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1人の記者が絵画や土地、人物の繋がりを頼りに「二児連続誘拐事件」の真相に迫っていく物語でしたが、「そこが終着点なのか」と思わず驚きの声が漏れるとともに、感動の結末で良かったと思います。
誘拐事件から数十年経った現代、ある雑誌に1人の画家が過去の事件の被害者であったことが掲載されることから、物語の主軸がスタートします。それを契機に当時、事件の記者を担当していた主人公の門田は、ジャーナリストの集大成として、過去に何が起こったのかを探り始めます。その門田の手がかりとなっていくのは、数々の絵画。この絵画と人が結びついた時、事件の真相が少しずつ明らかになっていく…
本作のテーマの1つとして、「ジャーナリズム」が挙げられます。スマホやパソコン、SNSの発達からありとあらゆる情報が得られるようになった現代において、情報の信頼性やネットリテラシーの重要さにに気づかされるような内容でした。
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平成3年に起こった2つの誘拐事件。翻弄される警察、そして未解決のまま3年後戻ってきた当時3歳の幼児。写実画家の秘された絵と誘拐された亮をめぐる謎。面白かった。
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「罪の声」からずっと好きな塩田さんの新刊。
表現する語彙力が乏しいのが悔しいですが、とても深い物語でした。
事件発生時のハラハラする展開から一気に広がる謎。
それを解き明かすミステリー要素と、青春、家族の愛と絆の優しさがうまく調和して最後には涙する。
完璧なストーリーでした。
物語の、その続きも気になってしまう。
誰しもが幸せになってほしいと願わずにはいられません。
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すごいものを読んだ。
納得のタイトル。
表紙の絵も写真のようで、写真以上の迫力があり素晴らしい絵画だということが、この本を読んだ後だからこそじわる。
空白の3年。何が?
トキ美術館→ ホキ美術館は日本初の写実絵画専門美術館で千葉市緑区の昭和の森に隣接。
写実画家専門。
4号→333×242。
ん、33cmくらいの大きさで50万円。
亮くんと里穂の会話。
「実はお願いがあるんだ」
Longing / Love. ジョージ・ウィンストン
↑日本版CDの訳 「あこがれ/愛」
これは告白か!?
「一緒にピアノを習わない?」
高校の卒業式前のバレンタインとかホワイトデーあたりの里穂目線の話が、とてつもなくキュンキュンする。
亮くんに会いたい。
育てのお父さんの言葉。
「画家は孤独を恐れてはダメ。最後は自分との闘い。いっぱい本を読んで、いっぱい人の話を聴いて言葉を知ってほしい。絵を描くときは『何が描きたいか』『なぜ描きたいか』をできるだけ言葉にしなきゃいけない。キャンバスに向かう前から勝負は始まってるから。」
「これから世の中がもっと便利になって、楽ちんになる。そうすると、わざわざ行ったり触ったりしなくても、何でも自分の思い通りになると勘違いする人が増える。だからこそ『存在』が大事。世界から『存在』が失われていくとき、必ず写実の絵が求められる。それは絵の話だけじゃなくて、考え方、生き方の問題だから。」
存在のすべてを油絵にのせる。
会えて良かった。
ラストは泣ける!
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購入はしていたものの昨年内になかなか読む事が出来ず、2024年1冊目となりました。2024年始まったばかりですが、今年これを上回る作品に出会えるか、どうか。2024年のハードルが上がりました。
誘拐事件から始まる本作、しかも誘拐された子供はなぜか3年後に戻ってきます。その3年に一体何があったのか、なぜ戻ってきたのか?なぜ誘拐事件はそもそも起きたのか?謎ばかり。
事件の真実、真相、事実が明かされていくわけですが、、、読み進めていくにつれ、これは犯人はお前だ!という、単純明快なただの誘拐ミステリーではないな、と気付かされます。前評判の段階でとても素晴らしい評価を受けているので当然そんな内容ではないだろうとはわかってはいましたが。
せつなく深い愛、正直、泣けてしまいます。
とても素晴らしい作品だと思いました。
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記者を中心にインタビュー形式で話が進んでいく。
話が少し複雑なため、ドラマや映画化で見たいなと思った。そことそこが繋がるのか!と読んでておもしろかった。
描写も美しい。愛が深くて決断を話す場面は本当につらかった。
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人は見えているものしか見ようとしない。
しかし、見えているのに気づかない時もある。
やはり見えているものはちゃんと認識したい。
時に、見なければいけないものすら見ない人がいる。
それはきっととても孤独なことだと思う。
一方で、見えないもの、普通は見ようとしないものまでも見ようとする人もいる。
存在のすべてに目を向ける事ができるためには、きっと思いや力が必要なのだと思う。そして、そういう人は、すべてを見ることができるわけではないことを知る。
ダ・ヴィンチの言葉「芸術に完成はない。諦めただけだ」は、まさに我々を貫く。
「これまでは、好きな人と結ばれることが幸せだと思ってきた。でも、今は違う。忘れられないほど好きな人、どんな道を歩もうともずっと太陽のように自分の心を照らしてくれる、そんな人と巡り会えることが、本当の幸せなのだと気づいた。」
人を大切に思うこともまた、見えないものを見ようとする事であり方が変化する。
愛の物語だった。
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あー「罪の声」を書いた人の本だなぁと実感。
個人的には「罪の声」の方が好みだったけど、本作も良かった。
予想を裏切る誘拐事件の真相だったけど、
本当に心温まるというか、このまま3人が幸せに暮らせますようにと願わずにいられない心理にさせられた。
希望と現実とが入り混じってリアルだった。
正直、里穂は必要だったのかともとも思うけど、亮が孤独ではなかった、愛されていたという証明の存在であったからいいか。
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「罪の声」に匹敵する著者渾身の傑作。そろそろ本作で直木賞を取らせてあげてはどうだろう。誘拐されてから帰宅するまでの3年間を調査する刑事と新聞記者の視点から、徐々に明らかになっていく驚愕の真実と、そこにいたるプロセスの丁寧さと人間描写には感嘆するしかない。どこで一区切り入れようか迷うぐらい物語に没入できる。
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#読書記録 2023.10
#存在のすべてを
#塩田武士
ミステリかと思い手に取ったけど、人間ドラマだった。刑事、新聞記者、被害者、家族、支援者、容疑者。日本各地を巡る旅の後に、ラストでそれぞれの思いが一つの奇跡になっていくよ。
個人的には、今住んでいる横浜と故郷の北九州が前半に登場すること、キーアイテムとしてガンダム、ガンプラが多用されているところがポイントだった。
#読書好きな人と繋がりたい
#読了
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写実画、以前展示会で見たことがあるが引き込まれた。
その画家が過去に誘拐事件に巻き込まれ、想像もできないような数年を子供時代に歩むことに。
思いもよらないストーリーに引き込まれながら、謎解きのようで謎解きではなく人間を描いた内容に脱帽した。
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30年前神奈川で起きた「二児同時誘拐事件」。当時警察庁記者クラブに詰めた記者・門田は盟友である刑事の死をきっかけに、未解決に終わった事件の真実を探し始める。散らばったピースを集めるうちに見えてきた、空白の三年間の真実とは。
同時誘拐事件のドキュメンタリーを見るような無駄を省いた緊張感ある文章に、序章からグイグイと惹きつけられる。
誘拐事件解決までのミステリと思いきや、物語は思わぬ方向へと進んでいく。
事件を解明できなかった無念を抱く刑事たち、何故「書く」のか自らに問い続ける新聞記者、才能ある不遇の写実画家と彼を支援する者たち、そして誘拐された少年。誘拐事件から始まるそれぞれの生き様に胸が詰まる。
新聞記者であることを突き詰め、「書く」ことの意義を自問しながら事件の空白を埋めていく門田の姿は人間味があって、さすが元新聞記者の塩田さんです。
そして白く、光溢れる、透明なラストシーン。描かれる細部のあれこれに涙なしでは読み終われませんでした。
細かいことはネタバレになるので書けませんが、他にも泣きのポイントがいくつもあって、「罪の声」に続く塩田さんの代表作になるような気がします。
これも映画化されそう。
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今月は色々と忙しくて、やっと読み終えることが出来ました。続けて読めていたら、もっと面白かっただろうと思います。
でも、面白かったです。
前代未聞の「二児同時誘拐事件」から物語は始まる。
一人は無事に保護される。
もう一人は事件から3年後に突然帰って来る。
しかし、事件は未解決のまま時効を迎えた。
「イケメン人気画家は誘拐事件の被害者だった!」
という見出しを見て、写真の中の人が同級生だった彼だと知った土屋里穂は、彼に会おうと行動をおこす。
一方、当時新米の記者だった門田は、もう一度この事件を調べ追うことをする。
物語はこの二人の視点で進む。
誘拐されてからの3年間の事が書かれている8章から最終章は、切なくもあり、優しさと安らぎに包まれる感じがしました。
この作品も「愛」の゙物語でした。
作品中の写実画も実在する物だったら、きっと想いが溢れんばかりのった、温かい素晴らしい作品なのだろう想像が出来ました。
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91年に発生した誘拐事件は前代未聞の二児同時誘拐。30年後、被害児童の周辺を調査する記者が明かす真実は。
かなり良かった。よく知っているマイナーな地名が登場したり、好きなジャンルの絵画が出て来るのもさらにプラス。事件の裏側に加えた重厚な人間ドラマ。
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いやぁ、参った。色んな感情がごちゃ混ぜになって、色々考え過ぎていながらも、何も考えられないような変な感情がしばらく押し寄せていた。
物語は二児同時誘拐という前代未聞の事件から始まる。片方の子どもはすぐに見つかったが、もう1人は3年後に帰ってくるという呆気ない幕切れとなった。
3年の空白を経て祖父母の元に戻ってきて高校生となった内藤亮は、画廊の娘、里穂と淡い恋心を育んでいったが、里穂がその想いを伝えようとした卒業式の日、突然姿を消した。
未解決事件となってしまった刑事の思い。また刑事の意思を引き継いで空白の3年間を捜査する記者。そして、空白の3年間の真実。
誘拐という卑劣な犯罪が全く別の顔を持って私たちの前に現れて、それぞれの思いを十分に身体に浸透させてからのラストは涙が止まらなかった。