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とんでもないものを読んでしまった。全感情を掴まれ一気に読んだ。熊との対峙シーンは迫力があった。けれどそれは一つの伏線に過ぎない。もっともっと深いメッセージがここにある。それを更に探して何度も何度も読み返したい作品。何故私はラストに泣けたのだろうかと考えたい。
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日露戦争前夜の北海道を舞台にした、いわばマタギもの。
アイヌではないが、その生き方を学び、山中で一人、猟を中心に生きる熊爪という男をを主人公にした物語。時々、肉や毛皮、山菜などを持って里に下り、火薬などを買って山に戻る。街や人との付き合いを厭う主人公の獣の様な性格が見事に描かれます。
マタギものと言えば古くは吉村昭や戸川幸夫、比較的最近では熊谷達也さんなどがありますが、そこは女性作家。因縁を持つ熊を倒した後の男女の愛憎物語が相当なウエイトを占めます。主人公の熊爪もですが、それにもましてヒロイン・陽子の心の動きは理解し難いものがあります。不思議なロジックなのですが、なぜかそれも有りかと思ってしまう奇妙な説得力のある物語でした。
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直木賞受賞作品でありながら、全編を通じて芥川賞世界観な”静けさ”というか”静謐さ"を感じる小説でした。
まるで、当時の時代背景なら山で熊爪のように生きる人がいたとしても不思議はないかなあ、と思わせるリアルかつバイタルな描写に惹き込まれました。また、後半は、ラストがどうなるのか、予断を許さない展開でワクワクも。
今となっては、全く虚構な生き方のように感じますが、人間にとって本質的な何かが表現されているようで、そういうところに読み応えを感じるのだと思います。
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熊と戦う。想像しただけで恐ろしいが、本書の主人公熊爪は、熊との戦いに命をかけている。
何が熊爪をそこまで掻き立てるのだろうか。強さを示したいのだろうか、自分の限界を知りたいのだろうか...。私には到底理解が及ばない。
女を半ば攫うように自分の小屋に連れてきてまぐわう後半より、熊と戦う序盤の方が圧倒的に好きだ。熊爪に対して、女に興味がないというイメージを勝手に抱いてしまっていたが、全くそんなことはなかった。熊爪の長年の欲が一気に解放されたようなセックスは、相当凄まじかっただろう(恐)。
彼の生涯はあっという間だったように感じたが、ただぼんやり生きている私にとっては羨ましい生き方だと思う。
自分の本能に従って生き、死すら希望どおりにした男の、壮絶な物語だった。
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すごい、すごかった、そして、
あぁ、終わった。
圧倒的な表現力、
出てくるものは荒々しい。なのに微細な表現。
圧倒された。
前半までは、どうなるのか、このまま山で暮らす熊爪を見守っていき終わるのか。
はたまた、穴持たず、赤毛に殺され終わるのか。
そう思っていたが、違った。
ただ、これが正しかったのだろうか。
熊爪は、どう生きたかったのだろうか。
熊爪は満たされたのだろうか。
自らの人生をやりきれたのだろうか。
時代背景も、山で猟をして暮らすという生活も、
全てが私の知らない世界だが、
自分がどう生きたいのか、何をしたいのか、
そして何が正しいのか。
迷いと苦しみと、そんな自分のことが理解できない憤りと、
全てが重く私にのしかかり、痛いほど心にささった。
彼が幸せでありますように。
それか、本当の幸せを知らずに、気づくことはなく、
ただ生命の終わりだけを感じ、迷いを捨て終わりを迎えられたことを、祈る。
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この作品の一番の特長である、ワイルドな描写が好き嫌いを分けるような気がします。
自分は、ムワっとむせる獣臭さが気になりました。
内容自体は、前回の候補作「締め殺しの樹」と比べて、考え込まれていて「◯」です
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第170回直木賞受賞作。熊と戦うマタギの物語が直木賞を受賞したことは何度もあった。しかし今回のように孤高の猟師が熊と戦う物語は珍しいように思う。「集団から個人へ」という時代の変化にもマッチしており、とても良かった。
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登場人物に共感できる部分がなく、特に主人公である熊爪の表現には嫌悪感を抱く部分が多く、何度も読む手が止まった。ただ「生きる」ことに対する直結さは響くものがあった。
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河﨑秋子さん、ファン、大ファンです。「ともぐい」、2023.11発行。直木賞受賞、おめでとうございます! 熊と闘う熊爪という猟師の生涯を描いた力作。ともぐいとは、熊と熊か、人と人か。私には、熊と人に感じられました。
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明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!
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直木賞受賞作ということで
普段なら読まないだろうけど読んでみた。
獣の生態や猟師を生業とする男の生き方や
仕留めた獣の裁き方など、詳しく書かれてて
興味深く読んだ。
怪我をした男の処置のシーンは生々しく
想像した。母に話したら拒絶されたけどw
どんな結末なんだろうと読み進めていき
終盤、はんぱもんになってしまった以降の
展開は思ってた感じとは違ったけど・・・
そこで終わらず、それぞれのその後まで
書かれてたのはすっきりした
終始、犬が利口だったな
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令和の熊小説ということで楽しみに読み始めた。吉村昭の羆嵐みたいな小説かと思いきや、スケールの大きいやや狂ったところある猟師の物語だった。読書を堪能した。
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第170回直木賞受賞作ということで読んだ。今まで読んだことがない物語だった。明治時代の猟師の熊爪は理解し難い生き方だったが、鹿などを解体するシーンや熊との戦闘シーンはとてもリアルに描かれていて読んでて臨場感を味わえた。山で孤独に過ごしていた熊爪が陽子と暮らすようになったところからは熊爪が熊のような獣から人になっていった気がした。結末は衝撃的だった。最後の文の解釈をどう解釈するか人それぞれな気がする…。ぜひ読んでもらいたい一作。
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面白かった。猟師の生活が興味深い。よくありそうな終わり方ではなく、熊爪は最後まで熊爪のままで、命あるもの同士のともぐいが描かれていてよかった。
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『俺は食いたいもの、金になるものを殺し、生きる。変わらなくてきい。それでいいはずだった。』
『あの阿呆が連れてきた糞熊は、熊爪を舐め腐って縄張りを主張した上に、小熊を食いさえした。余りにも、道理から外れている。余りにも、悪辣だ。
(中略)
この先に、あの穴持たずの、小熊食いの、道理知らずの糞熊がいる。仕留めるならば確実に。あの野郎に怪我など負わされては太一の馬鹿と同じ轍を踏むことになる。』
直木賞受賞。日本最高峰の熊文学。
知床、登別の熊牧場、サホロリゾート・ベアマウンテンに訪問し、三毛別羆事件、福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件、OSO18などを調べまくって眠れなくなった経験のある私にとって、読まずにはいられなかった。もちろんめちゃくちゃ面白かった。
感想は後で書くとして、まずあらすじ。
———あらすじ———
舞台は明治時代、北海道東部の手付かずの山。
零下三十度の中、熊爪という男が村田銃を鹿に向かって構えるシーンから話は始まる。
見事に鹿を仕留め、解体し、とれたての肝臓を口に放り込む。
熊爪は、自分で撃った獲物を食べ、体の一部にすることに生きがいを感じている。
そして「春には、熊だ」と意気込む。
熊爪は小屋で鹿を解体すると、米と芋と銃弾を手にするため、釧路の東側にある白糠の町へ肉を売りに向かう。
狩り、食べ、売り、また狩る、それが生活の全てなのだ。
門屋商店では、白糠一の金持ちである店主の良介に、他店より値段で肉を買ってもらう。良介は熊爪から聞く森の話が好きで、毎回、酒の肴にしているのだった。
陽が暮れ泊まることになった熊爪は、翌朝、陽子という盲目の少女に出会う。
町に馴染めず、人間も嫌いな熊爪だが、なぜか陽子のことは気になるのだった。
それから山に入ったところで事件が起きる。
小屋付近に、熊に目をえぐられ、血まみれになった男が倒れていたのだ。
男は阿寒湖周辺の村出身で、「穴もたず」を追ってここまできたという。
穴もたずというのは、冬眠しそびれたがゆえに凶暴になったヒグマ。
余計なことをしやがって……。
熊爪は男の手当てと、穴もたずの撃退という二つのことをやらないといけなくなるのだった。
————感想————
熊爪という男の人生譚。
そのキャラクター、考え方、行動、人生観すべてが面白い。
まず、熊を狩るであろう主人公の名前が「熊爪」なのに驚きながら読んだ。
ややこしいやん。
なんで熊じゃない方も、熊がついてんねん、と半分おもしろがりながら。
読み進めていくうちに、その理由が明かされてさらに驚いた。
また、熊爪は猟犬を飼っているのだが、名前はなく、犬と呼んでいる。
名前をつける理由がわからない、というのがその理由だ。
物語は、穴もたずと赤毛の激闘あたりから、想像とは全く違う方向に進んでいく。
熊文学であり、大衆文学の賞である直木賞を受賞していることから、主人公VSヒグマのアクションシーンが満載の王道エンタメ作品だと先入観を持っていたが、全く違った。
主人公VS凶暴な熊のクライマックスではなく、良い意味で期待を裏切られた。
タイトルの「ともぐい」は、何と何の「とも」を指しているのか、物語の最後に理解できたときにゾッとした。
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熊と猟師の死闘を描いた作品かと思いきや、後半は人間とは何か、人間とはどう生きるべきかみたいな哲学的な話だった。
時代やら環境やら登場人物の価値観やらが違いすぎて話に入り込めなかった。もっとシンプルな命のやり取りを期待していた。