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チベットの昔話、枠物語の形式でお話が入れ子になっていて、一つのお話が終わるたびにつっこみたくなる、ユーモラスでおおらかな物語。カエル、鳥、蛇など生き物に姿を借りる王子や、人間の心を知り通わせ言葉を話す犬、ねこ、ネズミ、サルなど、そして蘇りや転生、と、繰り返し語られる物語の枠組そのものがチベット仏教の輪廻転生をかんじる。
美しい星先生の訳文と、蔵西さんのイラスト。15ページ竜樹大師様の洞窟での修行シーンの挿絵、蔵西さんならではの美形の竜樹大師さまに心を持っていかれ、69ページの見事なチベット家屋にページめくった瞬間声が出た。
解説は大人向けであり、大人も楽しめる。
苦難の歴史を歩むチベット人たちに語り継がれる、希望の物語。
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しかばねが物語を語るという枠がすでにユニーク。インドの物語で、しかばねに取りついた屍鬼が物語を語るというお話を土台にして、チベット人が作ったお話であると、あとがきに説明が。
中の物語には、世界の昔話と似たモチーフがあちこちに出てはくるものの、「そうきましたか!」という意外性のあるものもちょいちょいあってたのしい。木の鳥で飛んで妻を助けにいく話なんて、ルパン三世かと思ったぜ(笑)
毎回つっこみを入れて口を滑らせるデチュー・サンボは、まぬけっちゃまぬけなんだけど、絶妙に読者の心と共鳴するコメントなのがいいよね。たのしい。
そしてことわざや言いまわしの数々も、耳なれないけどなるほどと思わされるものが多くて面白い。
「作物はよそのうちのがりっぱに見えるが、子は自分のうちのがりっぱに見える」
「お茶のお礼を水で返すようなやつ」
「燃えさかる火のようにがめつくて、流れる水のようにどんどん取りたてにやってくるような、ひどい領主」
……ふふっとなります。
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しかばねを洞窟まで運ぶよう命じられた主人公デチュー・サンボは、道中、口をきいてはならぬといわれたのに、おしゃべりなしかばねが物語を語りたすと、つい、つっこみや、感想が口をついてでる。すると、しかばねが墓場にぴゅーんと戻ってしまう。何度も墓場にもどり、最初からやりなおすはめになるのに、懲りもせず口をきいてしまう主人公。そのおかげで、読者はしかばねの物語を12話きけるのだ。もし、じぶんだとしても、たぶん「おもしろい!」などと言ってしまうと思うので、気持ちがよくわかる。
うわさ通りのおもしろい本だった。羊が「うちら」という言葉を使うなど、楽しい翻訳のおかげもあると思う。以前、『路上の光』のイベントかなにかで訳者の星泉さんがしてくださったチベット文学の解説で、チベットではことわざを使ってコミュニケーションをとる伝統文化があると伺った。この昔話にもチベットのことわざがふんだんに出てきてうれしかった。それに「迦陵頻伽(カラピンカ)」や「呪法円(マンダラ)」などチベットらしい表記には異国情緒があった。
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由来はインド屍鬼。サンボは幸せを齎す屍を大師の洞窟まで運ぶ。その間,口をきいてはいけない。屍の話が面白く我慢してもつい口が滑り,数々失敗。思わず突込みたくなる。
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しかばねから語られる、ゆかいなお話が飽きさせなくて楽しい。びっくりするような描写もあるので、中学生からの方が安心して楽しめるかも?