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77歳、不能老人のドM生活! 今日ハオ爺チャン、ネッキングサセタゲマショウカ――文豪・谷崎が老年の性を追究した晩年の最高傑作。〈挿絵〉しりあがり寿
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77歳の老人文筆家・卯木督助による旧かなづかい(カタカナ)形式の日記。督助は相当な資産を持ち、地位もあるが、体のあちこちに痛みがあり、寝たり起きたりの日々を送っている。彼は、同居する息子の嫁でダンサー上がりの颯子に特別な思いを寄せていた。颯子の足に性的魅力を感じ、その足で踏まれたいという倒錯的な感情を抱いている。
颯子はそんな督助につけこみ、300万円のキャッツアイを買わせたり、督助の気持ちを弄んだりする。
老人のフェティシズムやマゾヒズムが主題となっているが、コミカルタッチで描かれており、陰鬱さや深刻さは全くない。
ただ、カタカナの文面は読みづらく、最後の10頁余りで、お抱えの看護婦や娘・五子の手記がひらがなで語られる部分は正直、ほっとした。
また、督助が使う薬の名前ががやたらに多く出てくるのも、著者のこだわりがあるのだろうが、少し違和感があった。
谷崎が自分の内面を投影した作品であろうと思われるが、抗いたいがどうすることもできない肉体の衰えに耐え、逆にそれをユーモアに変えて表現しようとしたところに作家としての意地と情熱を感じた。
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何を読まされているんでしょう。息子の嫁に執心する77歳の老人の話。
これが谷崎潤一郎でなければ、認知症で抑制が効かなくなった老人の性的異常行動の話しでしかないのだが、谷崎先生の作品なのだから一筋縄ではいかない。エンタメに仕上げられたエロくて哀れな話。
まず主人公一家の豪勢な生活に驚かされる。
自家用を乗りまわし、ボクシングの世界戦(東洋チャンピオン?)を観戦し、プリンスホテルのナイトプールに行く。歴代の飼い犬はボルゾイ、グレーハウンド、コリー。舞台は昭和35年頃であるから第2次世界大戦から15年しか経過していない。かなりの富裕層の生活だ。
ちょっと調べてみたが、当時の自動車所有率は3%に満たない。そんな上級国民の家長の爺様が色呆けに取り憑かれ、最後はどこまでが現実でどこからが老人の妄想なのかさえ曖昧になってしまう。
当時の人たちはこの作品をどのような思いで読んだのだろう?侮蔑?同情?笑話?艶話?
エンディングを曖昧にすることで、いろんな受け止め方を可能にしているところが上手いと思った。