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とても良かった。
1年くらい前にに山崎さんの「精神分析の歩き方」を読んで分からなかった「力動的心理療法と精神分析的心理療法の変遷」についてや、「精神分析的心理療法を行うにしても、自我心理学の知識も大事だよね」と言ってくれている感じが、そうだよねと。いろいろとすっきりした。
本の内容としては、
「ユーザーが現実適応できるように、精神分析理論に基づいて、(心の奥の幽霊の声についてはとくに触れずに、でも治療者が心に留め置いて)ユーザーの自我を支持すべく対話をしてくれる心理療法」の本。
そういう心理療法の実際の流れを2つのケースで書き記してくれて、その時治療者は何を心に留め置き、どう考え、持ちこたえてくれているかを記してくれている、とても誠実な本だった。
東畑さんの最後の文章は相変わらず面白かったし、POSTについての理解も深まった。
読んで想像し理解することと、実際に行う困難さは計り知れないとは思うけれど、「とにかく、絶やさずに支えることが大事」とういう、刊行トークイベントの関さんの言葉も印象に残った。
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大好きなシェルティが!!と興奮できる、最高の良書です。…と書くと、単なる私のシェルティ愛を世に訴えるだけになってしまうため、簡単ではあるけれど感想も。
精神分析を学び始めた初学者であるという前提でこの書籍を読了した第一の感想は、「とても励まされた」ということだ。サポーティブにクライエントと関わることにどこか後ろめたさを感じ、事例検討への提出を恐れている部分があった私にとって、まさに今学びたいと改めて感じる内容だった。
分析の知をもってクライエントと関わりながら、いかにサポーティブに関わっていくことができるのかという点について、初学者にもわかる丁寧な説明で書かれている。著者の先生たちが優しく丁寧に言葉を紡いでくださっているからこそ、私自身がもっと勉強しなければ!といい意味でモチベーションが上がったように感じる。
分析の勉強は難しいことも多く、あきらめてしまいそうになることもある。そんなとき、改めてこの書籍(と山崎先生の精神分析の歩き方)に立ち返って学びたいと感じた。
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良書。
精神分析を専門に勉強してきたわけではないため、臨床的な介入の中で精神分析を行うことはまずないが、それでも事例の見立てに精神分析的な観点を取り入れることがしばしばあり、そのやり方を洗練させるためのヒントが本書にはあったように思う。これまで真似事でやっていた見立てを、どの部分に着目して精緻化していく必要があるのか勉強になった。
たしかに精神分析的アプローチとは異なる部分も多く、実践のしやすさが一つのポイントになっているが、今後、精神分析的アプローチへと切り替える場合のことを考えると、自己開示の扱い方や中立性についての問題をどれくらい意識して実践できるかがその後の展開の鍵となるだろうし、そういった意味での難しさを孕んでいると言える。あくまでベースは精神分析だが、他の心理療法との組み合わせなども自分の中で整理していきたい。
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プロセスの一端を知っている(担っているとは言えない)ので、
客観的な感想を言えば、
「わかりやすい」。
私たちが抱いてきた違和感や傷つきや、
疎外感や怒りも含めて、
言語化しながらどこまでも論理的であろうとするところが、
限りなく臨床的だと思う。
一方で、
精神分析にそこまでの葛藤を抱いていない臨床家には、
わかりやすさが危うさにもなるのではないか。
手軽に、深く思考できないことを自己肯定できる手段になる気がする。
それは、
実際にそういう臨床家を見てしまったからだ。
でも私が感じたその感情ですら、
権威主義との同一化になりうるのかもしれない。
ここから一層、
内省と客観視を深めたいと思う。