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著者のyoutubeを見た時に
「聞き手への配慮はあまりしないタイプの方だな」
と正直思いました。
社会人同士のやり取りだと、早口で間をほとんど置かずに話す人物が好意的に解釈される状況というのは極めて限定的です。
証券マン時代にも同じことをしていたとしたら、顧客はかなりの忍耐力を試されたのではないでしょうか。
さて、タイトルにもなっている18.5%のリターンは非常に短期間の好成績を切り取った物であり、再現性も不明です。
為替リスクやインフレについて考慮した場合、恐らく著者の掲げるリターンより実質的リターンは少なくなりそうですがその辺の検証がされた形跡はありません。
元証券マンの肩書を振りかざすならその点についてしっかり触れて欲しかったです。
そもそも、割安の時期に買っておけばプラスになる、というのは債券に限った話ではありませんし、この期間中に割安と感じて債券を仕込んでいる個人投資家はそう少なくはありません。証券会社に勤めたことのないアマチュア凡人も実践しています。
また「出版記念のイベントの料金設定が強気だが、出版社の決めたことで私は関係ありません」という趣旨の発言を動画でしていたのも気がかりです。
編集や宣伝にあたって協力してくれたはずの出版社に、一方的に責任を転嫁する様は人間的に好感が持てませんでした。金融業界にお勤めの経験があれば信頼関係の重要さは身に染みているはずですが、一体、どうしたのでしょうか。
本当に納得いって無いなら「登壇しません」ときっぱり断るか「あまりにいいお値段になってしまいましたが、皆様の期待に添える様に頑張ります」って視聴者に言えた方がよっぽど好意的に解釈できます。著者のご尊顔を拝めたところで「それは投資にどう役立つの??」という感じです。
印税収入が入る立場にお膳立てしてもらいながら、都合の悪い時だけ被害者面というスタンスには驚愕の一言です。
「凡人投資家の知らない、実は最もアツい投資手法」という宣伝文句が添えられているのですが、凡人というより"投資経験が限りなく皆無な人"なら知らないと言った方がそれらしいです。まずまずの投資家なら思いつく手法ですし、このタイトルの真意に勘付くこともそう難しいことではありません。
私だけでなく私の友人にも債券を仕込んでそれなりのリターンを得た個人投資家はいますが、自他共に認める悲しくなるほどの超凡人供であり、証券業界で働いたこともありません。
これはあくまで私の体験に基づく単なる感想に過ぎませんが「元証券マンの書いた証券マンならではの切り口や発想がある本」ではなく「証券会社に勤めていた時期もあった人が平凡など素人でも考えつくような投資手法を書いた本」としか思えません。
債券市場が回復し出した瞬間に味のなくなるような本を出版する意図は不明ですが、証券マンとしての経験に基づく何らかの作戦があるのかもしれません。
で、元証券マンのそうした意図について知る由もなく何ら関心もない一読者の立場としては、この本を他人には勧められません。
理由は簡単で、債券ETFを利用した投資手法について解説している動画はyoutubeで無料で見られるからです。
本書に証券マンならではの他では得られない発想や着眼点などの優位性があれば「お金を出して本書を買う価値がある」と友人などにも喜んで伝えることができたのですが、どうやら見受けられません。その要素は本のタイトルにしかない気がします。
Youtubeを見れば事足りる内容についてお金を出すのは経済的合理性の観点からマイナスです。著者のファンなら精神的充足は得られるかもしれませんが、そうでないなら私のように興味本位で無闇に購入せず、kindleセールの時とか、少し時間を置いてから中古を買うとかでも事足りる気がします。
ただ、「元証券マンが教える」とタイトルに加える時点で読者の要求水準は高くなることは必至ですし、投資経験がそれなりにある人間が読んだら「で?証券マンとして得た知見や気づきはどこにあるの??」と釈然としない可能性が高いです。
第5章まであるのに読み切るのに2時間はかからないし、読み返すほどのものでもないので正直損した気分です。
株式ばかりが注目されるここ最近の傾向に一太刀入れようとする果敢な心意気は個人的に好感が持てるのですが、そういう精神性の持ち主が「出版社が勝手に決めた」とか言い出してしまうと何とも興醒めです。
Youtubeにしろ本にしろ、証券マンとしての研鑽があまり身になっていないコンテンツであると思えてなりません。
最近では、新NISAは海外にお金が流出するリスクを抱えている、などの米国債券投資に対してネガティブな印象を与える動画をいくつか投稿しておりポジションがブレブレです。
臨機応変と言えば聞こえは良いですが、出版からわずか一ヶ月で見解を翻すのは流石にちょっとなぁ。