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「尚、赫々たれ 立花宗茂残照」でデビューした著者の二作目です。今度の主人公は毛利秀元…正直今まで知らなかった人物です。千利休のあと茶の湯の世界の頂点に立った古田織部を信奉する武将であり、関ヶ原前後の変化の時代を生き抜いた存在です。むかし「ひょうげもの」という古田織部を主人公にしたアニメを楽しみにしていましたが、千利休が秀吉に切腹させられたように家康に切腹させられていたんですね。それは権力と茶の湯の密接な繋がりがあった時代で舞台であり、政治と文化の持ちつ持たれつがテーマのひとつだと思います。前作とほぼ同じ徳川幕府の治世が確立していく時代を、違う主人公視点で文化というフィルターで描いた作品だと思います。実際、立花宗茂も登場してきますし。二作通して、戦争の時代から争いを許さない時代への移り変わり、そのものが主役であり、その変化に翻弄される人々の群像劇になっているような気がしました。あるいはちょっと前の時代のキーマンとして実績もプライドもある男たちが向き合う次世代への変化の物語、とも言えるかも。とすると、ここからまたスピンオフな物語も生まれる気がしてきました。今夏の主人公も組織と個人とか、ビジネスとアートとか、自分の本義と社会の流れとか、非常に現代的な問題を抱えているのが共感を高めます。女子との向き合いもその中に入ってきているのも前作に引き続き、です。本作も「残照小説」と言えると思います。