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1人の芸術家(アーティスト)が語る、「スサノオ」という異名を持ったカリスマ政治家、大澤光延の異形の伝記という体をとる小説。昭和の終焉からコロナ禍の令和を駆け抜け、語り手が途中から変容したりするなど、複雑な展開。
文学らしい文学作品で、意欲的な大作といえると思うが、個人的にはなかなか理解困難な小説で、入り込めなかった。
まず持って回ったような、もったいぶった文体が受け付け難かった。また、疑問符の付く設定(大澤光延の父が怪物と呼ばれた東京都副知事で上流階級っぽい描写となっているが、出世した地方公務員にすぎない東京都副知事がなぜそんな怪物となれたのか、上流階級としてふるまえているのかの説明がほとんどなく、リアリティが感じられない、都知事か総理大臣を目指すのにまず参議院議員になる など)が少なくなかった。そして、話が平成3年から令和2年にいきなり飛んでしまい、時代の変化や政治のダイナミズムをあまり描けていないように感じた。
個々のエピソードについては、ウイルスと霊魂の類似性、本居宣長と平田篤胤の比較、医薬品業界の構造、別表神社という存在など、興味深いものがいろいろあった。