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冒頭からいきなり、主人公の遼賀・33歳が癌を宣告され、物語が始まります。
病や死に対しては無防備な年代ですが、単なる闘病もの、重い話、感動ものと片付けられない遼賀の生き様、その清廉さに心洗われる思いがしました。とてもいい話でした。
誰の人生にも起こり得る想定外な病は理不尽ですが、現実を受け入れ前に進む覚悟を決めた遼賀。彼の、人に対しても自分の人生に対しても誠実に生きる姿は、読み手の魂を揺さぶります。
遼賀の同級生で看護師の泉、同僚でアルバイトの高那、弟の恭平、母や祖母など、遼賀の闘病を支える人たちの過去も明かされながら、それぞれが自分や仕事との向き合い方を見直し、遼賀との絆を深めていきます。
遼賀もメンタルが強固なわけでもなく、悩み、落ち込み、狼狽えます。しかし、周囲と共に生かし生かされていることに気付き、(諦めの境地ではなく)優しさ・目標を取り戻していきます。
そんな遼賀の姿を追ううちに、もしかしたら自分も厳しい状況下で、変われるのかなと思えました。読み手だけでなく、登場人物皆が明日への希望をもらえた気がします。
登山靴、実家や店舗に植えられた蜜柑、夕陽に染まる故郷の山‥、それらが放つ暖色のオレンジが、印象的な愛あふれる物語でした。
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生と死の対比が至る所に散りばめられていて、生をよりリアルに浮かび上がらせています。
自然の生の描写が巧みに配されているので、死がより際立っていますが、死に対する恐怖感は感じさせられませんでした。
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五反田のレストランに店長として勤務する遼賀は、胃の不調を感じて病院に来た。
そこで出会ったのは元同級生で、いまは看護師として働いている泉だった。
彼女は胃がんと診断された遼賀を支えていくことになる。
人に自慢できるものは何もないと思っていた遼賀だが、彼は穏やかな性格で我慢強かった。
周囲の人を気遣い、病気を受け入れていく姿は悲しいほどだ。
生きる と言う事を深く考えさせられた。
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友人からのプレゼント
彼女からこういうハートフルな本がドンと届きます
ただ、「病魔」「癌」の内容は辛すぎて……
『弱音を吐かない人は、いつだってひとりで闘っている』
これは刺さりますよね
闘病を支えるのは本人の意思と家族の支え
ドンピシャの本でした
藤岡陽子さん、いいですねえ
≪ まだ生きる そっと手にする 登山靴 ≫
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人を思いやる強さを持った主人公とその大切な人たちとの生き方が描かれている。
どの登場人物にも魅力があり、皆の一言一言にも心が動く。自分に対しても誠実であった主人公にありがとう、と伝えたい。
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残された自分の命とどう向き合うか。
目前に迫る命のリミット。絶望を乗り越えるには余りに短いその時間の中で、受け入れ難い現実を飲み込み、残りの人生を一歩一歩踏み締めて行く遼賀のその姿が切なくも逞しい。弟恭平を始めとした周囲の人々の献身的な様子にも心を突かれる。
類は友を呼ぶ。実直に生きる人間の周りにはやっぱり自然とそう言う人が集まる。ここに登場する遼賀サイドの人々はみんな、馬鹿正直な程に真っ直ぐで、それぞれ色々な過去や問題と向き合いながら生きている。主人公以外の仔細な人物描写が、とても魅力的でこの物語の良いスパイスになっていた。
著者の藤岡さんは実際に看護師をされていたそうで、よりリアルな病院内部の描き方も非現実になりすぎない良き要素。終末期治療に入ろうとする患者に対する、教授の献体推奨発言。しかもお酒の席。フィクションとはいえ、大学病院ともなると少なからずこう言う事ってあるんだろうな、と。患者やその家族の思いと、研究者でもある教授の考えに齟齬があるのは仕方ないとはいえ、余りに命を軽んじすぎていると私も憤りを感じた件でした。こう言うリアリティのある描写を挟むと、綺麗になり過ぎないので、すっ、とストーリーが入ってくる。
これだけ医療が発達していても、未だ日本人の2人に1人は癌になり、3人に1人は癌で死ぬと言われている現実。症状が出た頃には手遅れとも言われる恐ろしい病だし、定期的な健康診断の必要性を感じる。病院嫌いだけど。
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闘病ものは苦手だ。どうしても死に向かう結末を想像してしまうし、その過程を読むのも辛い。
この本は、33歳という若さで癌になってしまった遼賀が主人公。しかも子どもの頃に一度雪山で遭難して死にかけたことがあったり、弟が実の家族ではなかったりと、事実を並べると一見過酷な人生を送っているのだが、本人からはあまり鬱々とした感情は読み取れない。
もちろん闘病の辛さや自分の在り方について、苦しんだり悩んだりしているのだが、何故だか致命的な悲壮さがない。それは、彼が周りの人に優しさを与える人であり、人から与えられる優しさを感じられる人だからだと思う。
本書では章ごとに、遼賀、遼賀の母、弟、担当の看護師の視点でそれぞれ物語が語られる。みんながみんな、遼賀を好きで、彼の幸せを祈っている。病と闘う当人だけでなく、周りの人の受け止め方を読めるという点でも勉強になる。また、闘病中の人は周りから助けられるだけでなく、周りの人を励ましたり心を癒したりすることができるということを知れたのも、大きな収穫だった。
自分が病気になった時に読むには、現実逃避にはならないし辛くなるかもしれない。それでも、最後まで希望は消えず、残り続けるものがあるという事実を教えてくれる、優しい本だと思う。
著者が看護師として勤務しておられるということを知り、なおさらこの本への信頼が増した。
闘病ものは苦手だが、この本は読めて良かった。
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歳を取るにしたがって癌に侵される人が周りにも増えてきた。
この小説を読んで、こんなにもつらい病の癌と闘う人の気持がより理解出来そうだ。
闘う人に連帯の挨拶を贈りたい。
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藤岡先生の作品の出会いは『手のひらの音符』でした。とても気持ちを揺さぶられた作品でしたので、この本もすぐに買い求めました。ところが読むまでに、自分がガン告知を受けたのです。手術を受けるまで色々なことが起き、気持ちも揺れ、この本を手に取る勇気がありませんでした。でも、せっかくの先生の本との出会い。治療の目処がたったある晩、読もうと決めました。主人公と自分の出来事がリンクしてたくさんの感情が溢れ、一気に読まずにはいられませんでした。今は普通の生活に戻りつつあります。そうでなかったら、主人公のように穏やかに自分を受け入れられたか。私だったらどう選択したのだろうか。本当にたくさんのことを考えた本でした。一生のなかで、こんなにも劇的な出会い方をした本は初めてでした。
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胃がん告知・転移・独り身・と手札が揃えば、物語の結末はある程度想像出来てしまいます。しかしながら読み始めるや、主人公のこれまでの人生の歩み方、これからの運命の受け入れ方、周りの人達の覚悟等全てに於いて真摯でかつ澄み切った文章で愛おしいまでに描かれていて、いつの間にか読了していました。
巻末の解説に記載がありましたが、著者は看護師として働いているとの事。そうしたエビデンスが物語に幅や奥行きを持たせ、主人公や主人公を支える家族達一人一人を主役として丁寧に描いています。
凪良先生の最新作みたいに良い本について語ろうとすると言葉が次から次へと溢れてしまい感想にまとめるのが難しいですね。
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若くして闘病する悲しい話なのですが、彼の誠実な生き方、家族、友人の温かい思いに、心温まり、また心が震えました。電車で、何度も涙を流しました。1日、1日、大事にして生きようと思いました。
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33歳の主人公が、突然末期の病気にかかってしまうことになるというあらすじを見て、自分に近い年齢であることから、手に取りました。
ストーリーは概ね想像した通りになります。
私は第4章の主人公の弟のパートが好きでした。
で、気に入ったフレーズは主人公のお母さんの言葉。
結局、生きることって毎日の積み重ねであって、付け焼き刃に変わることは出来ないんだよなって思いました。
以下、お母さんのフレーズ。
p198雑草は目についた時に抜いておくのがええ。そうすると庭はいつもきれいなままじゃ。雑草を放っておくと、いつしか庭は草に飲み込まれてしまう。雑草を抜こうという気持ちも萎えていく。雑草が蔓延った庭が当たり前になる。やがて雑草が雑草に見えなくなる。
毎日を丁寧に生きるというのは、雑草を抜くことと同じじゃよ。雑草はどんな庭にも生える。家庭という庭にも生えるんよ。だからお母さんはこうして毎日雑草を抜いているの。家族みんなの心に、いつもきれいな庭があるように。
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今は都下のイタリアンレストラン店長を務める笹本遼賀33歳の体調不調をアルバイト男子が心配してくれ、やっと受診したところ思いもしない癌に罹患していた場面から始まる。
彼が15歳の時に故郷岡山で父と双生児?の弟の3人で冬山登山した折りに兄弟で遭難して救助された経験があり、この事が物語の重要なポイントになっている。
闘病暮らしの遼賀に寄り添う弟や母親、受診先で偶然出会った看護師の矢田泉、職場で彼を慕うバイトの高那などなどとのやりとりが彼の心境を穏やかになだらかに導いてくれるのがとても温かくて良い♪
不意に訪れる不幸にどのように向き合うかは本人の生き方考え方が大きな影響を及ぼすのだろうけれど、この主人公のような境地になれたら理想的だろうな と思えるストーリーです。
涙無くしては読めないけど、さすがに高い評価の多い作品、納得の読み応えでした♪
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大好きな藤岡陽子さんの作品。今回も涙なしでは読めなかった。とても切なく、悲しい物語。生きるとは何か、多分この問いの答えはなかなか見つけられそうにないが、当たり前にあるこの日常がどれだけ幸せなことか。自分、家族が健康でいれるだけでどれだけ幸せなことか。病院で働いており、癌患者さんと接することが多い中、最近よくそういうことを思っていた。この作品を読んで、改めて日常がただあるだけで幸せなんだと感じた。
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第4章のおばあちゃんとのやりとりから泣いた。
目立たなくても 誠実で優しい人の所に人は集まる。
遼賀の人を思いやる優しさ、恭平の真っ直ぐな心の強さ、そして家族、遼賀を慕う人達の温かさで
病に侵される悲しいお話というより 人の強さ、温かさ、家族のあり方を考えさせられるお話だった。
人間いつ何が起こるかわからない。毎日を丁寧に生きたいと思った。