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有りそで無さそな、無さそで有りそな事件。今や何が起こっても不思議のない世の中。
我が身は我がで守るしかないのか?
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読み始めると「続き」が凄く気になってしまう。そして頁を繰る手が停められなくなり、素早く読了である。
「社会派」とよく言われる。作品は飽く迄も「架空の事件」を描いている小説なのだが、実際の出来事、事実、風潮等、社会の中での様々な「こういうのは如何か?」を織り込んだ作風で知られる作家の新しい作品である。
感染症の問題で社会の様々な部分が歪んでしまっていて、着実に貧しくなっているという指摘も在る社会状況の中、ネットの世界が拡がり、深まっていて、そういう中では「妬み」や「悪意」も含めて「見ている個人が心地好い」という情報だけが咀嚼されているような様子が見受けられるのかもしれない。本作はそういう近年の様子を踏まえた作品である。
本作では、視点人物が適宜入れ替わりながら物語が展開する。主な視点人物は、家庭の事情で経済状況が苦しくなっていた女子大生の理子、大手百貨店のバイヤーとして活躍していた経過が在った小島という男、警視庁の生活安全部でサイバー犯罪捜査を担当している長峰ということになるであろう。
女子大生の理子は母と2人で暮らしていた。母は建設会社役員を務めていた父と離婚してしまっていた。父は慰謝料等を払っていたが、会社の談合事件の詰腹を切らされて失業してしまった。慰謝料等の支払いは途絶えた。母は離婚後に会社勤めをしていたが、感染症の問題で業績が悪化していた会社の人員整理で失業してしまった。そういう事情で、学費や生活費を如何にかするため、理子は連日のように四苦八苦していた。
新宿の老舗百貨店でバイヤーとして活躍し、国外での買付等にも出ていた小島だったが、所謂「リストラ部署」に飛ばされていた。業績が悪化し、全国の支店の整理も在った中、多忙で体調をを崩したことが在ったのだが、復調して職場に戻れば席が無かったのだ。やがて「リストラ部署」で憂さ晴らしに同僚への嫌がらせをしていたところ、それを人事に見咎められて回顧の憂き目に遭ってしまっていた。
理子はアルバイトを掛け持ちしていて、高田馬場のガールズバーで働いていた。そこで出会った女性に導かれ、恵比寿の高級ラウンジで仕事をするようになった。更に京都の新しい店を任されるというようなことにもなって行った。
小島は百貨店を退職した後、何を如何やっても巧く行かないような様子だった。色々な不運が重なる。そういう中、理子が発信するSNSアカウントに在る、彼女の成功譚を伺わせる内容を妬ましい思いで見ていた。
一方、都内では「無差別殺傷」というような事件が連発していた。色々と行き詰った中年男が街で殺傷事件を起こしてしまい、現場で取押えた後は「誰でも構わなかった」、「死刑にでもしてくれ」というような供述なのである。ネット上の妙な投稿をマークすることをしていて、「無差別殺傷」では被疑者や被害者のSNSアカウントを調べる活動をしていた警視庁の長峰は、何か釈然としないモノを感じ始めた。「無差別殺傷」が次々と模倣されてしまっているということに留まらない“ウラ”が在るような気がし始めたのだった。
理子は懸命な努力で、また様々あ人達の協力で成功の階段を上る。小島は不運が不運を呼び寄せるような様子で、理子の成功を妬んで殺���を抱くようになって行く。両者の“ウラ”が、長峰達によって明かされ、やがて黒幕と対峙するという物語だ。
長峰は、生活安全部の刑事として経験を積んでいる森谷と共に事件に臨む。森谷はクールでタフな女性捜査員で、長峰より少しだけ年長という雰囲気だ。対する長峰は、IT関係の民間会社から警視庁に転職したという経過の、少し異色な捜査員ということになる。何か「刑事らしくない?」という長峰と、「色々と経験も積んだ、なかなかに自信溢れる女性刑事」という風な森谷のコンビは少し面白い。
この長峰は、実は同じ作者による別な作品、『血の雫』に登場していた。訳アリなベテラン捜査員と組んで、難解な「連続殺人?」という様相になって行った事件の謎を追う『血の雫』であったが、本作中にも少しだけその件に言及が在る。あの作品を読んだ後、個人的にはこの長峰の“再登場”を少し希望していた。今般、それが叶った。
本作は飽く迄もフィクションではある。が、憂さ晴らしどころか、妬みや悪意を増幅させるばかりのネットの中というような問題や、少しばかりの不運が在った際に、そこから再起しようとすることが困難になるばかりという様相、縮んで行くばかりかもしれない経済という閉塞感等、作中で描かれる様々な様相が何か「刺さる」という感じだ。
「刺さる」と言えば、作中で「無差別殺傷」というような事件に携わってしまう中年男達である。一寸した不運、巧く行かなくなったことから抜け出せなくなる。巧く行かないのも、その人自身の所業が招いてしまった面も否定し悪いかもしれない。それでも、何とかしたいと思いながら益々巧く行かなくなるような感じが怖い。自身もそういう羽目に陥らないとも限らない。
更に、作中で理子が京都で成功している様子が描かれるのだが、そこに出て来る京都の風情、通り一遍でもない愉しい京都という雰囲気の描写は凄く好い。偶々、昨年から今年に京都を何度か訪ねているので、何となく判る。(勿論、登場する酷く高級なモノ等は知らないが…)
考えさせられる「社会派」な内容も織り込まれているが、「如何なってしまうのか?」と酷く夢中になるミステリーである。御薦めだ!!
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長いけどテンポよく読める展開。スリリングだったけど教唆の手段が解明されずモヤモヤ。こんなに上手く人を操れるのか?黒幕がエグすぎる割に登場シーンが少なくて残念。
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読み始めから謎めいてなにやら不穏な感じに満ちていて心が不安になった。そこにミチコなる人物が登場しさらに心がざわざわして。それからは最後まで一気読みとなってしまった。終わってみてホッとした自分がそこに居た。
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貧困の負のスパイラルに付け込んだ事件の物語。
社会派の相場さんにしては最近、切れやスケールが悪くなってきていると思います。
本作は、サイバー刑事の長峰の第二弾とでも言ってよいかもしれませんが、事件自体が陰謀論のような妄想的で、さらに犯人と対決直前のハラハラドキドキも取ってつけたような感じで、ちょっと残念です。
企業犯罪ネタで田川刑事シリーズの新作を希望します。
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なんだか相場さんらしくないなぁ…と読みながらずっと思っていた。
読み物としては面白かったけど、こんな事がホントにあったら怖過ぎるけど。
それよりも、日本はもう成長しない、縮んでいくだけだと世界的に見られている、ということの方が突き刺さった。
ま、旨い話はヤバいって事だけは変わり無いってことでw
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相場作品としてはかなり物足りない。プロットも簡単に読めてしまうし、新自由主義の害悪を書きたいのであれば底が浅い。金持ちの欲望の行き着く先がこの辺りであることは、他の小説でも映画でも描かれているので新味もない。
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家の生活を維持しながら、大学に通う費用を稼ぐのに苦しむ21歳のヒロイン理子。
そんなある日、彼女に成り上がりのチャンスが。
一方で、百貨店のエリートバイヤーだった小島は会社をクビになるという転落人生を辿ることに。
その交わることのないはずのふたりの一般人が金持ちの思惑で交錯する、生と死を賭けたサドンデスを描いた作品です。
無差別殺人事件の裏に金持ちの思惑あり?
そんな馬鹿なと思いつつも、今の日本での出来事やテレビなどで得た情報、実体験から、本作で起きていることを100%フィクションだとも言い切れない内容だなと思える話です。
まさにリアルではないでしょうがリアリティがどこかある作品。
ただ、作者をみて勝手にゴリゴリの刑事モノかと思っていたら、私が今まで読んだ作者の作品にしては刑事パートは少なめだなという印象です。
作品のテーマもあるとは思いますがヒロインの成上り、小島の転落部分にスポットライトが当てられています。
はじめは、サドンデス?っていう感じでしたが、読み進めるごとに、牙が見えてきて、どんどん話に引き込まれていきました。
そして、頭の中ではエディ・マーフィの『大◯転』みたいなシーンが出できて、確か金持ちってこういうことやるシーンあったよなぁと思いながら読んでました。
さて、そんな本作品から感じたことは、成上りをみる面白さです。
人の成上りって、見ていて嫉妬したくなる人もいるし、不快に思うものもあるし、応援したくなるものもある。
それは成功の過程を見聞きしている時であって、SNSであがったものだけをみたら、私も
「やらせやん」
とか
「どうせ、いかがわしいことしてるんだろ?」
とか、妬みながら眺めてしまうかもしれないタイプの人間です。
でも、サクセスストーリーというか、成功したと思われる人の自伝や伝記を読むと、この人凄いなと思ったりします。例えばスティーブ・ジョブズの本とか読むの面白いですし、世界的にヒットしてるということは、こういう成功者について書かれた本を読むことが好きな人は多いということなんだろうなと。
そう思うと不思議なもので、サクセスストーリーは好きなのに、反面嫉妬や妬み、疑惑、何ならいつか痛い目を見てほしい(失敗してほしい)と呪いのように願う不思議さ。
こういう矛盾を抱えているなと気付かされました。
そして、こう読んでみると、登場人物の小島は私だなと思いました。
私も、大なり小なりの成功体験を勲章のように胸に抱えていて、その体験がいつ暴れだすかわからないなと思いますし、成功した時の気持ちよさを忘れられる人もそんなにいないだろうし、まさに成功は麻薬だなと思いました。
最後に、お金を動かす力を持っている人、それこそが今では権力者であり、権力者に利用される、これは今を生きている私達の生きている世界の1面を言い当てていると思います。
ただ、お金の力でことをなし得ようとすると、��局お金の力に最後は屈する。
暴力で勝ち続けてもやがてその暴力に屈するように。
結局、どこまでいってもサドンデスということなのかなと思いました。
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もし自分の人生が誰かの手のひらで転がされていたとしたら。
そんな事を思い背筋が一瞬寒くなった。
貧困に喘いでいた21歳の理子は、一人の女性と知り合った事で人生が好転していく。
あれよあれよと言う間に京都祇園のママの座にまで上り詰め、膨大なフォロワーを持つインフルエンサーとして名を馳せる様になる。
そんな彼女に仕掛けられた巧妙で悪質な罠。
成功者へ向けられる嫉妬や憎悪を利用した命を賭けたゲームに震える。
SNSを悪用した世界最悪の殺人ショー。
荒唐無稽に見えて有り得ないとも言い切れない。
ラストまで目が離せない社会派小説。
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ここまで人間を操ることが出来るのかと思うもの、今まさにきな臭い世の中になってきていることが背景なんであろう。
そして、太古の時代からこんなことが繰り返されているのだから。
若干、理子の設定、成長に違和感があるけれど、人間をゲームの駒にする話はよくあり、それを現代社会に当てはめると違和感なく話が展開していくところ、さもありなん。
結末には救いはあるものの、なんだかすっきりしない現実を知ってしまったような。
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連続する無差別殺人事件、それは格差と貧困に付け込み困窮する人々を追い込んでゲームに興じる富裕層たちの仕業だった...。不遇な人生を送り必死に這いあがろうとする利己を待ち受ける残酷な現実は...。スリリングな展開だがツッコミどころ満載、非現実的な部分も。
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貧乏でガールズバーに勤めるが金がない理子。スカウトされ上に向かい、ある危険そうなゲームに参加することになる。百貨店をクビになった小島はSNSで見つけたキラキラした者たちを嫌悪し、気づけばゲームに参加していた。
うーん。犯罪の動機が荒唐無稽なのが引っかかる。いやリアルだよと懸命に説明してる感あり。それ以外はスリリングで面白かった。
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底辺から成り上がろうとする女子大生と、底辺に堕ちゆく中年男性が参加する『謎の人生ゲーム』を描いた小説。
貧困をめぐる現代社会の闇と、SNS社会の怖すぎる描写にゾクゾクしながら読み進めました。
ラストの6章で真相が見えはじめてからは、思わず一気読みしたくなるでしょう。
そして、このゲームの意外な真実に驚愕させられます。
最終章では「えっ……この人が……?」といったシーンの連続です。
そして迎えたクライマックスと、エピローグ。
「これはあくまで小説だから……」と軽んじてはいけないのかもしれません。
誰もがこの物語の登場人物になり得るのが「今の日本社会である」という点に真の怖さを感じます。
ホラー小説とはまた違った、リアルな怖さを感じられる小説です。
ゴリゴリの社会派ミステリーが好きな方におすすめしたい1冊です。
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相場英雄の最新作は、現代で起こりうりそうで恐ろしい話でした。どん底人生から好転していく人物と好対象に華やかな人生からどん底に落ちていく人物を描きつつ最後にこの2人が結びつくのですが、なぜ結びつくのか?というところが非常に怖い話です。しかしながら物語としては、とても面白い作品だと思います!
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現代の格差社会の実情をテーマにミステリー
小説に仕立て上げた、著者の真骨頂の作品で
す。
Fラン大学の学費にも四苦八苦する女子大生が
あるきっかけで上流社会へとのし上がっていき
ます。
黒革の手帖のように、他人の秘密を握って立ち
回るのではなく、不思議なくらい彼女を擁護し
てくれる人が現れるのです。
そして彼女の上昇の過程は、彼女自身のSNSで
発信され、拡散されていく。
SNSの内容は、成り上がった後の彼女姿だけな
ので、それに憧れるフォローワーは増える一方
です。
だが反対にそんな生活を妬む人も出てきます。
実際に同じような有名ブロガーが被害に遭う殺
人事件が多発していたのです。
有名ブロガーはたまたま通り魔に襲われたのか。
それとも貧困層による復習なのか。
ラストはちょっと無理筋と感じましたが、現代
社会を鋭く抉った一冊であることは間違いない
です。