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纏まりのなさに逆に纏まり感じる。
淡々とつづられる物語。
ヒヤッとしたり、ホッコリしたり、それぞれテイストが違う。
もっと知りたい、続きを読みたいというところで終わる、絶妙の匙加減。
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七つの物語集。
どの物語にも失ってしまった大切なもののことが書かれているが、愛に溢れているように見えるのだが、実は…、という裏腹な趣向である。人の昏い内面を見せつけられるようで後味が良いとは言えないが、他人の不幸を覗き見たいという読者の昏い欲求には応えてくれる。
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ふと振り返ると。何かを得られなかったときというのは、得てして何かを同時に失っている気がする。
そんな思いに耽ることができた。
ストーリーとしては少しの物足りなさを感じるが、それも手に入らなかったものなのか。
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8つの短編集。
どれも読みやすくミステリーかなって思っていたけれど怪しげなホラーっぽいものもあり、海外での出来事もあり、人間の内に秘めたさまざまな思いを楽しめた。
○降霊会〜妹に足が早くなる薬だと偽り、喘息の薬を飲ませたから亡くなったんじゃないのかと言われるが、妹は自殺だったと。
○金色の風〜フランスで部屋を借りた私が仲良くなったのはゴールデン・レトリバーと走っていた女性。
彼女になら一年前にバレエをやめたことを話せた。
母がバレエ講師で5歳下の妹に才能があり、いつのまにか自分を抜いて世界に羽ばたく華麗なプリマになる実力があることを。
○迷宮の松露〜仕事に疲れ果て精神状態を保てることすらできない私はモロッコに旅行する。
なぜか思い出すのは美人で働きもので身支度にも手を抜かなかった祖母のことだ。
道に迷いホテルまで帰れずにいた夫婦から頂いた松露を見て、祖母が好きだった和菓子を思い出す。
○甘い生活〜子どもの頃から、誰かのものが欲しくなる女性。小さい頃は、お姉ちゃんのもの、小学生になったら友だちのもの。
欲しくてどうしようもなくなり、なんとかしてそれを自分のものにしてきた彼女は大人になって…。
○見事故物件〜引っ越した後、上の階の洗濯する音が朝の4時に聞こえてくる。我慢していたが、毎日続くと眠れない。不動産会社に言うと上の階には誰も住んでないと言う。
怪奇現象かと思ったが、事故物件とは聞いていない。
ある噂によると同じような騒音があり、確認するとやはり上の階は空室で、その後その女性は行方不明になり、遺体で発見されたという。
○ホテル・カイザリン〜警察の取調室で事情聴取を受けている女性、彼女が放火をした理由は…。
夫への愛情はなく、出張の間にホテルに泊まることを楽しみにしていただけ、そこで知り合った女性と親しくなり、一緒に過ごすことで喜びを感じるようになる。だが夫の事業の失敗で、ほとぼりがさめるまで身を隠そうと言われ…。
○孤独の谷〜大学の研究室で相談を受けた事柄が、村の一部で風土病があり、言い伝えなのかどうか、誰かが謎の死を遂げると家族ばらばらになり村から出ていかなければならない。
恐れているのは言葉。
言語コミュニケーションによって、脳に炎症が起こり、欠陥が脆弱になる一族だと言われている。
○老いた犬のように〜作家である僕のところから二十年間一緒にいた妻が出ていった。
彼女は、優しく近所付き合いもうまく、気難しい姉も気に入っていたのに。
だがSNSで読者からのメールによるやりとりで知り合った人と話をしているうちに、可哀想と言われた一言で、哀れで惨めなのは自分なのかと腹が立った。
いったい、自分は…。
隠された真実に気づかせてくれる作品集。
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人はみな、多かれ少なかれ満たされない思いを抱えて生きている。ただ、その思いとどんな向き合い方を選択するかで人生は違ってくる。
そんな人たちの「選択」を描く8つの物語。
◇
今日は学園祭当日だ。僕は久しぶりに校門を潜った。
高校2年で実行委員を務める僕は学園祭の中心メンバーとして運営に当たるはずだったが、家庭の事情で昨日までの1週間を欠席したためほとんど手伝えなかった。
エントランスに来た僕は、壁に貼られたポスターに気がついた。ポスターには「降霊会、行います」と書かれていて、死んだペットの降霊をすると小さな字で付け加えられている。責任者は宮迫砂美となっていた。
砂美は僕の幼馴染であり、家族同士顔見知りだ。優等生の砂美は教師ウケがよいため、僕が休んでいる間の急な申請にも関わらず、催しは許可されたらしい。
茶番だとは思うのだけれど、この企画を立てた砂美の意図が気になった僕は降霊会に参加することにした。
外光が遮断された理科準備室には長方形のテーブルがあり、その周りに椅子が8脚置かれている。
その1つに座るのがイタコを務めるエレナというゴスロリ風の女子で、僕を含め7人の参加者が席に着くと照明が消された。
進行役の女生徒が、手にした蝋燭で以て参加者それぞれの前に立てられた蝋燭に火を灯していく。そして最後にエレナの前にある大きめの蝋燭に火を灯すと、進行役の女生徒は最初の降霊希望者を募る呼びかけをした。
1年生らしい女生徒がおずおず手を挙げる。2ヶ月前に死んだウサギを呼び出してほしいと言う。
了解したエレナは、全員に隣の生徒と手を繋ぐよう指示した。そして手と手が繋がるのを見届ると、エレナは呪文を唱えはじめ……。 (第1話「降霊会」) 全8話。
* * * * *
ミステリーあり、サスペンスあり、ホラーあり、ヒューマンドラマありのバラエティ豊かな短編集でした。
第1話「降霊会」(28㌻)は見事などんでん返しミステリーで、攻守ところを変えていく終盤の心理戦がなんともおもしろい。でも、これはほんの序ノ口です。
個人的にはヒューマンドラマ仕立ての話が気に入りました。
特に、8作中最も紙数を費やした第2話「金色の風」(56㌻)が希望と再生を感じさせる作りで好みに合っていました。
もちろん、第3話「迷宮の松露」(24㌻)もよかったですし、表題作の第6話「ホテル・カイザリン」(32㌻)も意外な結末まで用意されていておもしろかった。
でも、2番目のお気に入りとしては、第7話「孤独の谷」(28㌻)を挙げたいと思います。
「孤独の谷」はオカルト色の強いホラーで、超短編なのを感じさせないほど読ませます。
あとは、軽いサスペンスホラーの第4話「甘い生活」(28㌻)と、第5話「未事故物件」(24㌻)もうまくまとめられていたと思います。
各話はいろいろなジャンルに味つけされているのですが、満たされない思いを抱える主要人物が岐路に立ったとき、何を選択したかでどんな人生を迎えることになるのかというテーマに基づいて書かれているので、統一感のある作品集になっています。
近藤史恵さんという作家のオールマイティぶりがわかる作品でもあるので、近藤さんの作品を初めて読む方にはお勧めです。
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仕掛けに唸ってしまう、短編集だった。
ホテルカイザリンは、愛と優しさと打算とが混沌としたストーリーだった。
目に見えたいるものだけが真実ではない。
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ひさびさ短編集。
あみの会で読んだやつもちょっと。
やっぱ「甘い生活」のインパクトがすごい。「金色の風」もすき。
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初読。図書館。8編の短編集。ゾクッとするものから、ホッコリするものまで様々。まあほとんどはゾクッとするものかな。短編でこういうジワジワと恐ろしくなる物語を書けるのって素晴らしいです。
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8編の短編小説集。
なんか心がチクリとする様な話の数々。
若い女性が、日本を出て、旅行ではなく、海外での生活に臨み、活路を見出していく様な2話が面白かった。
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ちょっと後味が悪い系の短編集。
モヤっとしたりドロっとしたりした物語が好きな人におすすめ。
表題の話も好きですが、一番好きなのは元バレエダンサーの女性の話。
報われなかった人も芸術のための礎。
残酷だけど、振り分けられた人も芸術の一部。
だからこそ芸術たり得るという事実が辛い。
だが辛いことばかりではなかったと彼女自身が思い出して終わる、報われなかった努力に彼女なりの答えを見出す終わりにすごく共感した。
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ちょっとだけゾッとする話しと、ちょっと勇気を貰えるかもってお話しが交互にやってくる感じが、読んでいて妙な感覚に陥った。
ドルチェビータ……甘い生活って言うのか……おや、昔そんな名前の香水使ってたよね?と思い出して、また使いたくなった。
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近藤史恵さんの作品としては、今まで読んだ作品とはまた一風違った作品だと感じました(って、すごく読んでいるみたいだけれど、そうでもないけれど(^-^;))。だけど、それがまた、いい感じで結構私としては好きな作風、表題作を含めた8作品の短編が収められています。
・降霊会:学園祭での降霊会、えっ?そうなっちゃうの??の読後を得られます。
・金色の風:フランスに語学留学した主人公が、前向きな気持ちを持てるまでのお話。
・迷宮の松露:モロッコへの一人旅、そこで食べた大好きな祖母との思い出のお菓子、松露…。
・甘い生活:他人の物は自分の物…自分の物にしたいという気持ちを押さえられない女性のお話。
・未事故物件:早朝からの洗濯機の音に悩まされる女性、管理会社はその部屋には誰も住んでいないと…。
・ホテル・カイザナリン:主人公の女性が放火の罪を犯した理由にまつわるお話。
・孤独の谷:出身地の風土病なのか、親戚はみな遠くの地に…その訳を探ることになるのだが…。
・老いた犬のように:ある男性作家のもと長年連れ添った妻が去る…。彼女のことを尊敬していたのに…。
個人的に好きなのは、「降霊会」と「甘い生活」、「ホテル・カイザナリン」で、読後ザワザワします。ちょっと思ってもなかった怖い展開になるので、意表を突かれます!で、好きなのは「金色の風」、主人公の女性を応援したくなります。読後の余韻を引きずれる作品だと、私は感じました。
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8作からなる短編集。どれもゾワッとさせられたり希望を貰ったりと楽しめた。それぞれ好きな作品は分かれると思うが、私は未事故物件がめちゃ怖かった。コレ読んだら1人暮らしが出来ないのでは、と思うほど。
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近藤史恵さんも好きな作家さんのひとり。
この本は近藤史恵さんの本だからという理由で
何の情報もないまま手にしました。
タイトルにもなっている「ホテル・カイザリン」を含む8編の短編集。
うん、近藤史恵さんだ!と思わせてくれる
ライトミステリー。
時々”ヘビー”も混ざっていましたが…
中に「あれ?これ読んだことがあるかも」と思う作品があって
ちょっと不思議に思っていたら
アミの会(仮)のアンソロジー『迷う』と『11の秘密』に収録されている作品でした。
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物事には表と裏がある。
ぴりりと毒を含んだものから、背中を押してくれるものまで。
近藤史恵さんの魅力のつまった一冊。