紙2』(日貿出版社)、『折る幾何学』(日本評論社)がある。
投稿元:
レビューを見る
続けて Vol.1 を読了。個人的には、Vol.3 よりもツボだった。
東京オリンピックのエンブレム、数式の組版、カラクリ箱、オーケストラで踊る初音ミク、折り紙など、ツボを刺激する話題だらけ。数学に限った話ではないが、自分の興味があることをトコトン突き詰めている人の話は面白い。